欧州では昨年夏頃から景気の底打ち感が出ており、企業の業績にも回復傾向が見られました。米国は雇用環境の改善、個人消費の増加など、回復基調が続きました。日本では円安の定着により輸出企業を中心に業績が好転し、設備投資も着実に増加しました。一方、アジア、中南米などの新興国では経済成長が鈍化し、厳しい状況が続きました。
売上高
円安定着による為替効果に加えて、情報機器事業における主力製品の販売増、商品構成の改善、M&A効果などが寄与した結果、当連結会計年度の連結売上高は、前期比16.1%増の9,437億円となりました。
営業利益
産業用材料・機器事業は減益となりましたが、情報機器事業での販売増やコスト低減施策等が大幅な増益に寄与し、営業利益は581億円(同43.0%増)となりました。
税金等調整前当期純利益
HDD用ガラス基板事業の撤退に伴う事業撤退損の計上、ヘルスケア事業におけるフィルムの自社生産終了に伴う建物等の減損損失の計上などにより、税金等調整前当期純利益は235億円(同30.5%減)となりました。
当期純利益
2013年4月に実施した当社グループの経営体制再編に伴う繰延税金資産見直しの影響に係る税効果を織り込み、218億円(同44.5%増)となりました。
情報機器事業
オフィス分野では、A3カラー複合機の好調な販売が持続し、日米欧その他の全地域で、前連結会計年度から大きく販売台数を伸ばすとともに、上位機種の構成比が高まり、収益拡大に寄与しました。OPS(Optimized Print Services)においては、グローバル規模で体制強化、サービスメニューの拡充を進め、案件創出力と提案力を強化した結果、顧客数が着実に増加し、事業基盤を拡大しました。また欧米の中堅・中小企業向けにはITサービスと複合機のハイブリッド型販売モデルを確立し、新規顧客の開拓、案件規模の拡大と高付加価値化を進めました。
プロダクションプリント分野では、カラー機、モノクロ機とも販売台数は前年同期を上回りました。また、前連結会計年度に買収したキンコーズ・ジャパン株式会社やCharterhouse Print Management Limited(本社:イギリス)を活用して、多品種小ロットでのオンデマンド出力サービスや販促用出力物の製作・印刷関連サービスにも業容を拡大し、顧客のプリントニーズに対して幅広い選択肢を提供しています。また、欧州においては、既存の商業印刷市場での紙出力に加えて、パッケージ印刷への応用展開を狙いとして、カード・プラスチック印刷などの成長領域でユニークな事業展開をしているMGI Digital Graphic Technology S.A.(本社:フランス)と資本・業務提携を行いました。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高は7,298億円(前連結会計年度比25.5%増)、営業利益は638億円(同101.8%増)となりました。売上高は、円安の定着に伴う為替効果に加えて、主力のカラー機の販売増、商品構成の改善、M&A効果が寄与し、前連結会計年度比増収となりました。営業利益は、売上の拡大による粗利増、為替効果に加えて、製造部門における生産革新とユニット調達の推進による固定費の削減、原材料及び電子部品の集中購買、VE活動など、製造コスト低減に向けた施策が期間を通して成果を挙げ、大幅な増益を達成しました。
産業用材料・機器事業
ディスプレイ材料分野では、液晶偏光板用TACフィルム及び視野角拡大用VA-TACフィルムともに、ノートPCの市況悪化、TV用使用部材の在庫調整及び多様化の影響を受け、販売数量は前年同期を下回りました。
計測機器分野では、Instrument Systems GmbH(本社:ドイツ)の買収効果により、売上及び利益の拡大に貢献しました。光学分野では、家庭用ゲーム機向けブルーレイディスク用ピックアップレンズ、大型プロジェクタ―用レンズが好調に推移しましたが、各種カメラ用レンズは需要低迷の影響を受けて弱含みに推移しました。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高は1,161億円(前連結会計年度比20.9%減)、営業利益は151億円(同36.0%減)となりました。
ヘルスケア事業
当事業では、カセッテ型デジタルX線画像診断システム「Aero DR(エアロディーアール)」の販売が堅調に推移し、日本及び米国で販売台数を伸ばすとともに、大規模な医療機関での導入実績が着実に増えました。欧米で進めている有力な販売パートナーとの協業でも、案件数を着実に積み上げました。フィルム製品は新興国での販売が伸び、前連結会計年度を上回りました。
