デジタルを活用して人々の暮らしや社会をより良いものに変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進しようと、業界問わず様々な企業が取り組みを始めています。国もまずは「脱ハンコ」からとDXの取り組みを始められています。
そこで今回は、コニカミノルタジャパン デジタルワークプレイス事業統括部 ソリューションエンジニアリング統括部 ドキュメント&ナレッジソリューション部 部長の佐藤 憲一さんにインタビューを行いました。
――それでは佐藤さん、よろしくお願いします。
佐藤さん「よろしくお願いします!」
――DXを推進しようと考えると、ついデジタル化を推進できそうなRPAなどのITツールを導入しようと思ってしまいがちです。そこでなぜ「脱ハンコ」が注目されているのでしょうか。
「日本企業がDXを推進する背景は、少子高齢化による労働人口の急激な減少へ対応するために、例えば育児や介護など両立しながらでも効率を落とさず仕事ができるよう、デジタル技術を最大限に活用して多様な働き方に対応していくことだと思っています。多様な働き方の一つとしてテレワークがあります。新型コロナによる緊急事態宣言により、多くの企業が在宅勤務を実施しましたが、会社に行かないとできない業務として押印作業が課題として顕在化しました。この押印作業が「脱ハンコ」というキーワードとしてフォーカスされていますが、ハンコを押す媒体が紙文書であることが、働く場所や時間を縛ったり、情報共有や共同作業の障害となるため、DXを推進する上で基本的な課題であると多くの企業が気付いた状況だと考えます。」
――働き方を変えなければいけない社会の中、大きな課題として「紙に縛られた働き方」があり、そのなかでも特に「押印作業」が課題となっています。ですが、押印作業を見直すことが会社の働き方を変えることにもつながるということですね。
「そうですね。もちろん紙に縛られた働き方の要因すべてが、押印作業ではありませんが、様々なお客様からドキュメントに関する課題のご相談をいただくなかで、紙文書と押印がセットになっている業務フローがまだまだたくさん残っていると感じています。ですので、紙が介在する業務フロー(弊社では紙フローと呼んでいます)のなかでも、押印作業を見直すことは紙に縛られない働き方の重要なポイントになると考えています。」
――「脱ハンコ」を取り組むにあたり、DX推進をいち早く行うにはワークフローシステムを導入すればいいと思ってしまいますが、いかがでしょうか。
「何から取り組むのか?についての正解は各企業の状況によって異なると思いますが、DXをすすめる上で共通して言えるのは、目の前に見えている目立つ課題だけを解決するためだけにツールやシステムを選定し導入すると、結果的に想定していた効果が得られないなどの問題が発生するケースは多くなると思っています。目立つ課題だけにフォーカスするのではなく、その業務全体や関連する業務を把握し、課題の整理と目指すべき姿を明確にした上で解決手段としての適材適所のツールを選定し、運用していくことが大きな成果を生む近道だと考えます。」
まずは自社の状況や紙業務にかかわる課題が何か、把握することで「脱ハンコ」によるDX推進の効果をより発揮できることが分かりました。しかし、紙業務で行うことが当たり前となっていなかで働いていると、どこに課題があるのか見つけ出すことが難しいと思います。
――自社の状況や紙業務の課題はどのように見つけ出せばいいでしょうか。
「確かに日本企業においては、紙が介在する業務は当たり前に、今でも存在していていますが、そこに課題があることは新型コロナ禍において多くの企業が気付いた状況だと思います。紙は物理的に見えるという特徴があるので、棚に保管されている紙文書を目で見て確認しながら業務の棚卸しや整理をすることができます。コニカミノルタジャパンでご支援している文書管理コンサルティングサービスでは、まず調査票と各部へのヒアリングを行い、次に棚やキャビネットに保管されている紙文書を整理しながら可視化、さらにディスカッションを経て優先順位や改善方針を決めていく流れで進めていきます。」
――どの書類をハンコ不要にし、どの書類をハンコ必要のままにするのか、見極める方法はありますか。
「簡単な言い方をすれば、印鑑証明が必要な押印、銀行印、登記・登録印以外、いわゆる認印については脱ハンコができると考えています。実際に国も行政手続きの押印文書については、同様の方針で廃止する方向になってきています。もちろん「脱ハンコ」しても紙文書としての業務が残っては意味がないので、システム化やオンライン化が前提となります。あとは会社ごとの規定やルールによる縛りなどを確認しつつ、場合によっては既定やルールを見直していくことが重要と考えます。」
課題の整理ができたら次はツールの選定です。ここからはツールの選定方法とその後の運用で気を付けたいことについて、お聞きします。
――ツールの選定はどのように行えばいいですか?
