テレワークのメリットとは?導入により浮かび上がった課題と対策について解説

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テレワークのメリットとは?導入により浮かび上がった課題と対策について解説

新型コロナウイルス感染症の拡大状況は2021年10月には第5波が落ち着きを見せました。そして、冬季を迎える季節に向けて第6波を懸念しつつも経済活動通常化の動きが見えてきています。緊急的にテレワークを導入した企業でも、その効用に気付き、恒常的に活用する傾向が見えます。その一方で、今一つ効果が実感できない、業務効率が上がらないといった意見も聞かれ、テレワークが定着できない企業も少なくありません。
ここではテレワークの現状を踏まえながら今後への予測を含め、テレワーク実施の効果と課題について解説していきます。

INDEX

テレワークの実態と導入の効果・メリット

テレワークの実態と導入の効果・メリット

以前から少しずつ認知されつつあった、テレワークというワークスタイル。コロナ禍を通じ、業務遂行における現実的な選択肢の一つとして浮上しました。新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着きを見せ始めた2021年10月を境に、経済活動通常化、さらにはニューノーマルな社会における経済活動の活性化が進められるなか、テレワーク導入の背景とこれまでの推移、効果を確認します。

導入の背景・きっかけ

2018年の働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)成立以降、その実現に向けた手法としてテレワークの導入率は、徐々に上昇傾向にありました。また、その時点では2020年に開催予定だった東京オリンピック期間中の混雑緩和策としてもテレワークが推奨され、それに向けて準備を進めていた企業もあったようです。

このような状況下で、2019年末から新型コロナウイルスがまん延。不要不急の外出自粛要請や緊急事態宣言の発令などがあり、テレワークの導入が一気に加速しました。準備不足のままテレワークを導入せざるを得なかったという企業も多く、業績悪化や事業の停滞を招いたという声も聞かれます。

テレワーク導入率の推移

東京商工会議所が2021年9月に公表した、東京23区の中小企業を対象とした調査「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」があります。この調査は東京23区の中小企業2,000社あまりを対象に650社ほどの企業が回答(回答率約30%)したデータをまとめたものです。回答した企業は、2020年3月から2021年1~2月調査における企業と、2021年5月調査における企業とが異なるため厳密には単純比較はできません。しかし業種も近しい数の企業が回答をしていることから、テレワーク導入率の大まかな傾向について本調査をもとに確認します。

それによると2021年8月の緊急事態宣言下におけるテレワーク実施率は39.9%。1~2月期の66.2%からは大幅に下がりましたが、同年の春以降はほぼ横ばいでの推移が見られます。

テレワーク実施率の推移

出展:東京商工会議所「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」

企業規模別では従業員301人以上の企業がもっとも高い75.0%、50人以下がもっとも低い31.0%。企業規模が小さい企業ほど実施率が低いという結果です。5月期との比較では301人以上の企業で10.5ポイント上昇。業種別では製造業が最多となっており、5月期との比較では小売業のみ低下しています。

従業員規模別テレワーク実施率

出展:東京商工会議所「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」

IDC Japan 株式会社の国内テレワーク導入企業およびテレワーカーを対象とした調査(2021年5月公表)では、2020年の国内におけるテレワーク導入企業は2019年の62万社から161万社、テレワーカーは2019年の約100万人から約997万人と大きく拡大しています。

また、今後のテレワーク実施に関しては、従業員規模1,000人未満の中堅中小企業の10.5%、大企業の7.7%が新型コロナウイルス感染症収束後のテレワーク廃止を検討。テレワーカーについては、中堅中小企業の41.1%、大企業の42.9%が縮小を考えており、2022年にはテレワークの実施がいったん減少すると予測されます。

一方、長期的な視点からは、2023年以降、徐々にテレワーク実施企業が増加すると推測されています。その理由としては、多様な働き方についての社会的ニーズの高まりやテレワークによる経費削減効果への期待が挙げられます。

テレワークの実施による実情が明らかとなった今、メリットのさらなる享受と、課題の解決を模索する企業が増えていくと考えられます。

参考:IDC Japan 株式会社「国内テレワーク市場予測を発表」

効果・メリット

テレワークを実施することによるメリットとしては、一般的に以下のようなものが挙げられます。

■業務効率の向上

テレワーク導入に際しては社外での業務を可能とするため、ペーパーレス化や情報ツール導入、情報インフラ整備に加えて業務の整理・見直しが求められます。ムダな作業が排除され、場所や時間を選ばない働き方を可能とすることで業務効率の向上が期待されます。

