コニカミノルタ

アニュアルレポート2013

財務分析・連結財務諸表

  • 財務分析(MD&A)
  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結キャッシュ・フロー計算書

財務分析

事業環境

欧州債務問題の影響を受けユーロ圏経済がマイナス成長になり、さらに世界経済の成長を牽引してきた新興国の経済が伸び悩みました。米国経済は、雇用環境の改善や資産価格の上昇が消費を押し上げ、回復の傾向が見られます。一方、日本国内の経済は、上半期は震災需要の一巡や円高の進行など景気の下押し要因が重なり、製造業にとって厳しい状況が続きましたが、2012年末以降は政権交代とともに、円高修正が急速に進み、景気の先行きに期待感が高まりつつあります。

営業概況

売上高
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2012年末以降の円高修正の動きに加え、各事業における主力製品の販売強化とM&Aの推進が奏功し、前期比451億円(5.9%)増の8,130億円となりました。

営業利益
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情報機器事業で一部新製品にかかるコストダウン計画の遅れや欧州での市況悪化の影響を受けたものの、産業用材料・機器事業およびヘルスケア事業での販売増や収益改善の取り組みが寄与し、売上総利益率は46.2%となり、前期と同水準を維持しました。

販売費及び一般管理費は、M&Aなど施策の推進による売上高増加に伴い、前期比199億円の増加となりました。

以上の結果、営業利益は、前期比3億円(0.8%)増の406億円となりました。

税金等調整前当期純利益

一部生産設備にかかる固定資産除売却損および減損損失47億円、構造改革費用などの特別損失を計上した結果、税金等調整前当期純利益は、前期比10億円(3.1%)増の338億円となりました。

当期純利益
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当期純利益は、法人税等計上額が前期に比べ増加したため、前期比52億円(25.9%)減の151億円となりました。

セグメント別概況

情報機器事業

オフィス分野では、A3カラー複合機は新製品効果が寄与し、当期の販売台数は前期を上回りました。A3モノクロ複合機は市場の成熟化が進み、欧州など主要市場で販売台数が減少しましたが、A3複合機全体の販売台数は前期を上回りました。

プロダクションプリント分野では、カラー機は厳しい市場環境の中で米国および日本での販売を伸ばし、モノクロ機は上半期から販売を開始した「bizhub(ビズハブ) PRO 951」「bizhub(ビズハブ) PRESS 1250」「bizhub(ビズハブ) PRESS 1052」の新製品効果も奏功し、販売台数はカラー機、モノクロ機とも前期を上回りました。

当事業では、複合機をはじめとする出力機器およびソリューションサービスの販売拡大と将来の業容転換を狙いとしたM&Aを積極的に進めています。
オフィス分野では、OPS(Optimized Print Services)とともに進めている業務プロセス改善サービスを実行する上で核となるITサービス力の強化を図るため、ITサービスプロバイダーであるSerians S.A.S.(本社:フランス)を2012年6月に、Raber+Märcker GmbH(本社:ドイツ)を同12月に買収し、中堅中小企業のお客様の業務プロセス改善に対する提案力を高めました。米国においても、同様のM&Aを5件(当期中に効力発生)実施しました。グローバルレベルでの大口顧客向け販売では、欧州の大手エネルギー会社とグローバル契約を締結するなど、前期から顧客数を拡大しました。

プロダクションプリント分野では、企業内印刷市場における営業力、サービス力、ソリューション提案力強化を図るため、日本ではオンデマンド出力サービスのリーディングカンパニーであるフェデックス キンコーズ・ジャパン株式会社を2012年5月に、韓国でもFedEx Kinko's Korea Ltd.を2013年1月に買収しました。欧州では、お客様の印刷物の制作に関わるマテリアルとコストの最適化やマーケティング企画を得意として、欧州地域18カ国で事業展開の実績を有する大手プリントマネジメントサービス会社Charterhouse PM Limited(本社:イギリス)を2012年12月に買収しました。

これらの結果、情報機器事業の売上高は5,816億円(前期比6.2%増)、営業利益は316億円(同19.8%減)となりました。売上高は、カラー複合機の新製品およびプロダクションプリント機の販売数量の拡大やM&A効果などが寄与し、前期比で増収となりました。営業利益は、新製品でのコストダウン計画の遅れや欧州での市況悪化の影響を受けて減益となりました。

