自然関連財務情報開示(TNFD)
基本的な考え方
基本的な考え方
コニカミノルタは、自然資本による事業への依存と影響、その評価及び機会とリスクに取り組んでいく姿勢を明確にするため、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しております。2024年1月、スイスで開催された世界経済フォーラムにおいて、TNFDアーリーアダプター企業として登録いたしました。自然資本の依存と影響の評価及びその情報をTNFDフレームワークに沿って開示いたします。
〔ガバナンス〕 自然関連のリスク及び機会にかかる組織のガバナンス
コニカミノルタは、2008年に長期的な環境ビジョンである「エコビジョン2050」において「生物多様性の修復と保全に取り組む」ことを取締役会で承認しました。また2023年には、マテリアリティの1つである「有限な資源の有効利用」について、「地球資源使用ゼロに向けて、自社製品における地球資源使用量を2050年までに90%以上削減する」「自社製品以外での地球資源の削減貢献量を拡大する」という目標を、新たな中期経営戦略の一部として2023年5月の取締役会で承認しました。
コニカミノルタでは、代表執行役社長が生物多様性への対応を含む環境マネジメント全体についての最高責任と権限を有し、環境マネジメントの有効性について責任を担っております。そして代表執行役社長から任命されたグループ環境責任者が生物多様性への対応を含む環境マネジメントを推進し、中期計画を作成するとともに、その進捗状況について、経営執行会議および取締役会へ定期的に報告し、経営課題として審議しています。
また自然関連の依存・インパクト、リスク・機会を評価・管理する際に考慮すべきステークホルダーの影響については、当社の人権方針、人権デュー・デリジェンスに沿って考慮しております。当社の人権方針、人権デュー・デリジェンスについては、当社ウェブサイト「人権」を参照ください。
〔戦略〕 自然関連のリスク及び機会にかかる組織の事業・戦略・財務に対する影響
2023年5月、当社はマテリアリティの1つである「有限な資源の有効利用」について、当社の長期的な環境ビジョンである「エコビジョン2050」において2050年の定量的な目標を設定することを意思決定しました。具体的には、地球資源使用ゼロ(注)に向けて、自社製品における地球資源使用量を90%以上削減するとともに、自社製品以外での地球資源の削減貢献量を拡大していきます。自社製品やサービスの提供に使用する資源において、枯渇資源に該当する地球資源に依存しない事業形態へ変革するとともに、事業活動を通じた取組みにより非財務価値を財務と同期させて企業価値を向上することを目指しております。
中期的に取り組む活動計画の具体化にあたっては、2023年9月に発表されたTNFDの提言内容を参照し、当社事業における地球資源及び生物多様性への依存と影響を評価しております。TNFDが提唱する9つのグローバル中核指標の視点においてイシューを抽出して事業活動における自然への依存と影響を評価し、リスクと機会を特定しております。
(注)地球資源:原油や鉱物資源等の新たな採掘を伴う資源。一般に枯渇性資源と同義
TNFD中核指標 | 当社への影響 | |||
---|---|---|---|---|
自然の変化要因 | 9つの中核指標 | リスク | 機会 | |
依存 | 土地/淡水/海洋利用の変化 | 1 土地の総フットプリント | - | - |
2 土地/淡水/海洋利用の変化の範囲 | - | - | ||
資源の利用 | 3 水ストレス地域からの取水・消費 | ・サプライチェーン:取水制限等による高い水ストレス地域(東南アジア)からの供給量が低下 | ・捺染ドライプロセス:水ストレスが高い地域(インド、トルコ、イタリア)での水レス染色システム | |
4 土地/海洋/淡水から調達する高リスクの天然資源 | ・天然資源:規制強化等によるリスクの高い天然資源の供給不足 ・紙:森林資源へのアクセス制限、社会嗜好変化などによる紙利用・出力機会が減少 |
- | ||
影響 | 汚染・汚染除去 | 5 土壌汚染 | - | ・有害物質フリー技術:残留性有害物質等のフリー技術の提供 |
6 排水量 | - | ・デジタル印刷/捺染、インクジェット技術:水質汚染の深刻な地域(南アジア)での廃水削減技術 | ||
7 廃棄物の発生と処分 | ・使用済み製品:循環型社会促進策等による製品へのリサイクル義務化 | - | ||
8 プラスチックによる汚染 | ・プラスチック:循環型社会促進策等による製品への再生資源利用への要求 | ・再生プラスチック技術:循環型社会形成促進策等による再生技術・材料技術・センシング技術の需要増 | ||
9 非GHG大気汚染物質 | - | - |
<自然シナリオ分析の実施と結果>
コニカミノルタでは、2030年の視点で業績に影響を及ぼす事業リスクと、課題解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しております。政策強化により自然が保護・回復に向かう場合と、現行の延長で自然が劣化し続ける場合の2つのシナリオを想定し、リスクの発現あるいは機会獲得の可能性がある対象セグメント、分類、時間軸および対処を、それぞれ特定しております。対処においては、緩和階層(mitigation hierarchy)アプローチを念頭に設定しています。
シナリオ分析を行う際の枠組みとして、自然シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な自然リスクおよび機会の特定、自然に関するシナリオの検討、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しております。分析にあたっては、生物多様性や気候変動、有限な資源など地球環境に関わる自社直接操業だけでなく、自社事業の隣接地域、サプライチェーン上流・下流における自然関連の依存・インパクトを含め、リスク・機会の特定・評価・優先順位づけを行っています。
●政策強化により自然が保護・回復に向かう場合
自然に関連する「リスク」への対処
当社への依存と影響 | 自然の変化要因 | 対象セグメント | 分類 | 時間軸 | 対処 | |