■離職防止

自宅や希望する場所で業務に当たれるようになれば、育児・介護など個人的な事情による離職を回避できます。

■人材確保

地方を含めた遠隔地や通勤できない事情を持つ人材の登用が可能となり、雇用対象の範囲を拡大できます。

■事業継続性

データ資産の分散化により、有事の際のリスクが軽減されます。業務場所の多様化により、通勤ができなくなった場合でも、業務継続が可能です。

■コスト削減

社内の人員数減少に伴い、オフィス賃料・交通費・その他オフィス運用コストの削減効果が期待できます。

上記の東京商工会議所調査では、実施効果については「特になし」という回答がもっとも多く、次いで、「働き方改革の進展」「業務プロセスの見直し」という回答が寄せられています。上記に挙げたメリットについては、短期的に状況を見比べただけでは、実施効果が実感しにくい場合もあることが伺えます。

また、メリットを享受するには一定の期間テレワークを実施しなければなりませんが、テレワーク実施の課題として「情報セキュリティー」を挙げる企業が59.7%と高いことから、企業規模やテレワーク実施に備えるための投資ができるかどうかといった経済的状況によっても、テレワークを定着させにくい企業が存在することも考えられます。

コニカミノルタのテレワーク事情

コニカミノルタのテレワーク事情

コニカミノルタジャパンは、2020年6月に、テレワーク対象者2,289名を対象に社内アンケート調査を実施しました。ウィズ・アフターコロナ環境下での在宅勤務希望を聞く質問では、回答した内勤社員の87%がウィズコロナでの在宅勤務、79%がアフターコロナでの在宅勤務を希望するという結果でした。また、業務効率に関しては、以下のアンケート結果が得られています。

ウィズコロナ環境下(在宅でのテレワーク)において業務生産性はどのように変化したか

※外部調査=日経BP総合研究所イノベーションICTラボ「新型コロナ対策テレワーク実態調査」

当社の調査と外部調査との結果に大きな差異が見られた要因としては、当社では働き方改革を通じてテレワークでの働き方が浸透しており、高いパフォーマンスを発揮できたことが考えられます。

その背景には継続的な取り組みの実施があります。例えば2013年には「働き方改革」プロジェクトを発足させ、どのように働きたいかといった現状調査を行い、現場の声を集めるところからスタートしました。そして、本社オフィスの移転にともなってフリーアドレスの導入やICTインフラの整備を進め、部署や部門を超えたコミュニケーションや新しいつながりが生まれる環境整備をしてきました。そのほか、保管文書ゼロ化の運動を開始したり、場所にしばられない働き方・テレワークの運用をスタートさせたり、と順序立てた取り組みを継続的に続けてきました。

言いかえれば、当社が今回のコロナ禍において、高いパフォーマンスが発揮できたのは、社員の働きやすさを視点にし、会社全体の業務の見直しを常に継続させてきたことによると言えるでしょう。

詳細な取り組みや内容については以下をご参照ください。

テレワーク導入見送り時の理由や導入後に見つかる問題点・デメリット

テレワーク導入見送り時の理由や導入後に見つかる問題点・デメリット

テレワークにはメリットがある反面、課題やデメリットも存在します。テレワーク導入を見送る理由や導入後に見つかる問題点について解説します。

導入した全ての企業が生産性向上にはつながっていない

まず理解しておく必要があるのは、先述した東京商工会議所の調査で、全体の4割程度の企業がテレワーク導入による効果について「特になし」と回答していることです。テレワーク導入のメリットを感じられなかった企業があることが、テレワークの恒常化が難しい現実を示しています。

テレワークを導入した全ての企業が、業務効率向上や生産性向上を実現できているわけではありません。事業者である以上、効率性を欠いてまでテレワークを継続する理由はない、と判断することも考えられます。

