気候関連財務情報開示(TCFD)
指標と目標
気候関連のリスクおよび機会を評価・管理するために使用する指標と目標
コニカミノルタは、お取引先、お客様を中心とするステークホルダーとの連携によって地球上のCO2削減に積極的に関わっていく「カーボンマイナス」の実現を目指しております。カーボンマイナスとは“自社責任範囲と定められるCO2排出量(スコープ1、2、3排出量)(注)に比べて、責任範囲外でのCO2削減貢献量(スコープ1、2、3以外での削減)を多くすること”と当社では定義しています。
また、近年の社会の要請を鑑み、自社責任範囲のCO2排出量において「ネットゼロ」を目指すこととしました。ステークホルダーが社会的責任を果たす活動の支援をするだけでなく、自社の社会的責任を果たすことで、脱炭素化の効果を加速するとともに、ステークホルダーとの結びつきを広げ、ともに事業成長していくことを目指します。
- (注)
- スコープ1:燃料の使用などを通じて企業が「直接排出」する排出量
スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気を使用した事による「間接排出」の排出量
スコープ3:スコープ1,2以外の、原料調達・物流・製品使用などバリューチェーンで発生する自社の事業活動に関連した排出量
「カーボンマイナス」および「ネットゼロ」の目標
(目標と実績の詳細は、サステナビリティ目標と実績を参照してください)
詳細データは、「ESGデータページ」の環境データ(Excel)を参照ください。
1.温室効果ガス排出量(スコープ1,2,3排出量)
コニカミノルタでは、気候変動のリスクを管理する指標として、製品ライフサイクルCO2排出量の目標を定めています。製品ライフサイクルCO2排出量には、スコープ1,2のすべて(生産段階、販売・サービス段階のCO2排出量)と、主要なスコープ3(調達段階、物流段階、製品使用段階のCO2排出量)を含めています。
短期的には2025年に61%削減(80万トン)、中期的には2030年までに2005年度比で70%削減(62万トン)する目標を設定しています。2023年度は、約75万トン(スコープ1は15万トン、スコープ2は14万トン、主要なスコープ3は46万トン)で2022年度の58%から63%削減まで到達しました。当社ではCO2排出量の実績値について第三者保証を取得し妥当性を担保しています。
長期的には、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス排出をネットゼロにする目標を設定しています。
製品ライフサイクルにおけるCO2排出量(スコープ1,2,3)
(単位:万t-CO2)
実績 | 目標 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2005 年度 (基準年度) |
2018 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2025 年度 |
2030 年度 |
|||
製品ライフサイクルCO2排出量 | 206.7 | 104.1 | 79.0 | 85.1 | 74.8 | 80.0 | 62.0 | ||
スコープ1 (生産、販売・サービス) |
25.4 | 17.0 | 15.9 | 15.1 | 14.8 | 17.0 | |||
スコープ2 (生産、販売・サービス) |
22.0 | 19.7 | 16.4 | 15.1 | 13.9 | ||||
スコープ3 (調達、物流、製品使用) |
159.2 | 67.5 | 46.7 | 54.8 | 46.2 | 45.0 | |||
カテゴリー1 (購入した物品、サービス) |
39.7 | 43.7 | 24.7 | 29.6 | 27.2 | ||||
カテゴリー4 (輸送・流通(上流)のうち製品物流) |
5.8 | 2.6 | 4.1 | 8.3 | 2.8 | ||||
カテゴリー11 (販売した製品の使用) |
113.7 | 21.1 | 17.9 | 16.9 | 16.2 |
- 注
- 数値については四捨五入しているため、合計が合わない場合があります。
2.移行リスク
コニカミノルタでは、人為的なCO2排出の主要因となる化石燃料に依存しない再生可能エネルギー社会へいち早く適合し事業運営することが、持続的に成長できる企業の必須要件であると考えています。こうした考えから、移行リスクの管理指標として「再生可能エネルギー由来電力比率」を採用し、自社の事業活動で使用する電力の調達を2050年までに100%再生可能エネルギー由来にする目標を設定しています。中期的には2030年までに50%以上へ高める目標を設定しています。2023年度はマレーシアの生産拠点における再生可能エネルギー由来の電力使用の本格稼働(太陽光発電設備の設置に加え、再生可能エネルギー証書を利用)により、再生可能エネルギー由来電力比率は、2022年度の12.3%から13.5%まで高まりました。
