パルスオキシメータ知恵袋 基礎編
パルスオキシメータの原理
パルスオキシメータは血液の赤い色を見ています。
血液は一見赤い液体のように見えますが、液体成分の血漿は薄黄色で、血漿の中に無数の赤色の細胞(赤血球)が浮かんでいるため、肉眼では赤く見えるのです。この赤血球の赤色も赤血球の中のヘモグロビンという色素の色で、ヘモグロビンは酸素と結びつくと鮮やかな赤色になります。
パルスオキシメータは動脈血の赤色の度合いを見て、酸素飽和度(酸素に結びついたヘモグロビンの比率)を見ています。
右の図は、酸素と結びついたヘモグロビン(HbO2)と、酸素を離したヘモグロビン(Hb)において、どの光を多く吸収するかを示した吸光度曲線と呼ばれるものです。色は横軸の波長で表わされます。
2本のグラフはHbO2とHbがどの波長をよく吸収し、どの波長をあまり吸収しないかを表わしています。線が下に行くほど、その波長を吸収しない(良く通す)ことを意味します。
酸素と結びついたヘモグロビンは赤い色をしていますが、これは赤い色だけをあまり吸収せずに通してしまうからです。つまり、赤い色の吸光度が低いのです。一方、酸素を離したヘモグロビンは黒っぽい色になります。これは光をよく吸収するからです。赤色(R)を血液に当てると、ヘモグロビンと酸素がより多く結びついていると、それだけ多くの光が指を通り抜け、センサーが受け取る光の量が多くなります。赤外光(IR)はヘモグロビンと酸素が結びついていてもいなくてもどちらも、あまり変わらず血液を通り抜けます。
HbO2が増えHbが減れば、センサーが受け取る赤色光(R)は多くなり、赤外光(IR)はあまり変わりません。その逆では赤色光は少なくなり、赤外光はやはりあまり変わりません。
つまり、センサーが受け取るR/IRの比率が分かれば、HbO2とHbの比率、即ち酸素飽和度が分かる事になります。
パルスオキシメータは動脈血の変動を見ています。
生体に照射された光は、血液以外の組織層、動脈層、静脈層を通るなか、各層で吸収を受けセンサーに届きます。
心臓から拍出された動脈血は、脈波と呼ばれるように波のような形で血管内を移動します。
極く短い時間の中で、厚みが変化するのは脈動をしている動脈血だけです。皮膚や肉などの組織や静脈は、極く短時間では厚みは一定です。厚みが変わると透過する光の量も変わり、センサーの受け取る信号も変化します。
つまり、信号の変化成分は厚みの変わった組織だけの成分、すなわち動脈血だけの情報となります。
脈動(変化成分)を見ることで、動脈血だけの成分を見ることができ、R、IRの変化成分の比率から動脈血だけの酸素飽和度が求められます。
パルスオキシメータは脈拍数も表示しますが、それは、このように変動を見ることで、脈拍も同時に求められるからです。
R/IRの比率から校正定数によって%SpO2を求めます。
赤色光(R)と赤外光(IR)の透過光量の変動成分の比率とSpO2値の関係は、使用されるR、IRのLED波長によって異なり、両者の関係式を校正定数と呼びます。
校正定数は、パルスオキシメータと、同時に採血して得られたSaO2値との相関を、実験で求めることによって決定されます。
右図では、RとIRの比率が同じ場合にはSpO2は83%、RがIRの0.4の時にSpO2が
100%となるような校正定数を持つパルスオキシメータを例示しています。