テレワーク導入後取りやめた企業に見つかった課題

テレワークを導入したものの後日取りやめた企業が、主な理由として挙げた問題点は以下のとおりです。

■業務の生産性が低下

原因としてはテレワーク環境が確保できない、コミュニケーションのとりづらさ、承認に押印が必要といった体制不備、仕事の進捗確認ができない。

■PC機器やネットワークの不備

社員個人の住宅事情が異なり、業務を遂行できる作業環境が整備されていない。

■社内のコミュニケーション低下

業務上で必要となるコミュニケーションのほか、雑談や交流の機会が不足することにより連帯感や親密さを保持できない。

■労務管理・マネジメントが難しい

勤怠管理、業務管理、業務への公正な評価、社員の健康状態を含めた状況把握が難しい。

■ペーパーレス化への対応ができていない

データ化、デジタル化の遅れにより多くの業務が紙ベースで進められている。

これらの問題点の原因は2つあると考えられます。1つは、必要な制度・体制が整えられていないことによって生産性が向上しない、あるいは低下すること。さらに2つめは、社内コミュニケーションが十分に取れないことによって業務がスムーズに進まない可能性が高まること。これらが、結果的にテレワーク廃止につながっていることが分かります。

テレワーク未導入の企業の課題

テレワークを全く導入していない企業における、テレワーク未導入の理由となっている問題点は次のとおりです。

■テレワーク可能な業務がない

社内対応が必要な業務が多いため、あるいはテレワークの可否について業務の切り分けができていないためにテレワークの実施に踏み切れない。

■PC機器やネットワークの不備

社員の自宅のテレワーク環境の整備ができていない。

■情報セキュリティー体制やリテラシー教育の不備

テレワークによる情報漏えいの懸念がある。データの取り扱いに不安がある。

■ペーパーレス化への対応ができていない

承認や決裁が紙ベースで行われている。

■労務管理・マネジメント体制の不備

リモートで社員の状況把握ができる体制が整備されていない。

■社内コミュニケーションへの不安

業務上、あるいは業務外でのリモートによるコミュニケーション施策ができていない。

未導入の企業においても、テレワーク対応可能な業務がないという理由を除けば、テレワークへの対応の準備が整えられていないことが、テレワーク導入への大きな足かせとなっています。

テレワーク導入への課題解決策

テレワーク導入への課題解決策

コロナ禍を経験し、有事の際の業務の在り方を考える機会が得られました。働き方の多様化をにらめば、今後もテレワーク活用の必要性が失われることはありません。加えて人手不足対策や、生産性向上などの諸問題解決に向けた取り組みとしても、テレワークの活用は今後のスタンダードになると考えられます。
ここでは、テレワーク導入に向けた課題解決策について解説します。

現状の業務フローの洗い出しと見直し

まずは現状の業務の洗い出しと、テレワークの導入に向けた業務の切り分けが必要です。テレワークで対応可能な業務と対象となる社員を設定し、さらに業務フローの最適化を行います。業務フローを見直すことで、業務の効率化やテレワークを導入しやすい状態をつくることができます。

例えば、オンライン商談の際に成約率を高められるように専用のマニュアルやトークスクリプトを作成したり、Web会議ツールを使った会議の進め方をブラッシュアップしたりすることで、テレワークの生産性を高める対策につなげることができます。

適切なツールの活用

テレワーク導入によって起こり得るコミュニケーション量の低下や、上司が対面で部下を指導・管理できない状況に対しては、ITツールを活用した対策が効果的です。

■コミュニケーション不足改善・情報共有に利用できるツール

  • Web会議ツール
  • ビジネスチャット、社内SNS
  • 情報共有ツール
  • グループウェア

これらの機能をもつツールとしておすすめなのが、Microsoft社の Microsoft 365 です。Microsoft 365には様々な機能が搭載されおり、Web会議ツールやビジネスチャットは「Teams」、情報共有ツールやグループウェアの機能は「SharePoint」や「Exchange」を活用することで、ファイルやデータの共有やスケジュールの可視化ができます。

■勤怠管理体制に利用できるツール

会社に行かなければ出勤・退勤の記録ができないということはありませんか?テレワークを実施するためには勤怠管理もIT化する必要があります。おすすめのツールは「クラウド型勤怠管理システム AKASHI」です。WEBを使って申請できるので、スマートフォンからでも出退勤の情報を記録できます。