また、新たな成長ドライバーとして位置付けている超音波画像診断装置については、パナソニックヘルスケア株式会社より事業譲受して得たリソースを活かして開発から生産及び販売までの体制を構築し、本格的な事業展開の準備を進めております。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高は823億円(前連結会計年度比13.2%増)、営業利益は45億円(同34.4%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
税金等調整前当期純利益235億円、減価償却費473億円、減損損失174億円、のれん償却額94億円及び運転資本の減少による8億円等によるキャッシュ・フローの増加と、法人税等の支払い137億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは899億円のプラス(前連結会計年度は664億円のプラス)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
情報機器事業における設備投資及び産業用材料・機器事業における新規事業に係る投資に加えて、研究開発新棟の建設等の結果、有形固定資産の取得による支出は364億円となりました。その他に、無形固定資産の取得による支出86億円、事業譲受等による支出61億円、投資有価証券の取得による支出49億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは557億円のマイナス(前連結会計年度は634億円のマイナス)となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは341億円のプラス(前連結会計年度は30億円のプラス)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
自己株式の取得による支出158億円、配当金の支払額92億円、短期及び長期借入金の純減少額334億円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは619億円のマイナス(前連結会計年度は245億円のマイナス)となりました。
新製品の開発対応、生産能力増強、合理化及び省力化等を主目的に、特に当社グループの中核事業である情報機器事業及び産業用材料・機器事業に重点的に投資を実施いたしました。この結果、当連結会計年度の設備投資の総額は、473億円となりました(のれん及び企業結合時に係る無形固定資産を除く)。主な投資対象は、情報機器事業の機械装置、工具器具備品、金型、産業用材料・機器事業の機械装置、全社における建物及び研究開発設備です。
所要資金につきましては、いずれの投資も主に自己資金にて充当いたしました。
重要な設備の売却、撤去又は滅失はありません。
なお、HDD用ガラス基板事業の撤退に伴い、産業用材料・機器事業における生産設備等について、119億円の減損損失を実施いたしました。
減価償却費は、設備投資が増加した一方、全体として償却が進んだことにより473億円となりました。
情報機器事業のオフィス分野では、クラウドサービスと連携し、複合機からクラウドに保存した情報やドキュメントを活用できる「bizhub C554e」シリーズ5機種を、プロダクションプリント分野では「bizhub PRESS C1070シリーズ」を開発・商品化し、当事業に係る研究開発費は前連結会計年度比2億円(0.7%)減少の390億円となりました。
産業用材料・機器事業では、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルムの薄膜化等TACフィルムの高機能化・多機能化の開発、材料技術を生かした機能性フィルム、有機素材の研究開発を実施しました。機器事業分野における産業用測定機器部門では、ディスプレイ測定分野でのラインアップを拡充した結果、当事業に係る研究開発費は、前連結会計年度比6億円(4.2%)減少の140億円となりました。
ヘルスケア事業においては、世界最軽量カセッテ型デジタルX線撮影装置「AeroDR 1012HQ」が商品ラインナップに加わった他、各種製品サイズに対応するDR撮影システムおよびアプリケーションの開発を推進し、当事業に係る研究開発費は、前連結会計年度比11億円(39.8%)増加の40億円となりました。これらの結果、事業部門以外の基礎研究費用140億円(前連結会計年度比4.0%減少)などを含むグループ全体の研究開発費は、前連結会計年度比3億円(0.5%)減少の711億円となりました。
総資産の部
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比255億円(2.7%)増加し9,660億円となりました。流動資産は97億円(1.7%)増加し5,893億円(総資産比61.0%)となり、固定資産は157億円(4.4%)増加し3,767億円(総資産比39.0%)となりました。
