テレワークで中小企業の経営が変わる?導入すべき理由と課題を解説
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新型コロナウイルスの突然の蔓延によって、テレワークはより現実的なワークスタイルとして見られるようになりました。東京都が実施した、従業員30人以上の都内企業を対象にした調査によると、2020年3月時点では24.0%だったテレワーク導入率が、4月になると62.7%に急増しました。一方で、デルテクノロジーズとEMCジャパンが実施した別の調査では、中小企業(従業員数99人以下)のテレワーク導入率は、2020年3月から7月にかけて約3倍近く増えたものの、全体の4割弱に留まるという結果でした。
中小企業のテレワーク導入を阻む要因をひも解きながら、導入を成功させるポイントを解説します。
INDEX
中小企業でテレワーク導入が進まない理由と解決策
大企業と比較して、中小企業のテレワーク導入が進まない理由は何でしょうか。
中小企業のテレワーク導入をさまたげる要因とは?
1.業務内容による課題
中小企業は、大企業と比較してテレワークでは対応できない業種が多い傾向があります。例えば、製造業やサービス業、医療・福祉関係などでは、実際に対物・対人の現場でヒトが働く必要があるため、テレワークが困難です。また、大企業のように業務がシステム化されていないため、出社せずには何もできないという企業も少なくありません。さらに、ペーパーレス化も進んでおらず、データよりも紙媒体が多用され、押印による承認体制が一般的なところも多いようです。
2.人的な課題
大企業と異なり部署が細分化されていない中小企業では、ひとりの従業員が「なんでも屋」化しており、業務の整理ができていない場合が散見されます。仕事の切り分けができないと、テレワーク時に明確な業務指示が難しくなるのです。
また、テレワークという考え方が浸透しておらず、福利厚生的な解釈がなされている企業もあります。その場合、管理側と実施者双方の理解不足により、導入が難航すると考えられます。
3.セキュリティー体制の課題
テレワークでは外部で自社データを扱うため、セキュリティー体制が整っていないとリスクが増大します。セキュリティー対策を整えるためには労力が必要であり、テレワーク導入の障害となっている場合があります。
4.コストの課題
すでにある程度のインフラが整っている企業ではない場合、テレワーク導入の際、オンライン化するための大きなコスト負担が発生します。書類のペーパーレス化、デジタルツールの購入や使用方法の教育・研究にかかる人的コストも必要です。
大企業と比較して中小企業では、テレワーク導入にかかる新たな費用の捻出が難しい場合があります。
中小企業のテレワーク導入を実現するための解決策
目前の状況と中小企業特有の事情により、テレワーク導入をためらってしまう企業は少なくありません。テレワーク導入を現実的に考えるための解決策を見ていきましょう。
1.情報収集から理解へ
専門の部署を持ち、情報の収集と共有が行われる大企業と違い、中小企業ではテレワークと聞いても、何をどうすればよいのか、不安が先立ち着手できないというケースもよくあります。まずは、正しく基本的な知識を身につけ、導入への流れを理解することが必要です。
中小企業を後押しする公的機関のセミナーや相談窓口の利用、外部講師を招くなどの手段を検討し、積極的に正しい知識を得られる機会を持ちましょう。
コニカミノルタジャパンでは、様々な事例から蓄積したノウハウや事例を、セミナーやイベントを通じて紹介しています。詳細は「いいじかん設計セミナー」をご覧ください。
2.業務の整理と切り分け
現行の業務を整理し、テレワークが可能な業務を切り分けることで、実施対象者を確定できます。テレワークで効果が期待される部署のみにしぼって検討すれば、最低限必要なネットワークやツールなどの準備範囲も明確になります。
3.費用対効果の冷静な分析
テレワークをすでに実施し成功している中小企業の事例を参考にして、自社のコスト対成果を分析しましょう。通勤費やその他の手当や移動時間などのテレワークにかかるコストや、生産性の向上などのプラスマイナスを数値として具体的に割り出して、現実的な視点から検討を進めることが肝要です。
中小企業に対しては、国も多くのサポート施策を準備しているので、利用を検討しましょう。
4.テレワークに向けた勉強会の開催
管理者・実施者のテレワークに関する正しい理解がなければ、導入しても成果が得られない可能性があります。テレワークへの心理的な抵抗感を無くすためにも、全従業員を対象に研究会や勉強会を開催しましょう。一方的なレクチャーに留めず、従業員からの不安や課題を明らかにする場とすることが大切です。導入・運用に先がけ、企業全体でテレワークに対する理解が統一できれば、円滑な推進につながります。
中小企業こそテレワークを導入すべき理由
テレワークは中小企業にとってなじみが薄いかもしれませんが、中小企業だからこそ、テレワーク導入に取り組むべき理由があります。
助成・補助金が活用できる
新型コロナウイルス感染症対策のほか、IT化の促進による生産制の向上、テレワークを通じた働き方改革への貢献といった目的のため、現在、国はテレワークの導入を奨励しています。特に、国内企業の99%を占める中小企業に力を入れています。助成・補助金の例をいくつか紹介しましょう。
- 働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
- 新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース
- IT導入補助金
- 事業継続緊急対策(テレワーク)助成金(東京都)
- ワークスタイル変革コンサルティング(東京都)
- はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)(東京都)
- テレワーク活用・働く女性応援助成金(東京都)
これらの助成金のなかには、専門家のアドバイスがなければ申請が難しいものもあります。TRIPORT株式会社の「クラウド社労士コモン」では、人事労務関連業務をチャットでワンストップ支援し、補助金・助成金申請のサポートも行っています。
人材不足の解消
テレワークの魅力は、場所や時間にとらわれない働き方が可能となることです。柔軟な働き方ができる企業であれば、家庭の事情といった理由で優秀な従業員に離職されるリスクが抑えられる可能性があります。住む場所や働く場所にとらわれないことで、採用候補者の枠が広がり、人材獲得のチャンスが増えるでしょう。
企業のブランディング
テレワーク導入によって、従業員の意志を尊重できる企業、ワークスタイル・ワークライフバランスが得られる企業であることが認知され、イメージアップにつながります。働き方にこだわりを持つ外部人材にもアピールできる強みとなり、転職採用にもはずみをつけられるでしょう。
企業の固定コストの削減・最適化
オフィスに常駐する従業員数が減ることで、オフィスコスト軽減効果も考えられます。一般的には、コスト軽減の例として光熱費やペーパーレス化による印刷コストなどが挙げられますが、オフィスそのものの縮小もあります。つまり、テレワーク導入が上手く進み、継続的なワークスタイルとして定着した場合には、オフィスのライトサイジングや縮小移転による家賃の抑制といった選択肢も出てくるのです。
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業務内容の整理・効率化の向上
中小企業では慣例的な流れで業務が続けられていたり、長く勤めている従業員が業務を抱え込んだりということが起こりがちです。テレワーク導入を契機に見直しを図り、ブラックボックス化していた業務を可視化できれば、効率性向上につながる可能性があります。テレワーク導入という大きな改変を、業務内容の大幅な整理のきっかけとすると、業務効率化を一気に進めることができるでしょう。
事業継続
災害やパンデミックといった不測の事態が発生したとき、すべてが一か所に集中する企業のあり方はリスクがあります。日常的に分散して業務をこなす企業体制の構築により、多様な危機にも対応できる組織作りが可能です。企業はどのような状況にあっても、稼働することが求められます。事業継続への貢献も、テレワークの大きな役割の一つです。
テレワーク導入にあたって注意すべきポイント
中小企業のテレワーク導入を成功させるために、押さえておきたいポイントを確認しておきましょう。
目的意識の共有
テレワーク導入では、何のための取り組みなのかをすべての従業員に周知徹底する必要があります。何が課題であり、テレワークによってそれがどのように解決できるのかを、社内全体に理解させるのです。テレワーク導入の成功とは何かを明確にすることで、導入自体が目的になることなく、管理側・実践者が同一の方向性を持てるようになります。
システム・ITツールの整備
テレワーク導入のためには、業務に支障のない十分なシステムを持つことが大切です。従業員が過不足なく使いこなせる程度を見極めたツールの選定と、使用方法に関する教育が求められます。
以下に、具体的なソリューションの例を紹介します。
■IT-Guardians リモートビューサービス
PCの持ち出しによる紛失や故障といったセキュリティリスクを回避しながらテレワークを利用可能にします。容易に効率良く安全にテレワークを開始するための、強力なサポートも得られます。
セキュリティー対策
中小企業のなかにはセキュリティー対策への意識が薄く、どのように強化すれば良いのか分からないところもあるようです。セキュリティー対策は、ハード面とソフト面2系統で考えることが重要です。ネットワーク利用における安全性の高いセキュリティーシステムの構築はもちろんですが、手続きや手順、監視方法といった点にも留意しましょう。定期的にセキュリティーに対する知識確認を行うといった教育を実施し、従業員のセキュリティー意識の向上と徹底も必要です。
テレワークに関するルールの策定
テレワーク導入後のトラブル多発を回避するために、自社の業務や勤務体制にあわせたルールの策定を行います。ルールは主に以下の2項目に分けて策定します。
■セキュリティー関連
ファイルのダウンロードやアクセス権限といったインターネット関連の規定と、書類・データの持ち出しや携帯に関する規定があります。
■労務管理・就業関連
テレワークを実施する従業員の勤怠管理だけでなく、長時間労働の防止にも配慮が必要です。
国や公的機関から就業規則のひな形が多数提供されていますが、テレワーク実施者や、自社の業務内容に合うように、詳細を調整する必要があります。
コニカミノルタジャパンではお客様の会社にとっての働き方やテレワークを実施するための課題を把握する「働き方診断チャート」を実施中です。診断結果から自社に合った働き方改革やテレワークの取り組み方をご紹介します。たった3問で結果が表示される簡単なチャートですので、お気軽にご覧ください。
将来の企業経営に向けた取り組みを開始しよう
テレワークは大企業だけに有効な手段ではありません。IT化の遅れを解消し、業務の整理・効率化を図るための好機ともなります。これまで「うちでは無理」と見送っていた新しい業務体制に着手することで、企業が抱える課題が改善される可能性も広がります。ポイントを押さえながら入念に準備をすれば、成果が得られるでしょう。中小企業だからこそ必要なテレワーク導入に向け、取り組みを開始しましょう。
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いいじかん設計 編集部