新型コロナによる世界経済の混乱は間違いなく、中小企業にとっても厳しい経営環境が訪れそうですが、それでも事業に必要な人材は確保していかなければなりません。
日本では、少子高齢化を背景に総人口が減少する時代に入り、2019年の人手不足倒産は前年比20.9%増の185件と4年連続で過去最高を更新するなど、人手不足が恒常化しています。帝国データバンクの2020年1月の調査でも、正社員が不足している企業は49.5%に達し、“ソフトウェア受託開発業からは「相当な技術者不足が続いている。案件が捌ききれないのが現状」”などの声が出ています。
さらに、人手不足を感じている企業ほど、賃金改善に積極的な傾向が見られるとしていますが、経営体力で劣る中小企業では賃金以外の要素で大企業に対抗したいところです。
求職者にとって賃金面以外に魅力的に感じられる企業の待遇とはどのようなものでしょうか。近年増えている台風や大雪などの自然災害や、新型コロナウイルスの蔓延などの状況から、在宅でテレワークできる制度が整っている会社や時短勤務が認められている会社など、柔軟な働き方が認められている企業が注目されているようです。これは新卒採用の求職者だけでなく、地方在住で通勤が難しい方、出産を機に企業を退職した女性、あるいは親の介護で離職したものの本来は働き盛りで、企業では役職者だった男性などにとっても魅力的な待遇です。かつては働いていたもののライフイベントなどの理由で退職せざるを得なかった彼らは、能力も就業意欲もあるので、彼らが働き続けられる職場環境を作ってあげればWin-Winの関係になれます。
柔軟な働き方とは、具体的には
などです。
こうした施策は様々な事情を持つ人たちでも、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す「働き方改革」でもあります。
株式会社イマクリエは、コールセンター事業を主な業務としています。2011年の東日本大震災直後に、通勤が困難になった従業員が多数出たことから一時的に在宅勤務を導入、現在は在宅でコールセンターのオペレーター業務している従業員が日本全国にいます。
なかでも、社員・アルバイトの採用担当は和歌山在住で、面接をWeb上で行っていますが、「採用時に困ったことはなく、それよりもテレワークを活用して働けることにメリットを感じてもらえるため、育児や介護で時間の制約がある人、地方在住の人等、優秀な人材を採用できます。」とテレワーク活用のメリットを語っています。
建設業を営む向洋電機土木株式会社では、2008年に時間的制約がある従業員の採用をきっかけに、従業員の特性を重視した「テレワークによる経営効率の向上及び改善」の体制を掲げています。
テレワーク導入以後、25人の従業員のうち10人に子どもが生まれ、男性従業員も育児休業を取得しています。従業員が在宅勤務制度を利用して積極的に育児に参加できる環境整備に特徴があり、面談などを通じてライフステージに応じていくつかの在宅勤務パターンを適用しています。
情報通信業を営む株式会社ガイアックスでは、2017年にオフィスビルをシェアオフィス化し、その一部を本社オフィスとしています。その結果フリーアドレスとテレワークの利用が加速し、多様なテレワーク形態が生まれています。
テレワークを始めとした「働き方改革」により、該当事業部では離職率が1/4に減少(2015年38%から2016年8% へ)、リファラル採用での入社が3倍に増える(リファラル採用が75%を占める)という大きな成果が出ています。
全国10万人の主婦会員を活用したマーケティング事業や在宅就労会員を活用したアウトソーシング事業を営む株式会社キャリア・マムでは、設立当初よりテレワークを導入し、全従業員がテレワーク対象者です。
完全在宅勤務の正社員も多く、従業員も1/3を占めています。また、社員満足度調査によると職場環境や仲間との関係性について、概ね9割の従業員が満足している、という回答が得られ、その理由としてテレワークという勤務形態の選択肢をあげるものが多数でした。
現代では就職希望者はネットで応募企業の評判をチェックしています。社内がホワイトで、時短やテレワーク制度などが使いやすい状態にある企業は大いにアピールするチャンスです。
柔軟な働き方ができることを、企業のWEBサイトやSNSなどで紹介してみましょう。
特に、2020年に入ってからはメディアでも新型コロナで在宅勤務に移行した事例などを取り上げていて、先進事例とみなされれば、中小企業であっても優秀な人材を確保するチャンスにできます。
コニカミノルタジャパンでは企業のWEBサイト制作の支援も行っています。
ですが、昨今では誰もがインターネットに情報を書き込めるようになりました。新型コロナ対策でテレワークに移行した企業も多いですが、「自宅なのにスーツ義務」「家族がデスクトップを持って帰ってきた」「PCの操作頻度を監視」「画面をランダムに撮影し送信」など、生産性とは離れた、従業員を信頼していないような運用が見られます。こうした社内事情もネットを介して伝わってしまうので注意しましょう。
ここ数年人手不足が続いているなか、新型コロナの影響で就活イベントが軒並み中止になるなど、企業の採用活動にも大きな影響が出ています。
合同説明会などで就活生に接する機会が失われたなか、中小企業が人材を確保するにはどのような方法があるでしょうか。今の就職希望者は、ネットの口コミを通じて応募企業の評判をよく調べています。新型コロナで在宅勤務になるにしても、従業員をチェックするような消極的なテレワーク活用なのか、積極的な活用なのかは大きな印象の違いとなって現れます。
社内の働き方改革をすすめて、働きやすい企業としてアピールしていきましょう。
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いいじかん設計 編集部
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