---|---|---|---|---|---|---|
調達・製造コストの上昇 | 循環型社会促進策等による製品への再生プラスチック資源利用への要求 | 影響 | インダストリー事業 情報機器事業 |
政策、技術 | 短~中期 | 【最小化(Minimization)】環境ラベル新基準相当の製品サーキュラーエコノミー設計、公共調達・入札要件への対応 |
製品開発コストの上昇 | 使用済み製品へのリサイクル義務化 | 影響 | 情報機器事業 | 政策 | 中期 | 【最小化(Minimization)】環境ラベル新基準相当の製品サーキュラーエコノミー設計、公共調達・入札要件への対応 |
製品サービスの需要変化による売上減少 | 森林生態系保護による森林資源へのアクセス制限 | 依存 | 情報機器事業 | 政策、市場 | 短~中期 | 【回避 (Avoidance)】ペーパーレス事業へのビジネス転換 |
自然に関連する「機会」
当社への依存と影響 | 自然の変化要因 | 対象セグメント | 分類 | 時間軸 | |
---|---|---|---|---|---|
ビジネスパフォーマンスに関わる機会 | 印刷産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション技術 | 影響 | 情報機器事業 | 製品/サービス | 短~中期 |
アパレル産業のサプライチェーンを改革するデジタルソリューション(南アジア) | 影響 | 情報機器事業 | 製品/サービス | 短期 | |
生産ラインのインクジェット化による顧客のワークフロー改革、水・溶剤削減 | 影響 | インダストリー事業 | 製品/サービス | 短~中期 | |
水ストレスが高い地域(インド、トルコ、イタリア)での水レス染色システムの需要増 | 依存 | 情報機器事業 | 製品/サービス | 短~中期 | |
サステナビリティパフォーマンスに関わる機会 | 循環型社会形成促進策等による再生プラスチック技術・材料技術・センシング技術の需要増 | 影響 | インダストリー事業 情報機器事業 |
天然資源の持続可能な利用 | 中期 |
残留性有害物質等のフリー技術の提供 | 影響 | インダストリー事業 | 生態系の保護・回復・再生 | 長期 |
●現行の延長で自然が劣化し続ける場合
自然に関連する「リスク」への対処
当社への依存と影響 | 自然の変化要因 | 対象セグメント | 分類 | 時間軸 | 対処 | |
---|---|---|---|---|---|---|
生産能力減少による収益減 | 気候パターンの変化に伴ともなう天然資源の供給量不足・供給停止 | 依存 | インダストリー事業 | 慢性物理 | 長期 | 【回避 (Avoidance)】特定の天然資源に依存しない製品設計と開発 |
水資源の枯渇・取水制限による生産・調達拠点の生産能力低下(東南アジア) | 依存 | 情報機器事業 インダストリー事業 |
慢性物理 | 長期 | 【最小化(Minimization)】生産・調達拠点の水リスク評価、水使用量の削減 | |
製品サービスの需要変化による売上減少 | 異常気象及および森林火災の発生に伴ともなう森林資源へのアクセス制限 | 依存 | 情報機器事業 | 慢性物理 | 長期 | 【回避 (Avoidance)】ペーパーレス事業へのビジネス転換 |
自然に関連する「機会」
なし
リスクと機会の「分類」
移行リスク | 政策、市場、技術、評判、法的責任 |
---|---|
物理的リスク | 急性物理、慢性物理 |
システミックリスク | 生態系不安定化、金融不安定化 |
ビジネスパフォーマンスに関わる機会 | 市場、資本の流れと資本調達、製品/サービス、資源効率、評判資本 |
サステナビリティパフォーマンスに関わる機会 | 天然資源の持続可能な利用、生態系の保護・回復・再生 |
「時間軸」の定義と評価基準
長期 | 10年以上 |
---|---|
中期 | 3~10年以内 |
短期 | 1~3年以内 |
「自然の変化要因」
依存 | 土地の総フットプリント、土地/淡水/海洋利用の変化の範囲、水ストレス地域からの取水・消費、土地/海洋/淡水から調達する高リスクの天然資源 |
---|---|
影響 | 土壌汚染、排水量、廃棄物の発生と処分、プラスチックによる汚染、非GHG大気汚染物質 |
〔リスクとインパクト管理〕 自然関連のリスクとインパクトを識別・評価・管理するために用いるプロセス
コニカミノルタでは、森林生態系等、生物多様性を含む環境リスクは、グループ全体の経営リスクの一つとして位置付け、リスクマネジメント委員会において管理しております。また、特定の自然資源への依存を有する事業においては、事業中期計画の中で、生産・調達リスクを評価・特定して対応を行っております。また、自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の特定・評価・優先順位付けのプロセスについては、〔戦略〕に記載しています。
〔指標と目標〕 自然関連のリスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標
コニカミノルタの長期的な環境ビジョンである「エコビジョン2050」において、「地球資源使用ゼロに向けて、自社製品における地球資源使用量を2050年までに90%以上削減する」「自社製品以外での地球資源の削減貢献量を拡大する」及び「生物多様性の修復と保全に取り組む」を目標設定しております。この長期目標を達成するためのマイルストーンとして、中期経営計画(2023-2025)に紐づく「中期環境計画2025」において管理指標を設定しております。2025年度に自社製品における地球資源使用量を20%削減すること、自社製品以外での顧客・社会における資源削減貢献量を40万トン創出することを目標として設定し、年度計画を策定して四半期ごとに達成度を確認するとともに追加施策の検討を行っております。
また、各国地域における法規制及び条例順守に関連する環境項目につきましては、排水量、廃棄物、非GHG大気汚染物質を管理指標として設定し、定常的にモニタリングしております。
製品のライフサイクルごとの測定管理指標につきましては、当社Webサイト「事業活動に伴う環境負荷の全体像」を参照ください。