はじめにペーパーレス化の進捗について見てみましょう。
ペーパーロジック株式会社が実施した「ペーパーレス化に伴う2021年度予算に関する意識調査 」を、東京に本社がある企業経営層を対象に行ったところ、2020年に「社内のペーパーレス化を推進した」企業は75.7%に上りました。
一方、日本能率協会は、継続的に行っている職場や仕事に対する考えについての意識調査を行っており、2021年は、全国の20〜69歳までの正規の就業者1000人に対して「ペーパーレス化の取り組み・実施状況」について調査。この調査では、この1年「ペーパーレス化」が進んでいると答えたのは4割程度に留まっており、半数以上が「進んでいない」と認識しているという結果となっています。
ペーパーレス化が「とても進んでいる」と回答した人のうち、その8割程度が「業務の生産性がペーパーレス化により向上する」と回答。一方まったくペーパーレス化が進んでいないグループでは、「向上する」という認識は2割程度です。
全国的にペーパーレス化が進んでいるとはまだ言えませんが、ペーパーレス化が実際に進行している職場では、肯定的な意見が多くなる傾向が見られます。また、職場におけるペーパーレス化に「メリットがある」と考えている人は全体の8割超となっているため、何らかの効果が期待されていることは間違いありません。
ペーパーレス化への追い風となっているのが、データでの保存を可能とする「e-文書法」「電子帳簿保存法」といった法律です。
e-文書法では、法律で保存が義務付けられる文書について、紙媒体での保存だけでなく電子データ(電磁的記録)での保存が認められることが規定されています。e-文書法は各法律を横断するため、会計帳簿や請求書などの証憑(しょうひょう)書類、株主総会議事録、会社の定款などカバー範囲が広いのが特徴です。
一方、電子帳簿保存法は、国税庁が管轄する「国税に関する帳簿書類」について電子保存を認める法律です。
2022年施行の改正電子帳簿保存法によって帳簿書類の電子保存に関する要件が緩和され、電磁的記録で保存することに取り組みやすくなったため、紙媒体で管理していた書類を大幅に削減することができるようになります。
オフィスのペーパーレス化で対象となるのは、業務で使われている紙の書類全般です。上記で説明した法律で規定されるもの以外にも、各自で判断して対応することが望ましいと考えられます。
日々の業務で発生する紙媒体は、ビジネス文書や会議資料、パンフレット・カタログ、チラシやポスター、POPといった販促物など多種多様です。
一方でペーパーレス対象外とするべき文書もあります。緊急時に即座に閲覧する必要がある書類や、各種証明書類のように現物性が高い文書は、ペーパーレス化から外して厳重に保管しておく必要があります。
企業がペーパーレス化を推進するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
デジタル化・データへの置き換えにより、業務で必要とされる書類のやりとりが容易になり、テレワークに対応しやすくなります。
リアルタイムでの情報更新と共有が可能となるため、離れた場所で分散して働く社員の認識の統一に貢献します。
印刷コスト、書類の管理や保管のためのスペースや什器にかかる費用、事務作業にかかる人件費などのコスト軽減が期待できます。
情報の検索性向上・社内全域の情報共有の実現・進捗状況の可視化などにより、業務の効率化が図られます。また情報のデータ化によって、ワークフローシステムをはじめとする業務システムの導入が容易になります。
書類の紛失・盗難による情報漏えいの防止、業務可視化による不正処理の防止、情報共有による社内意識の統一などによって、社内統制強化に役立ちます。
文書の電子化における法規制対応を行うことで、企業として法令遵守の姿勢を示すことができます。
ペーパーレス化の推進ではクラウドを利用したデータ保管により、有事の際にも企業の重要な情報を守ることができます。本部以外の拠点からでも活用できるため、事業継続が可能です。ペーパーレス化、文書の電子化が進んでいないと、BCPを踏まえてのテレワーク実施への対応も容易ではありません。
ペーパーレス化の推進はBCP対策を進めるためにも重要であり、これを進めることでテレワークといった自由度の高い働き方も実現できます。