流動資産については、現金及び預金が前連結会計年度末比20億円増加し954億円となり、有価証券が275億円減少の929億円となり、現金及び現金同等物としては254億円減少の1,884億円となりました。受取手形及び売掛金は260億円増加し2,201億円となり、リース債権及びリース投資資産は52億円増加し212億円となりました。また、たな卸資産は27億円増加し1,152億円となりました。
固定資産については、有形固定資産は情報機器事業及び産業用材料・機器事業における設備投資、並びに研究開発新棟の建設等により増加した一方、全体として償却が進んだことに加え、HDD用ガラス基板事業の撤退に伴う減損を行った結果、前連結会計年度末比65億円減少の1,733億円となりました。無形固定資産は、4億円増加し1,113億円となりました。
また、投資その他の資産は、投資有価証券が前連結会計年度末比60億円増加し292億円となりました。繰延税金資産は平成25年4月に行ったグループ経営体制の再編を踏まえ、回収可能性の見直しを行ったこと等により150億円増加し480億円となりました。
負債の部
総負債については、前連結会計年度末比118億円(2.5%)増加し4,860億円(総資産比50.3%)となりました。支払手形及び買掛金は108億円増加し962億円となり、未払金及び未払費用は128億円増加し743億円となりました。賞与引当金は21億円増加しました。また、退職給付に関する会計基準の適用等により、退職給付に係る負債等が98億円増加しました。一方、有利子負債(長短借入金と社債の合計額)は287億円減少の1,961億円となりました。
純資産の部
純資産については、前連結会計年度末比136億円(2.9%)増加し4,800億円(総資産比49.7%)となりました。利益剰余金は当期純利益の計上218億円及び剰余金の配当92億円等により127億円増加し2,424億円となりました。さらに、自己株式の取得により自己株式が157億円増加いたしました。その他の包括利益累計額はUSドル及びユーロを中心とした円安の定着により為替換算調整勘定が233億円増加し、退職給付に関する会計基準の適用により退職給付に係る調整累計額△84億円を計上しております。
配当に関する基本方針
剰余金の配当等の決定に関する方針といたしましては、連結業績及び成長分野への戦略投資の推進等を総合的に勘案しつつ、株主の皆様へ継続的に利益還元することを基本としております。具体的な配当の指標としましては、連結配当性向25%以上を中長期的な目標としております。自己株式の取得につきましては、当社の財務状況や株価の推移等も勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断してまいります。
また、当社は、会社法第459条第1項に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。配当の回数につきましては会社として基本的な方針を定めておりませんが、定款上、毎年3月31日、9月30日及びその他の基準日に剰余金の配当ができることとしております。
当期の配当と今期(2015年3月期)の予定
当事業年度の剰余金の期末配当は、予定通り1株当たり7円50銭の配当としております。
第2四半期末配当10円(普通配当7円50銭、記念配当2円50銭)と合わせた年間配当金は、1株当たり17円50銭となりました。
2015年3月期の配当につきましては、業績見通しの達成を前提としますが、株主の皆様に対する利益還元を強化し、1株当たり2円50銭増配し、1株当たりの年間配当金を20円とさせていただく予定です。
当社グループを取り巻く世界の経済情勢を見通しますと、欧州は緩やかな景気回復が見込まれ、米国と日本では企業業績が好調を維持すると予想されます。新興国においては、中国経済に不透明感が残るものの、先進国経済の回復により、拡大基調が続く見通しです。
主な当社関連市場の需要見通しにつきましては、情報機器事業では、欧米でのオフィス用A3カラー複合機の拡大傾向が続くと想定されます。新興国では経済成長に伴って、モノクロ機も伸び、市場全体が拡大すると思われます。プロダクションプリント分野では、全世界的にカラー機の販売拡大と市場設置台数の増加が見込まれます。産業用材料・機器分野では、ノートPCは縮小傾向が続く一方、スマートフォンやタブレットの高い成長が持続し、TV市場も緩やかに市場が拡大すると見込んでいます。またスマートフォンやタブレットの普及に伴って、モバイルタイプのディスプレイは数量の拡大が続き、製造業における設備投資は増加すると思われます。デジタルカメラについては、コンパクトタイプはスマートフォンの影響を受けて、縮小傾向が続く一方、レンズ交換式は堅調に推移すると推定されます。ヘルスケア事業では、カセッテ型デジタルX線撮影装置が各地域とも高い成長を維持すると想定されます。
年間配当金 20.00 円
なお、為替レートについては、USドル:100円、ユーロ:135円を前提としています。