「前述の通り、まずは課題の整理をし、あるべき姿を実現するために必要な要件にあった適材適所のツールを選定することが重要だと思います。必要な要件が明確になっていない場合は課題の整理やあるべき姿の設定ができていないことも考えられます。またDXを進めていくためには継続して、様々な業務をシステムに取り込んでいくことが必要になってくるので、外部のベンダーにすべて任せるのはあまりおすすめではありません。後に自社内でツールの設定変更や追加などができるよう、ある程度社内の担当者だけでも運用がしやすいツールを選定することもポイントになります。」
――この自社にあったツールのご提案もコニカミノルタジャパンで行っているのですか?
「はい、紙に縛られない働き方やDXを推進するために必要となる電子ワークフローシステムや文書管理システム、RPAなど、様々なツールやソリューションを自社製品だけにとらわれることなく、お客様の状況に応じたご提案が可能です。弊社として強く意識していることは、ツールはあくまでも手段であり、ツールの導入が目的にならないようにすることです。必要に応じて文書管理コンサルティングサービスを通して、お客様が持つ目的や課題、あるべき姿について明確化させていただき、ツールやソリューションのご提案のインプットにできることが弊社の強みと考えております。」
脱ハンコや文書削減の動きは、DX推進のためには欠かせないと思いますが、これまでの業務のやり方に慣れているとはじめはアナログのやり方の方が効率が良かった、と思うこともあります。スマートフォンやPCなど生活にデジタルの文化が浸透しつつありますが、未だデジタルに対して抵抗感を持っている人も多いと感じます。これらの不安に対して、どのように対処すればいいかお聞きします。
――アナログのやり方に後戻りさせない工夫やポイントはありますか?
「確かに「慣れ=楽」の構図があり、多くの人は変化を嫌うのは当たり前だと思いますが、デジタル化された業務も「慣れ」によって、今までのやり方よりもメリットが実感できている人が増えてくると、それが当たり前になる分岐点がくるのではないでしょうか。いち早くその分岐点に達するようなツール選定や使いこなすための教育、こまめな成果の見える化はポイントになるかもしれません。」
――ハンコの捺印が不要になることで処理作業の時間短縮が見込める反面、ちゃんと確認されたのか不安になったり、紙でのタスク管理をしていると処理済の仕事かどうかが確認できなくなってしまうなどの不安が発生します。このあたりの不安を払拭する方法はありますか?
「押印が必要になる代表的な業務として、紙による様々な申請・承認業務があると思いますが、例えば電子ワークフローシステムに置き換える場合、自ら申請した業務についてはワークフローシステム上で後からでも内容まで確認できますし、今どこまで承認が進んでいるかもタイムリーに把握することが可能です。また多くのシステムでは承認が完了された時点でメールにて通知を受けることが可能です。不安を払拭するためには、もちろん機能やメリットをご理解いただくこともいいですが、伝わりにくかったり、イメージがつかないケースも多々あるので、百聞は一見に如かずでデモンストレーションなどを通して実感いただくのが近道かなと思います。」
脱ハンコや紙業務の見直しが会社のデジタル変革を進めるための第一歩として有効なことが分かりました。脱ハンコや文書管理の動きが社会の流れを大きく変えることにつながるでしょう。
文書管理の見直しは自社の課題を把握した上で行うことが大切です。自社の課題がどこにあるのか把握が難しいなど文書管理におけるお悩みはぜひ、コニカミノルタジャパンへご相談ください。
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