新型コロナの影響を受けて、これまでのオフィスに関する価値観が大きく変化しています。その具体的な理由や企業の動きについて見ていきましょう。
コロナ禍のなかで、人口の首都一極集中化に大きな変化が見られました。2019年10月に転入超過が全国一だった東京が、2020年10月には一転して、全国一の転出超過となったのです。
こうした状況は、オフィス需要にも大きな影響を及ぼしています。三鬼商事株式会社が公表する「オフィスマーケットデータ」によると、東京ビジネス地区(都心5区:千代田・中央・港・新宿・渋谷区)でオフィスの解約が増加する一方、新規契約が伸び悩んでおり、平均空室率が9カ月連続で上昇しているのです。
株式会社月間総務が「全国の総務担当者を対象に実施した調査」によると、2020年8月の時点で、新型コロナウイルスの影響でオフィスの見直しを実施・検討している企業は7割にのぼっています。見直し内容の第1位は「占有面積縮小」。専有面積縮小を実現するための方法としては、フリーアドレス制の導入や執務室の縮小といった回答が寄せられています。
これまでオフィスの価値を伝えるポイントには、都心の一等地に構えた広い業務スペース、自社カフェテリアのような充実した福利厚生施設や景観の良さなどがありました。しかし、テレワークが常態化するなかで、出社する社員の数が減り、これまでオフィスに付帯していた価値観が意味を失いつつあります。従来の価値は社員に広く還元されないだけでなく、不要なコストに転じる可能性も出てきたのです。
オフィスの見直しが求められる理由となるのが、テレワーク導入の増加です。コロナ禍を機に全面的にテレワークに切り替えた企業は少数派ですが、オフィスワークとテレワークの併用やテレワーク対象者の拡充を進める動きが見られます。これまで将来的な課題と見られていた業務のIT化が、コロナ禍をきっかけに急速に進められ、テレワーク実施にはずみをつけています。
また、新型コロナウイルスの影響で社会経済全体が停滞するなかで、業績が伸ばせずに経営状態が悪化している企業が多数見られます。経営危機の脱却、倒産回避の方策としても、事業縮小やオフィス移転の検討が考えられているのでしょう。
新型コロナウイルス対策としてテレワークや時差出勤を導入した企業では、各社員の出社日を調整し、社内人数を低減するといった方法をとっています。社員人数分の座席が不要となれば、フリーアドレス制を導入して、オフィス面積を縮小することが可能です。
先の見えない経済情勢のなか、企業では不要なコストの削減が急がれます。こうした流れから、既存のオフィス契約を解除し、オフィスの縮小や移転を検討する動きが加速しています。
オフィス縮小とあわせて、サテライトオフィスの設置やコワーキングスペースの活用など、社員にとって利便性の高い手段を採用する企業も見られます。
オフィスの適正面積と、オフィス縮小化により削減されるコストについて解説します。
オフィス縮小といっても、業務に支障が出るほど狭い職場にすることはできません。
「労働安全衛生規則」では、「事業者は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積及び床面から四メートルをこえる高さにある空間を除き、労働者一人について、十立方メートル以上としなければならない」と定められています。
つまり、オフィスの天井の高さが2.5メートルの場合、ひとりあたりの最低限の広さは4平方メートルです。これに加えて、通路やすれ違いスペースといった共有部分を含めるとさらに広さが必要となります。
各事業所の事情にもよりますが、これらの数値が自社オフィスの必要面積を割り出す際の参考となりそうです。
テレワークや時差出勤で生じる、出社人数の低減によって削減できるコストについて考えてみましょう。先にあげたひとりあたり4平方メートルをもとに試算します。
例えば、100名のオフィスであれば、必要な面積は400平方メートル(約121坪)ですが、出社社員数を3割減らせば84.7坪となり、約36坪の削減となります。
先述したオフィスマーケットデータによると、2020年11月の東京ビジネス地区の平均賃料は、坪あたり22,223円です。100名のオフィスを3割縮小した場合、単純計算でも毎月80万円程の削減となり、年間総額でみると960万円程度のコスト減となることが分かります。
オフィスを縮小した場合には、直接的な家賃コストに加え、占有面積に対しての光熱費、清掃費など付帯するコスト、また社員の交通費も削減されるため、総合的にかなりの効果が期待できます。
オフィスを縮小することについてのメリットとデメリットを押さえておきましょう。