■承認・決裁をリモートで行いペーパーレス化を促進するツール

テレワークの導入を阻む要因の一つが、押印による承認フローです。稟議書を各承認者に回す日本の企業文化は、テレワークと相いれません。申請処理をリモートで実施、流れを可視化するツールを活用することで、テレワーク勤務者と社内のワークフローを一元化できます。紙の申請書と同じ感覚で社員が利用できるツールとしては、「X-point Cloud」「デジタルワークフローソリューション」「ジョブカンワークフロー」「Create!Webフロー」などが人気です。

X-pointを活用して、テレワークの導入の障害となっていた、稟議申請承認フローをリモート対応させた事例をご紹介しています。

適切な目標設定と評価制度

テレワーク導入の成果を管理するためには、適切な目標設定評価制度が不可欠です。チームとしての目標を設定して社員一人ひとりの目的に落とし込み、やるべきことや期間などを決めます。また、目標に対する達成度や取り組みの進め方などから評価する仕組みを整えます。これにより業務効率化を図るとともに、対面で確認できなくても個々の社員を適切に評価し、モチベーションを維持・向上させることができます。

具体的な施策としては、1on1ミーティングを積極的に行うといった方法があります。個別の会話を通じて、会社の方向性や方針とすり合わせながら、個人が果たすべき目標の明確化をサポートしていきます。

月次、四半期、年間といった期間での進捗管理とフィードバックも重要です。必要に応じて軌道修正しながら目標設定ができるよう、柔軟な対応を心がけます。社員が常に納得感を持てる目標を定めることが大切です。

テレワークにおける社員のマネジメントについては、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を参考にし、進めていくと良いでしょう。

情報セキュリティー対策の整備

テレワーク下における情報セキュリティーは、ルール・人・技術の3つの観点での対策が必要です。

企業としての技術的なセキュリティー対策は当然ですが、特にリモートではルールの周知と行動指針が重要となります。業務に使用するパソコンや各種媒体、書類の持ち出しルール、アプリケーションのインストール制限、ウイルス対策ソフトの導入、OSのアップデート、信頼性の高いサーバーの利用といった点に留意していく必要があります。

弱い箇所があれば、そこからセキュリティーを突破されかねないため、全体のバランスを意識しながら対策を検討しましょう。

セキュリティー対策に関する詳しい情報は、総務省が策定した以下のガイドラインをぜひご覧ください。

機器・設備の導入

テレワークの導入には、機器や設備の導入が不可欠です。業務フローの洗い出し・見直しの際に発見された課題を解決するためにも、ITツール中心の対策が必要でしょう。このとき、初期費用の抑制にはクラウドツール、トータルコストの低減には助成金の活用などが考えられます。

オフィス環境によるコミュニケーション不足対策とコスト最適化

オフィス環境を工夫することで、コミュニケーション不足の改善とコスト最適化を進めることが可能です。

■コミュニケーションが生まれやすいスペース作り

フリーアドレス制の導入や部門の垣根のない座席制、共有スペースの活用など、社員同士が対面する機会が限られる状況でも、自然にコミュニケーションが生まれるオフィス環境を作り出しましょう。

■コスト削減

テレワークを効果的に導入できれば、現在注目されているオフィスのライトサイジング(縮小移転)につなげることも可能です。

スモールオフィス化の実現や、都心から郊外への移転、ペーパーレス化の実現などにより、オフィスの賃料・光熱費・交通費などのコストが軽減できるでしょう。

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アフターコロナ・ニューノーマルをにらんだテレワーク導入を考える

全体的な傾向としてはテレワーク実施率の頭打ち、縮小する企業の増加が目立ちます。十分な準備がないまま、コロナ禍によって急な導入に踏み切った企業では、テレワーク疲れや生産性の低下がオフィス回帰の要因と考えられます。しかし、ワークスタイルの選択肢を増やしておくことは、企業にとっても多くのメリットをもたらします。テレワークに関する社会的経験値が高まった今だからこそ、企業の将来に向けた多様な検討が可能です。

コニカミノルタジャパンが提案する「いいじかん設計」では、「いいじかん」を生み出す環境づくりを提案しています。多様な価値観、様々なワークスタイルのニーズに合わせて、場所に縛られない働き方を実現するためのテレワークソリューションを提案し、「いつでもどこでもだれでも働ける環境づくり」を支援しています。

従来の企業活動を再開する今、先のことを多角的に考えておくチャンスです。ぜひ御社に最適な「いいじかん」を生み出す環境づくりについてご相談ください。

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いいじかん設計 編集部

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