コニカミノルタグループ全体の約75%の売上規模を占める情報機器事業では、ステークホルダーから再生可能エネルギー調達の導入要請が顕在化しています。この社会要請を事業リスクと捉え、重点項目として優先的に対応を進め、海外複合機生産の全拠点において再生可能エネルギー100%化を達成、維持しています。情報機器事業の全体に占める電力使用量のうち、38%の再生可能エネルギー化が完了するとともに、2024年度には45%まで導入拡大する計画です。今後も毎年リスクレビューを行い、リスクが潜在している事業についても再生可能エネルギーの導入を検討していく予定です。
再生可能エネルギー由来電力比率
- 注
- 2019年度は、コニカミノルタグループ全体の電力使用量(コジェネ発電量含まず)に占める再生可能エネルギー由来電力の比率。2020年度以降は、コニカミノルタグループ全体の電力使用量に占める再生可能エネルギー由来電力の比率。
3.物理リスク
情報機器事業の売上規模は、コニカミノルタグループ全体の約75%を占めています。この主力事業である情報機器事業では、生産した製品を世界150か国のお客様へお届けしており、世界各地で大規模な気候災害が発生すると、当社グループの生産および供給能力に影響を及ぼす可能性があります。コスト競争力強化と市場への迅速な製品供給のために海外での生産活動を継続するとともに、部品や材料を世界中の複数のサプライヤーから調達する方針を取っています。
また、こうした災害リスクに備え、プロフェッショナルプリント事業、オフィス事業では、消耗品として供給する部品生産および印刷用トナーの生産および充填を行う自社生産拠点を、日本、欧州、北米に複数展開し、消費地で供給できるレジリエンスの高いサプライチェーン体制を確保するよう努めております。
4.気候関連の機会
コニカミノルタは、社会が脱炭素へ向かい変容していくなかで、気候変動問題を解決することが事業機会となり、企業の持続的な成長へつながると考えています。最先端の技術を積極的に取り込み、強みとする画像IoT技術とデジタル入出力の技術を融合させることで、気候変動を含む社会課題の解決に寄与するソリューションを生み出し、環境課題解決と事業拡大の両立を目指しています。
また、自社の製品やソリューションをステークホルダーへ提供することで創出される、経済価値および環境価値の両方において指標を設定しています。
経済価値は、「気候変動への対応に資するグリーンプロダクツ売上高」、およびグループ全体の売上高に占める比率(グリーンプロダクツ売上高比率)の2つの指標を設定しています。
環境価値は、「製品使用時CO2削減量」(製品の省エネ設計・開発などスコープ3排出量の削減)、「CO2削減貢献量」(お客様の生産プロセスを革新するソリューションなど、スコープ1,2,3を超える範囲での削減貢献)の2つの指標を設定しています。
<経済価値>
2023年度の気候変動への対応に資するグリーンプロダクツ売上高の実績は7,728億円でした。コニカミノルタグループ全体の売上高に占める割合は67%まで到達しました。
2025年度は、気候変動への対応に資するグリーンプロダクツの売上高の基準を再定義するとともに、グリーンプロダクツ売上高比率を70%にする目標を設定しています。
<環境価値>
製品使用時CO2削減量は、2023年度は目標0.8万トンに対して実績は0.7万トンでした。
CO2削減貢献量は、2023年度は目標63万トンに対して実績は63万トンを創出しました。主にプロフェッショナルプリント事業で、アナログからデジタル印刷への作業工程変革による生産性向上を実現するデジタルプリンターの販売を拡大しました。
2025年度は、製品使用時CO2削減量を2.1万トン、CO2削減貢献量は 80万トン(自社製品ライフサイクルにおけるCO2排出量以上)とする目標を設定しています。
5.資本配備
コニカミノルタでは「気候変動への対応」を、長期の経営ビジョンにおいて取り組むべき5つのマテリアリティの一つとして特定しています。中長期において企業価値向上、低炭素社会実現への貢献に資する事業活動へ資本投入を行っています。気候変動への対応(CO2削減貢献)に資する事業の研究開発費用は、2023年度は295億円で、コニカミノルタグループ全体の研究開発費に占める割合は約45%でした。
6.報酬
コニカミノルタでは、中期経営計画の目標達成へのインセンティブを高めるとともに自社株保有の促進を図るため、中期株式報酬(業績連動型)を構成する評価指標のうち、非財務指標として「施策によるCO2排出削減量※」を設定しています。執行役社長およびその他の執行役の役員報酬は、中期経営計画の終了後、目標達成度に応じて0%~200%の範囲で決定され、当社株式が交付されます。気候変動への対応という社会課題解決を図りつつ環境価値を事業成長につなげていくために、評価指標として選定しています。
- ※
- 当初「CO2排出量削減率」を指標として設定した気候変動への対応においては、生産量・販売量の影響を考慮し、「施策によるCO2排出削減量」に改定することを2024年4月23日開催の報酬委員会において決議しました。
(報酬の詳細は、ガバナンスの仕組み・運営>役員報酬について を参照ください)