テレワーク導入の一般的な流れを見ておきましょう。
はじめに、企業の経営方針に従い、運用の方向性を決定づける必要があります。導入するだけで満足してしまうような結末に陥らないためには、導入目的を明確にすることも大切です。テレワークの目的には、働き方改革やコストの最適化、生産性向上、事業経営の危機管理などが考えられますが、自社に必要と思われる目的をピックアップし、狙いを定めます。
自社の状況を正確につかめていなければ、テレワークの導入は成功しません。テレワークの導入に向けた条件は、企業の規模や業種に応じて異なります。事業内容によっては、テレワークとの親和性が低い企業もあるでしょう。しかし、部署によっては実施できる可能性があります。
社内の業務分析を行い、テレワークが可能な対象者や部署を特定していきます。就業規則や社内制度がテレワークに対応していない場合、労働トラブルの原因となりかねません。現行の労務管理制度で、テレワーク時の労働時間や勤怠の把握が可能かを確認し、必要に応じて制度の改正点を探ります。また、テレワークで業務を遂行するためには、企業側と各従業員のICT環境の整備は必須です。現状を調査し、テレワーク導入を円滑に進めるための改善策を具体化します。
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テレワーク導入に向けた主な実施事項としては、以下が挙げられます。
テレワーク導入を進めるための中心的役割を担うチームを任命します。メンバーとしては、人事部門や総務・管財部門、情報システム部門、情報セキュリティー部門のほか、対象者、対象部門のリーダーなどが考えられます。
テレワーク導入開始までのスケジュールを決めます。開始日、効果検証の日取り、プロジェクトの最終的な評価をする期日などを記載した計画書を作成し、企業運営との整合性をチェックします。
テレワークが可能な業務に従事する従業員や、テレワークでメリットのある従業員から対象者を選定します。
業務に従事する場所やテレワークで行う業務範囲を決定します。業務例としては、各種資料の作成・管理、社内手続き、各種連絡取り次ぎ、社内外の会議参加、部下への指導業務、業務知識の蓄積を含む情報収集などが、テレワークでも実施可能です。
複数人がインターネットを介して業務資料を閲覧するためには、業務で使用する文書を電子化し、サーバーに格納する必要があります。
労務関連、セキュリティー関連など、テレワークにおけるルール策定を行います。
リモートデスクトップ、クラウド型アプリケーションなどの利用、労務管理のリモート化といった企業側のICTインフラを整備します。
外部からのデータ閲覧に関するセキュリティー体制の見直しと、アクセス権限付与を含むセキュリティー対策の強化を実施します。
従業員の執務環境を整備するため、ツールの貸し出しや回線利用負担の補助などを検討します。
セミナーや勉強会を開催し、テレワーク導入のための教育を実施します。テレワークによる業務の停滞や不都合を招かないためには、全社的な働き方の意識改革とテレワークへの理解が必要です。対象者だけではなく、テレワークに参加しない従業員にも周知し、理解を求めます。
テレワーク中であっても常に業務上必要となる意思疎通を維持するため、会議システムを活用したコミュニケーション環境を整備します。
テレワーク対象者による試行期間を決め、効果を検証しながら進行します。
試行導入の効果測定のためには、アンケートやインタビューによる実施者評価の収集に加え、検証ポイントを定めて客観的な判断を下せる数値的な基準も必要です。
検証・評価においては量的評価・質的評価の項目に分けて確認します。量的評価の例としては、顧客対応数や伝票、企画書作成などの情報処理件数、企業全体としての業績などが判断基準となります。オフィス賃貸料や電気代、印刷コストなどで削減効果が見られるものも、量的評価に含まれます。一方、質的評価が必要となる例としては、情報共有度や顧客満足度、業務の自律的管理、働き方への満足度などがあります。これらについては、テレワーク導入後の経過にしたがう変化を追って評価の判断を下します。
試行導入とその評価をもとに、持続可能であるか、規模をどこまで拡大できるかなどを検討します。本格導入が可能と判断された場合には、企業全体としての制度化を行い、定期的な検証方法を定めて、着実に成果を上げられるかたちにしていきます。
テレワークを導入する際の留意点を紹介します。
テレワーク導入成功をさまたげる要因となるのが、テレワークについての理解不足です。企業によって、テレワークはほぼ福利厚生的な扱いとみなされ、有給休暇の変則型と捉える管理者も存在します。企業経営に好影響を与えるテレワークとするためには、管理側・実務者側双方が、働き方そのものの変革であることを十分に理解する必要があります。セミナーや勉強会を開催するなどの啓蒙(けいもう)への努力が、企業に求められます。
