2009年以降人手不足の傾向が強まり、近年は半数以上の企業で必要な人員を確保できなかったとする調査が出ています。
その結果、経営課題として「求人難」を挙げた企業の割合がここ数年で増加の一途をたどり、規模が小さい企業ほど人手不足の割合が高いことがわかっています。
特に2000年代以降に成人になった「ミレニアル世代(24歳~39歳前後)」は、スマートフォンなどでネット検索するのが当たり前で、仲間同士の情報交換も活発です。良い職場環境かどうかは、すぐに広がると見たほうが良いでしょう。
ミレニアル世代の行動様式には、人手不足を解消するヒントもあります。働きやすく、フェアで魅力的な職場環境を作り、従業員のクチコミや公式サイトでのアピールをしていけば、彼らを引きつける施策となります。
貴重な経営資源である従業員の満足度を高めることで、個人や組織のパフォーマンスが上がり、業績向上につながるとする「従業員満足度(ES=Employee Satisfaction)」の概念を取り入れる企業が増え、働きがいがある企業ランキングも発表されています。
働きがいのある企業ランキング2019
2019年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング
従業員満足度は「顧客満足度(CS=Customer Satisfaction)」の考え方を従業員にも適用した概念で、1.離職率の低下、2.生産性の向上、3.採用の競争力確保 の3点で効果が期待されています。
また、モチベーションが高い従業員による接客では顧客満足度も上がるので、従業員満足度の向上は顧客満足度の向上にもつながります。
優秀な人材が離職すれば、新たな人材の採用と教育にコストがかかる上、近年の採用難で必要な人材を確保できないリスクもあり、離職率の増加は避けるべき経営課題です。
従業員満足度には大きく分けて金銭的な報酬と、非金銭的な報酬があります。その裏付けとして、心理学者のハーズバーグは、モチベーションの理論として、満足に関わる「動機付け要因」と不満足に関わる「衛生要因」は別であると整理しています。
動機付け要因は仕事の達成感や他者からの承認、仕事そのもの、責任や昇進、成長可能性などがあります。衛生要因には会社の方針や管理方法、労働環境、給与などの待遇があります。
ポイントは金銭的な報酬は衛生要因に分類され、足りなければ不満になるが、多くても働きがいに直結しない点です。優秀な人材や専門性が高い人材のモチベーションを上げるには、金銭以外のモチベーションを与える必要があるのです。
具体的な指標として、先ほどの働きがいのある企業ランキングを発表している openwork は、各企業を
・待遇面の満足度
・人事評価の適正感
・法令遵守意識
・人材の長期育成
・20代成長環境
・社員の相互尊重
・風通しの良さ
・社員の士気
の8つの指標、さらに給与や残業時間、有給消化率などの数値指標などで比較しています。
例えば、「働きがいのある企業ランキング2019」で1位だったグーグル合同会社 「社員クチコミ」のページで例を見られます。
このように各社は転職クチコミサービスなどで従業員満足度を比較される立場でもあり、経営陣にとっては従業員満足度を高めるインセンティブとなっています。
従業員満足度を高めるには、アンケート等で現状を把握した後、目標を設定し(Plan)、施策を実行し(Do)、進捗や改善状況を確認する(Check)のPDCAサイクルを回します。
アンケートの他には、「モチベーションクラウド」や「カオナビ」などの人材管理・組織改善サービスを利用する方法もあります。
従業員満足度を改善する具体的な改善施策については、公開されているものが少ないものの、「働きがいのある企業ランキング2019」の各企業の社員クチコミからその要素が伺えます。
■Googleの社員クチコミ
「風通しがよく組織体制は非常にフラット」「日本法人だがレポート先はオーストラリア、シンガポールなどとなり、グローバルな環境で活躍できる」「定期的に届く経営陣からのメールでも、違いや個性を尊重しようというメッセージが繰り返し共有されます」
■セールスフォース・ドットコムの社員クチコミ
「全体的に協力的な雰囲気が出来上がっている」「成長性の高さと勢いを十分に感じることができる」「毎月のKPIが明確に設定されている」
■三井不動産の社員クチコミ
「様々な機会を与えてくれる」「スケールの大きな経験を積める」「非常にワークライフバランスは良い」「連続した休暇も取りやすい」
■ボストンコンサルティンググループの社員クチコミ
「基本的に一年目でも意見が言え、社内政治もない環境」「新卒入社の子に対しては大切に育てようという感覚がある」「お互いに切磋琢磨する文化」
■リンクアンドモチベーションの社員クチコミ
「経営陣でもすぐそばに並んで仕事をしているために、直接自分の意見を言ったりフランクに会話できたりする」「新人でも提言すればやらせてもらえない仕事はほとんどない」
常態化する採用難と離職による人手不足は、企業の存続を脅かす深刻な経営課題です。人手不足は、大企業に比べ賃金面で見劣りする中小企業でさらに深刻です。
採用後の定着率を高め、従業員の離職を防ぐ目安として「従業員満足度」という概念が生まれています。従業員満足度が高ければ、生産性と顧客満足度も高くなり、ひいては魅力的な職場として採用にも役立ちます。
いいじかん設計 編集部
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