産業用材料・機器事業

ディスプレイ材料分野では、当社の強みである40μm厚のTACフィルム、大型テレビ向けVA-TACおよび60μm厚TACフィルムなど薄膜製品が好調に推移し、これら製品の販売数量は前期を上回りました。また、業界に先駆けてモバイル市場向けに25μm厚の超薄膜TACフィルムの量産を2012年11月より開始し、薄膜製品における競争力を一層高めました。

光学分野では、HDD用ガラス基板および光ディスク用ピックアップレンズは市況悪化の影響が大きく、販売が振るわなかったものの、デジタルシネマ用プロジェクターレンズやデジタル一眼レフカメラ用交換レンズ、コンパクトデジタルカメラ用ズームレンズユニットにおいて、当社製品の採用が広がりました。また、携帯電話用レンズユニットはスマートフォン向け出荷が2012年初から始まり、いずれの製品も販売数量は前期を上回りました。

計測機器分野では、スマートフォンなどのディスプレイやLED照明器具の製造工程の中で品質管理に使われる色彩照度計「CL-200A」やディスプレイカラーアナライザー「CA-310」などの光源色計測機器の大口受注を獲得し、販売数量は前期を上回りました。このような光源色測定領域での競争力強化を図るため、特に上位セグメントの製品で高いシェアを持つInstrument Systems GmbH(本社:ドイツ)を2012年11月に買収しました。

これらの結果、産業用材料・機器事業の売上高は1,467億円、営業利益は236億円となりました。光学分野など一部製品を除いて、当事業の主要な製品全般の販売数量が増加したことにより、前期比で増収増益となりました。

ヘルスケア事業

国内外の医療施設に向けてデジタルX線画像診断システムの販売拡大に取り組みました。当社の独自開発および自社生産による高画質シンチレータ(蛍光体)を搭載し、小型かつ世界最軽量ながら低被曝、高画質を実現したカセッテ型デジタルX線撮影装置「AeroDR(エアロディーアール)」は、一般撮影用装置向けや回診車向けなどの販売がさらなる拡大傾向にあり、先進国を中心としたフィルム製品の売上減の影響を補いました。

これらの結果、ヘルスケア事業の売上高は727億円(前期比0.4%減)、営業利益は、デジタルX線撮影装置の販売増に伴う売上総利益の増加と収益性改善の取り組みの効果で前期の9千万円から33億円への大幅な増益となりました。

キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フロー:

税金等調整前当期純利益338億円、減価償却費459億円、のれん償却額98億円などによるキャッシュ・フローの増加と、運転資本の減少111億円、法人税等の支払い135億円などによるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは664億円のプラス(前期は723億円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フロー:
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情報機器事業における金型投資や、産業用材料・機器事業における新規事業や生産効率増強にかかる投資などの有形固定資産の取得による支出310億円のほか、情報機器事におけるプロダクションプリント、ITサービス力の強化を目的とした買収(日本、欧州、米国、アジア)に伴う子会社株式の取得や事業譲受、産業用材料・機器事業における子会社出資金の取得を合わせた支出231億円などにより、投資活動によるキャッシュ・フローは634億円のマイナス(前期は427億円のマイナス)となりました。

この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは30億円のプラス(前期は296億円のプラス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フロー:

社債の償還による支出400億円、配当金の支払額79億円、短期および長期借入金の純増加額249億円などにより、財務活動によるキャッシュ・フローは245億円のマイナス(前期は263億円のプラス)となりました。

設備投資および減価償却

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当期の設備投資の総額は、前期比44億円(13.0%)増の384億円となりました。事業別では、情報機器事業220億円、産業用材料・機器事業94億円、ヘルスケア事業15億円となりました。当期に実施した主な設備投資は、情報機器事業における新製品の金型投資やオプト事業におけるTACフィルムの生産能力増強などです。減価償却費については、前期比33億円(6.6%)減の459億円となりました。

研究開発

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研究開発費は、将来の成長分野への投資を継続したものの、前期比9億円(1.4%)減の715億円となりました。なお事業別では、情報機器事業393億円(前期比10.9%減)、産業用材料・機器事業146億円、ヘルスケア事業28億円(同41.9%減)、事業部門に含まれない基礎研究費用などで146億円(同11.4%増)となりました。