ペーパーレス化を進めることにより、資源の節約、環境保全に取り組む企業姿勢を明らかにすることができます。企業の社会的責任への視線が厳しくなるなかにあって、企業イメージ向上が期待できます。
ペーパーレス化を推進していくための、一般的な流れを紹介します。
1.ペーパーレス化における目的の明確化
自社がペーパーレス化を行う目的を明確化し、全社員に共有します。企業によっては、コスト削減が最も重視される目的となることもあります。業務効率化を図る上で、ペーパーレス化が必須というケースもあるでしょう。
各目的に対して、可能な限り効果を数値化し、実施効果を検証できるようにしていくことが求められます。
2.社内の現状把握
企業の業務状況によっては、ペーパーレス化の効果が見えにくいこともあり得ます。紙の使用状況を洗い出し、削減の可否を判断しながら、ペーパーレス化による効果の期待値を割り出します。
3.ペーパーレス化可能な業務の分類
実施に当たっては、部署やグループごとにペーパーレス化が可能な業務の分類を行います。いきなり広範囲に適用しようとすると、業務の現場に混乱を招く恐れがあります。
小さなことでも、できるところからペーパーレス化が可能な部分を見つけて、地道に実行していくことが大切です。
4.ツールの活用
ペーパーレス化で必要となるのが、ツールの活用です。スマートフォンやタブレット端末など、個々の社員が活用できるものから導入し、ペーパーレス化を習慣づけていきます。
さらにワークフローシステム、文書管理システム、オンライン会議システム、ペーパーレスFAX、オンラインストレージ、電子決済サービスなどのシステムやサービス活用の検討を行い、効果が見えやすいところから導入を行います。
コニカミノルタで実施した文書削減への取り組みと事例を、「紙に縛られない働き方を実現する文書管理の大原則」で紹介しています。一度ペーパーレス化に成功した後、リバウンドしてしまった経験を踏まえて紹介していますので、ぜひご覧ください。
ペーパーレス化成功の大きなポイントとなるのが、基本的な姿勢を全社員が理解することです。ペーパーレス化推進のためには、書類の処理を廃棄・保管(倉庫の活用)・データ化のいずれかに当てはめて考える必要があります。
各人が行動に迷った際に、この3つのうちのどの対象であるかを判断できるようにしていくことで、不要な書類を増やさず、業務を進められるようになります。
着実な成果を上げていくためには、企業全体がペーパーレス化の必要性・重要性を理解することが大切です。管理する側がいくら声かけしても、現場の理解がなければ反発を招くだけです。全体で勉強会や説明会を開催し、企業側の意図を十分に理解してもらいましょう。上層部が進んでペーパーレス化を実践するといった、足元からの取り組みも必要です。
いきなり全てに手を付けると現場に混乱を生じ、抵抗感が生まれやすくなります。小規模な部分から進めていく、またはペーパーレス化との親和性の高い部署から行い、ロールモデルを作って効果を提示するという方法もあります。
自社内でのペーパーレス化に不安がある場合には外部サービスを活用し、専門的なアドバイスを受けて、無理のない推進を図るのがおすすめです。
客観的な視点からペーパーレス化実現に向けた計画を策定し、自社に合うツールやシステムの選定を行うことが可能となります。
コニカミノルタでは書類・文書の業務をスマートかつスムーズに行うためのドキュメントソリューションサービスを提供しております。文書管理にお悩みの際にはぜひ一度ご覧ください。
国を挙げてペーパーレス化が推進されるなか、いつまでも現状維持というわけにはいきません。今後、全ての書類のペーパーレス化を義務付ける動きが加速すると予測されます。文中の調査では、ペーパーレス化の取り組みが進行しているほど、肯定的な意見が多くなることが示されていました。ペーパーレス化への理解を得ることで、取り組みが社内に広がり、成功へとつながります。企業側が社員への説明を十分に行い、理解を求める姿勢がペーパーレス化成功のカギとなりそうです。
いいじかん設計 編集部
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