賃料およびオフィス付帯費用の縮小。テレワーク化による交通費の圧縮など、業務上のコスト削減が期待できる。
余分なスペースがなくなることで、備品や書類の整理が促される。書類は電子化することで保管スペースが不要になり、合わせて業務フローの電子化なども検討するきっかけになる。業務の効率化の検討やオフィス全体のムダの見直しにつながる。
テレワークの定着・拡大が進み、働き方に多様性が生まれる事で、社員のワークライフバランスが確立される。それが企業ブランドイメージの向上に寄与し、結果として良い人材の獲得にも繋がる可能性がある。
オフィスへの出社人数を抑えることで、出勤時の感染リスク低減、またオフィス内での「密」を回避できる。オフィスの細部まで 目が行き届くようになり、感染防止対策の不足する箇所に迅速な対応が可能となる。
単なる移動ではないため、縮小に際しては大幅な物品や業務の削減が必要となる。これまでとは異なる業務環境を一から整備し、オフィス機能を果たせる状態に再構築しなければならない。
オフィス以外の場所で業務にあたる社員について、業務遂行のための環境整備・機器類整備に加え、労務管理の体制やルールを策定する必要がある。
オフィス縮小の効果が出るまで一定の期間が必要。一時的に移転コストが費用対効果を圧迫する。
コニカミノルタジャパンでは、オフィス縮小を検討するお客様に「最適な」働く環境を創造する「Office Right Sizing」サービスを提供します。単に縮小するだけではなく、ニューノーマル時代の理想の働き方や目的を実現するオフィスデザインをトータルでサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。
働き方改革の推進に伴い、社員の働き方の多様化が望まれています。新しいワークスタイルとオフィスのあり方について解説します。
国が推奨する多様で柔軟な働き方の実現は、場所や時間にとらわれずに働ける環境がカギとされています。社員がオフィスに一同に会し、固定されたデスクで業務をこなすスタイルでは対応できません。
働く場所の多様化では、在宅勤務以外に、サードプレイスオフィスの活用があげられています。例としては、サテライトオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、モバイルワークオフィス、コワーキングスペースなどがあります。テレワークの浸透により、雇用が都市部に限定されなくなるため、人材採用の幅が広がり、地方の活性化にもつながるでしょう。
選択肢の広い働き方ができれば、業務に合わせて働く場所を決められ、移動に掛かる時間を効率的に使うことができるでしょう。また、固定席がなくなる事でオフィスのレイアウトも業務やプロジェクトに合わせて、柔軟な組み換えが可能です。さらに、フレックスタイム・時短勤務によって働く時間が一律でなくなり、個人の生活事情に合わせた働き方が可能となります。
コロナ禍のなかでテレワークが急激に浸透した現在、働く場所がオフィス一択ではないことに気づいた企業も多いようです。常時出社する社員数が減少し、在籍社員総数に合わせたオフィスが不要となったため、メインオフィスの縮小化を前向きに検討する企業が増加しています。
オフィスを縮小・移転するだけではなく、社員にとってより利便性が高く、フレキシブルに利用できるオフィスが注目されています。サテライトオフィスの設置やコワーキングスペースの活用は、自宅作業では集中が難しいといった、在宅勤務の課題の解決策としても有効と見られています。
働き方の変化とオフィスのあり方は密接に関係しながら、社会全体にも影響を与えていくでしょう。
新型コロナウイルス対策によって社会にさまざまな変化がもたらされているなかで、注目を集めているオフィスの在り方。これまでオフィスは「社員が揃って働く場所」と、ごく当たり前に捉えられてきましたが、テレワークが実施されるとオフィスには空きスペースが発生し、不要コストが問題視されるようになりました。社会経済の停滞が続く現在、企業運営の効率化・コスト削減は、企業にとってこれまで以上に大きな課題となっています。オフィスを社員の新しい働き方に適合させることは、企業の急務でしょう。自社オフィスの在り方を見直し、アフターコロナ社会に備えるときが来ています。
オフィスの縮小化について詳しくは、こちらもご覧ください。
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いいじかん設計 編集部
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