呼吸数を測定する各種原理について
このページでは、呼吸数測定に関する各種測定原理について詳しく紹介しております。
目視観察法: 観察による呼吸数測定
自ら測定するときは、時計を見ながら、胸部や腹部に手を置き、呼吸数を測定します。患者さんの場合も同様ですが、患者さんに「医療者が呼吸数を測定している」と感じ取られると、呼吸数に影響が出ることがあります。呼吸数測定を悟られないように、脈拍数測定を行っているふりをして、横目で胸の動きや呼吸補助筋の動きを診て、呼吸数を測定する場合があります。時計を見ながら1 分間の呼吸を数えます。
時間を短縮する場合には、30 秒観察し呼吸数を2 倍にする、あるいは15 秒で4倍にして1 分間当たりの呼吸数に換算します。観察による呼吸数測定は、不確実性と時間がかかるというデメリットがありますが、それでも他の方法と比較すると簡便かつベッドサイドで実施可能であり、最も一般的な方法です。
スパイロメトリー法
この検査方法の主な機能は、肺気量または1 回換気量を測定することによって肺の機能状態を記録することです。肺活量測定を使用して肺の呼吸機能を測定することができます。検査中、患者さんは、鼻をクリップで閉じて、マウスピースを通して「スパイロメータ」に息を吐きだします。スパイロメータは、吸入および呼気の量、および呼気の速度を測定します。呼吸中に移動した空気の量をグラフ上にマッピングされたもので評価することができます。この方法は非常に正確であり、複数の呼吸パラメータを同時に測定するために使用できますが、患者さんの自然な呼吸に影響を与え、呼吸数の連続測定には適していません。
カプノメトリー法
カプノメトリーは、患者さんの呼気中の二酸化炭素のレベルを測定するために使用されます。麻酔や人工呼吸器患者のモニタリングによく使用されます。カプノメトリーは、呼吸数の測定にも使用できます。この方式での測定は高精度であり、呼吸数の連続測定にも適しています。しかし、鼻腔カニューレや器官チューブ等を装着する必要があるため使用する患者さんには不快であり、記録されたデータを分析するには特別な機器が必要です。
心電図 / インピーダンス法による呼吸測定
心電図(ECG)は、皮膚に取り付けられた電極を用いて、心臓の電気的活動を測定しますが、このECG 電極は、インピーダンス法による呼吸数の測定にも利用されます。息を吸ったり、吐いたりすると、胸部の容積が増減します。容積が増加中には胸部のインピーダンス(電気の流れにくさ)が増加し、容積の減少中にはインピーダンスが減少します。胸部に貼付された2 つの電極から、インピーダンスの変動が測定され、その変動は、呼吸曲線としてモニターに表示され、呼吸数の測定が可能となります。ただし、体動はインピーダンスに大きな影響をあたえるため、体動がある場合には、正確な測定が困難となります。
胸郭呼吸(圧電)センサー
この方法は、呼吸中に胸部または腹部で外部から観察できる動きおよび体積変化の検出に基づいています。例えば、ピエゾ素子等を備えた胸郭バンドを使用して、呼吸運動によって引き起こされる圧力変化を検出し、呼吸数を決定することができます。
フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサー法
パルスオキシメータの測定に利用している信号がフォトプレチスモグラフィ(PPG)です。脈拍数と血中酸素飽和度(SpO2)を測定するための同じPPG 信号からアルゴリズムを使用して呼吸信号を抽出します。PPG センサーには、通常2 つのLED(1 つは赤、もう1 つは赤外線)があり、この光は交互に組織に照射されフォトダイオードで組織に吸収されなかった光を受け取ります。赤外線の受光信号の変化は測定域の血流量の変化と見なされますが、この信号は心拍に合わせて1 分間に60 回程度で周期的に大きく波打っています。この波の数を数えることで脈拍数を算出しますが、このPPG 信号には、脈拍の振幅とは別の呼吸に伴う小さな周期的振幅が隠れています。PPG 信号を周波数解析することで、呼吸による信号を抽出し、そこから呼吸数を算出する方法がフォトプレチスモグラフィセンサー法です。