経営陣に現状認識してもらうには?アンケートで始める働き方改革
- #働きやすい環境づくり
2018年に成立した「働き方改革関連法」が2019年から順次施行され、企業には対応義務が生じています。働き方改革を進めるには既存の業務やルールを変更したり、ITシステムに投資するなど経営陣の理解・協力が必要です。
経営陣に現状認識と対応の必要性を認識してもらうには、アンケートを通じた客観的な評価が有効です。
INDEX
働き方改革は企業に対応義務あり!
日本では急速に進む少子高齢化を背景に、各企業は労働人口の減少に伴う人手不足の表面化、労働者側からの育児や介護の両立に対するニーズの高まりなどの状況に直面しています。
政府は経済の活力を維持するため、労働者が多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を提唱し、長時間労働是正や同一労働同一賃金などを柱とする働き方改革関連法を成立させました。
これらの法律は2019年から順次施行され、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の年5日取得義務化など、違反時に企業に罰則がある規制も含まれています。
また働き方改革を通じて魅力ある職場づくりを進めることは、人手不足の解消にもつながってきます。
働き方改革の5つのステップ
働き方改革を進めるにあたっては、まず自社の現状を把握して対策が必要な課題を洗い出し、施策を検討して改善計画にまとめます。施策実施後に改めて効果測定することで、改善具合が明らかになります。
1.現状把握
働き方改革の代表的な対応項目をリストアップし、社員へアンケート等で現状を調査します。経営層にも理想と現実とのギャップを認識してもらうことが働き方改革の第一歩となります。
2.課題整理
現状把握で洗い出された現実と理想とのギャップに基づき、対策が必要な課題と優先度を決定します。ここで「改善目標」を立てれば、対策実施後の効果測定も可能になります。
3.計画策定
抽出した課題に対する施策と、予算・担当者・日程などを決定します。施策の検討にあたっては自社の環境や風土に適した方法を検討し、改善計画を社内全体で共有します。
4.施策実行
制度の策定やITツールの導入など具体的な施策を進めます。
5.効果測定
アンケート等で改善状況を測定します。定期的に測定することで、当初の想定と異なっていたことに早めに気づいて軌道修正したり、追加施策でさらなる生産性向上を図れます。
アンケートで現状把握する方法
働き方の現状を確認する手段として、アンケートを使う方法があります。経営や社員へのアンケートを通じて全体像を把握することで、理想と現実のギャップを認識したりどこから手を付けていいかわからないと言った悩みを解消できます。また、対策実施後に定期的にアンケートを実施すれば改善状況の把握に役立ちます。
特に、働き方改革を全社的な取り組みとして社内に宣言したり、既存の業務やルールを変更したり、システム導入の投資を行ったりという対応は経営陣の理解・協力が重要です。アンケートを通じた客観的な評価は、経営陣に改善が必要な現状を認識してもらうのに有効です。
現状把握の対象と把握すべき指標
現状把握の項目の一例をご紹介します。
1.労働時間の長さ
- 働く時間の適正さ:先月の所定外労働時間数
- 労働時間に課題のある社員の状況:昨年度、残業時間が80時間以上となった月の回数
2.休暇の取得状況
- 休暇の取得状況:昨年度の年次有給休暇取得率
- 上司・同僚の休暇取得状況:上司・同僚は、積極的に年次有給休暇を取得しているか
3.生産性の高い、メリハリのある働き方・休み方
- 職場における生産性:職場における生産性は、企業が期待している目標水準を達成しているか
- 定時退社の状況:先月、週2日以上定時退社をした頻度
- 連続休暇の取得状況:昨年度、連続5日以上の休暇を取得した回数
4.柔軟な働き方
- 在宅勤務・テレワークの利用状況:在宅勤務やテレワークを日頃から必要に応じて利用しているか(育児・介護事由を除く)
- 勤務時間の柔軟化:現在の職場では、家庭やプライベート等の事情に応じて、早出・遅出等、勤務時間を柔軟に調整できるか(育児・介護事由を除く)
5.時間制約のある社員の活躍
- 時間制約のある社員の就業継続状況:育児や介護、病気等により、働き方に時間制約ができた場合、現在の職場で働き続けることができると思うか
この中でも、特に「3.生産性の高い、メリハリのある働き方・休み方」「4.柔軟な働き方」や「5.時間制約のある社員の活躍」に関してはアンケートなどで社員の声を集めると効果的です。例えば、テレワークというテーマに関しても「テレワーク環境自体(制度・ツール)が整備されているか」という観点にとどまらず、各社員が「使える環境に慣れているか」「活用業務が制限されていないか」「周りの協力や理解は得られていると感じられるか」「生産性の向上や心理的・身体的な変化はあるか」など、各社員の実態を深く聞くことで対応すべき課題を、より明確にすることが可能です。
これらの指標を把握するのに必要なアンケート項目を、ゼロから漏れなく作るのは大変です。加えてデータを分析して報告書を作成し対策を立案するとなると例えば、実践した経験を持っていたり、研究成果が蓄積されていている専門家の支援を受けるのが望ましいでしょう。
まとめ
働き方改革関連法施行が開始され企業にも対応義務が生じています。その内容は多岐にわたり、経営陣以下全社的な取り組みとして対応を進めていく必要があります。また政府が働き方改革を進める背景には少子高齢化による労働人口の減少があり、人手不足の形で企業の経営課題となっています。
自社で働き方改革を進めるにあたっては、まず現状を把握する所から始めます。理想と現実とのギャップを認識し、対処すべき項目と優先度を決め、必要な体制の整備や投資を行うには経営陣の理解・協力が必要だからです。アンケートは客観的なデータを通じて経営陣に現状認識してもらうのに有効な手法です。
いいじかん設計 編集部