テレワーク導入の成否を握るのが、テレワークを利用して働く従業員の管理方法です。テレワークでは労働時間を正確に管理することが難しく、個人の行動が見えづらいため、人事評価がしにくくなるといった難点があるからです。また、従業員間のコミュニケーションが希薄になると信頼関係が崩れる要因となりかねず、機密情報の漏えいリスクが高まる恐れもあります。
テレワーク実施時でも社内で業務に従事する場合と同様に、労働基準法が適用されます。以下の点に留意した労務管理体制を整えることが重要です。
一般的にテレワークに関する規定は、就業規則の本則に別枠で記載する例が多く見られます。厚生労働省がひな形を提供しているので、自社規定を策定する際の参考にすると良いでしょう。
就業規則や社内制度の見直しは、専門家のアドバイスがなければ難しい場合もあるでしょう。コニカミノルタジャパンは、TRIPORT株式会社と協業し、テレワーク導入に向けた労務管理などの課題解決の支援を始めました。TRIPORT株式会社が提供する「クラウド社労士コモン」では、テレワークの導入をめざす企業に対し、ITサービスの提供だけでなく、人事や労務相談などができる環境を整え、総合的に課題解決を支援します。これまでは、ITツールの導入、人事・労務制度に関する相談などを個別に手配する必要がありましたが、一括で行えることで、迅速に環境整備ができます。社内に専門的に知識を有する人材が不足している場合には、活用をご検討ください。
テレワーク実施にあたり、リモート環境における業務が滞りなく実施できるよう、サーバーやストレージの確認を行います。企業内ネットワーク(イントラネット)とテレワークの親和性を検討し、連携が難しい場合には代替案を検討します。
テレワークの主な方式は以下のとおりです。
選択する方式によって、システム要件が異なります。複数の方式を同時採用するといったように、もっとも効率が良く、自社にとって現実的な手段を検討します。
従業員が利用する端末の種類が、テレワークに対応しているかを確認します。自宅や執務場所の回線、サーバーのシステム環境、セキュリティーが、執務環境としての条件を満たしていることが基本です。コミュニケーションやデータ共有などでは、家庭の回線にも負担なく利用でき、安全性を担保できるツールを選定する必要があります。
また、プログラム更新の徹底、リモートデスクトップに対する遠隔操作システム、端末のシンクライアント化など、テレワーク実施者とセキュリティー意識を共有することも重要です。
コニカミノルタジャパンでは、自宅のPCやタブレットなどから、会社にあるPCを遠隔操作するリモートデスクトップサービスを取り扱っています。二重ログイン認証や暗号化通信など、高度なセキュリティー対策で安全なテレワーク環境を実現することができます。詳しくはこちらでご紹介しています。
テレワーク実施においてもっとも重要なルールは、セキュリティー管理と人的管理に関わる規定です。
機密情報の漏えいは、企業に大きな損害を招きます。社外でデータを扱うことが増えるテレワーク導入にあたっては、情報管理ルール、持ち出しルール、セキュリティールール・情報セキュリティーポリシーを策定し、それらの周知と実施の徹底を行います。情報セキュリティーポリシーは個人の権限や責任範囲を定め、具体的な実践方法や手続きなどを明確に表します。
テレワーク勤務に関する規程では、就業場所の明示、労働時間の規定、テレワークで発生するコスト負担の取り決め、各種手当や賃金規定との関連性に留意する必要があります。また、在席管理や業務時間中に関してのルールの設定など、詳細についても実施可能な枠組みを明示することが求められます。
企業がテレワークに本格的に取り組むためには、インフラ整備やルールの策定などの多大な労力が必要です。しかし、テレワーク導入に成功した際には、自社の抱えている課題が解決へ結びつく希望もあります。テレワークから期待される成果を得るためには、一つひとつのプロセスを精査しながら確実に進めていきましょう。
社内体制を整えるためには、助成金を活用する手もあります。「クラウド社労士コモン」では、助成金情報を定期的に提供するだけではなく、助成金申請の代行も承ります。ご利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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いいじかん設計 編集部
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