財政状態

総資産の部
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流動資産は、現金及び預金が前期比27億円増加の934億円、有価証券が207億円減少の1,205億円となり、現金及び現金同等物としては180億円減少の2,139億円となりました。受取手形及び売掛金は198億円増加の1,940億円となり、たな卸資産は73億円増加し1,124億円となりました。
固定資産については、有形固定資産は全体として償却が進んだ一方、情報機器事業における設備投資などにより9億円増加の1,799億円となりました。無形固定資産は、情報機器事業および産業用材料・機器事業における企業買収によるのれんなどの増加により235億円増加の1,109億円となりました。投資その他の資産は、3億円増加の701億円となりました。
これらの結果、当期末の総資産は、前期末比385億円(4.3%)増加し、9,405億円となりました。

負債の部
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支払手形及び買掛金は、27億円減少し854億円となり、有利子負債(長短借入金と社債の合計額)は、30億円減少し2,248億円となりました。一方、未払費用と未払金等の増加により、総負債は4,741億円となりました。

純資産の部
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その他の包括利益累計額は、株式相場の影響によりその他有価証券評価差額金が21億円増加し、USドルおよびユーロを中心とした円高修正に伴う為替換算調整勘定の変動により、為替換算調整勘定が219億円増加しました。
以上の結果、当期末の純資産は、314億円(7.2%)増加の4,664億円となりました。
なお、当期末の自己資本比率は1.4ポイント増加し、49.4%となりました。

配当政策

配当に関する基本方針
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当社では、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題と捉えており、連結業績および成長分野への戦略投資の推進などを総合的に勘案しつつ、株主の皆様へ継続的に利益還元することを基本としています。具体的な配当の指標としては、連結配当性向25%以上を中長期的な目標としています。自己株式の取得については、当社の財務状況や株価の推移なども勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断していきます。

当期の配当と今期(2014年3月期)の予定

当期は、増収を確保するも最終減益となるなど厳しい決算となりましたが、期末配当は予定通り1株当たり7.5円の配当とさせていただきました。第2四半期末配当と合わせた年間配当金は、1株当たり15円となります。
今期の配当については、業績見通しの達成を前提として、第2四半期末配当ならびに期末配当は1株当たり7円50銭の普通配当を予定しています。
当社グループは、2003年のコニカとミノルタの経営統合より、2013年8月で10周年を迎えます。つきましては、株主の皆様の日頃のご支援にお応えするため、今期(2014年3月期)の第2四半期末配当においては、1株当たり2円50銭の記念配当を実施し、7円50銭の普通配当と合わせ1株当たり10円の配当を実施させていただく予定です。この結果、1株当たりの年間配当金としては17円50銭となる予定です。

今期(2014年3月期)の見通し

当社グループを取り巻く世界の経済情勢を見通すと、財政問題を抱える欧州経済は依然として先行きに不透明感が残る一方、米国経済は雇用状況、資産価格の上昇に支えられた個人消費の回復傾向が景気を押し上げるものと思われます。新興国では、2012年後半に陰りが見えた中国経済には引き続き注視を要するものの、ASEAN諸国などでは高い成長率の維持が期待されます。日本経済は円高の修正、物価の先高観から個人消費が回復し、2013年後半以降は経済成長が顕著になると思われます。

主な当社関連市場の需要見通しにつきましては、情報機器事業では、オフィス分野、プロダクションプリント分野ともに、先進国ではカラー機の需要拡大が引き続き継続するものと思われます。また、新興国ではGDP成長に沿った需要拡大が見込まれます。産業用材料・機器事業では、タブレット端末など中小型LCDの市場の成長に伴って需要が拡大する一方で、テレビ市場の成長鈍化やパソコンのマイナス成長も予想され、TACフィルムの総需要としては緩やかな成長となる見通しです。
ヘルスケア事業では、カセッテ型デジタルX線撮影装置への需要が日本、北中南米、アジアを中心に高い成長率が継続すると見込まれます。

このような状況に鑑み、今期の業績見通しについては、以下のように予想しています。

2013年度業績予想(2013年5月10日現在) (億円)
売上高 9,000
営業利益 550
営業利益率 6.1%
当期純利益 260
 
設備投資 470
減価償却費 500
研究開発費 760
フリー・キャッシュ・フロー 25
営業CF-設備投資CF 325

年間配当金 17.50円
なお、為替レートについては、USドル:93円、ユーロ:123円を前提としています。