長時間労働是正や同一労働同一賃金などを柱とする「働き方改革関連法」が2019年から順次施行され、各企業でも対応が始まっています。「働き方改革関連法」は労働基準法など計8本の法律をまとめて改正したものです。
「働き方改革関連法」の主な項目は、以下のとおりです。
では、政府が働き方改革を急ぐ背景や目的は何でしょうか。
政府がすすめる働き方改革の目的は、”働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。(厚生労働省)”とされています。
さらに、働き方改革の見取り図となる「働き方改革実行計画」では、具体的な目的を2つ説明しています。
また、これらを阻害する要因として、政府は3つの働き方に関する課題を指摘しています。
政府がこのように大掛かりな法改正で働き方改革をすすめる背景には、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」という構造的な問題があります。少子高齢化の結果、2030年には高齢者の割合が日本の人口の1/3にまで上昇、2065年には労働人口が5割減少するという見通しが出ています。
直近でも、2019年の出生数が90万人を下回り、総人口も鳥取県が消滅する規模で減少したというニュースが話題となりました。
単純化すると、40%の社員で今と同じ成果を出さなければいけなくなるため、日本経済の活力を維持するには根本的な生産性向上や、子育てや介護で離職せざるを得なかった社員でも働き続けられる方策などを実施していく必要があります。
働き方改革関連法が2019年から施行された結果、多くの企業が働き方改革に取り組んでいます。
「企業の働き方改革の取り組み状況は?」の記事によると、2018年時点で40%近い企業が働き方改革に取り組んでいます。特に従業員1,000人以上の大企業では60%以上と高い比率になっています。
このように企業が働き方改革に取り組む理由は何でしょうか。
企業の働き方改革の取り組み内容として、長時間労働の是正や有給取得の促進などが上位になっていますが、これらは働き方改革関連法で企業に罰則付きの対応義務が発生し、コンプライアンス上対応が進んでいる、という側面があります。
時間外労働の上限規制では少なくとも年に6か月は時間外労働を45時間以内に収めないと直ちに違法となります。
また、年次有給休暇の取得義務化では、正社員・パート・アルバイトなど名称にかかわらず、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者が対象となり、年5日の取得が義務化されます。
これら働き方改革関連法の規制は、大企業と中小企業で施行時期が異なる項目もあります。例えば、2020年4月から中小企業も時間外労働の上限規制対象になっている点は注意が必要です。詳しくは、大企業と中小企業の定義含め「企業も対応が迫られる?働き方改革関連法の内容と影響」の記事でご確認ください。
少子高齢化の影響は、人手不足という形ですでに顕在化しています。大手の飲食チェーンでも営業時間を短縮するニュースが出ているように、人手不足は企業の事業に影響が出る経営課題となっています。
データによると「2009年をピークに失業率は低下、有効求人倍率は上昇を続け、2018年通年での完全失業率は2.4%、有効求人倍率は1.61倍となった。どちらも1990~1991年ごろのバブル絶頂期と同程度の水準(リクルートワークス研究所Works Review「働く」の論点2019 より)」という人手不足に至っています。(2020.07.現在)
賃金を上げる以外の対策として、最近の就職希望者はネットで企業の評判を調べているので、「働きやすい職場づくり」や「従業員満足度」を通じて魅力的な会社とアピールする対策も有効です。
つまり、働き方改革でワークライフバランスを改善することで、従業員満足度が向上して生産性が向上するとともに、求人のアピールにも役立つのです。
働き方改革の実現を阻害する要因として、政府は「長時間労働を前提とした働き方が定着していることが仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化に歯止めがかからない、子育て中の人間の労働参加を難しくする原因となっていること」としていますが、企業にとっても育児・介護を理由に離職する社員の対策が重要になってきています。
人手不足で採用コストが上昇するなかで、仕事のやり方に馴れた戦力である社員にとどまってもらう方がメリットあることに、各企業が気づき始めています。対策としては、フレックスや時短勤務、在宅勤務やテレワーク制度などの導入などを通じて、柔軟な働き方を認める方法が挙げられます。
「女性が働きたくなる職場づくり」の記事で説明したように、子育て中の女性の就労意欲は高く、総務省の労働力調査によると、男性の就業者数は2008年~2018年にかけて30万人減少したのに対し、女性の就業者数は282万人増加するなど、人手不足の対策として期待されている分野です。
様々なデータを元に、政府がすすめる働き方改革の背景には少子高齢化による労働力不足があること、日本経済が活力を維持していくために前もって対策する目的であることを説明してきました。
企業の働き方改革に対する取り組みは、罰則付きの対応義務がある長時間労働是正や有給取得の促進から始まっていますが、少人数を大前提に企業の生産性を上げることが働き方改革の本質です。
新型コロナ対策で、従業員が出社できず在宅勤務体制に移行した企業が増えています。働き方改革は、生産性の向上はもちろんですが、有事の際の事業継続や、生産性の維持にも役立ちます。
コニカミノルタジャパンでは、2013年から継続的に働き方改革を自社実践し、そのノウハウを「いいじかん設計」として各企業に提供しています。働き方改革でお困りの方はお気軽にご相談ください。
いいじかん設計 編集部
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