2019年現在、雇用情勢が改善される一方、中小企業や非製造業を中心にバブル期並みの人手不足感が強まっています。収益悪化や倒産件数の増加など、人手不足が原因で事業に影響が出る企業も増えています。
人手不足の大きな背景には少子高齢化による労働人口の減少があります。対策として、生産性向上や多様な働き方を認めることで労働力を確保するなどの「働き方改革」が企業に求められています。
人手不足の改善に役立つ働き方改革の施策の例をご紹介します。
出産・育児のため退職していた女性や定年後の高齢者など、労働意欲があるのに就労できていなかった人材にアプローチする方法が考えられます。
例えば、求人票に「在宅勤務可」や「テレワーク可」といった内容を記載しただけで、就職希望率が約2倍になった事例があります。
転勤に伴う離職を避けるため、勤務地域を明示した「地域限定社員」制度を導入する企業もあります。
フィットネスクラブを運営するティップネス社では、自宅から通勤可能な店舗での勤務に限定されるエリア限定正社員の制度を設け、育児や介護等の事情を抱える社員を支援しています。その結果、2017年の離職率が3.3%に留まるなど、人材定着に効果がありました。
これらに加え、フレックス制度など「柔軟な働き方ができる環境」を整えれば、子育てや介護を理由に離職してしまった社員が働き続けられる効果が期待できます。
在宅勤務やテレワークなどの「時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」を実現するには、紙文書の削減も重要です。まだ紙書類による稟議・決裁ワークが残っていたり、 外出先から必要な文書にアクセスできない環境では効率が上がりません。
例えば中野区教育委員会では年間約35,000枚の紙文書を削減し、ペーパーレス会議を実現しました。
このように、働き方改革を進めるにあたってはボトルネックとなる箇所を把握する作業も重要です。
人手不足の対策として働き方改革を進めるには、どこから手を付けたら良いでしょうか。
まず自社の現状を把握して対策が必要な課題を洗い出し、施策を検討して改善計画にまとめます。施策実施後に改めて効果測定することで、改善具合が明らかになります。
現状把握を通じて、人手不足という現象の根本原因を探ります。経営層にも理想と現実とのギャップを認識してもらうことが働き方改革の第一歩となるので、重要なステップです。
具体的には働き方改革の代表的な対応項目をリストアップし、アンケート等で調査します。現状把握の対象は制度に関する「ルール」、インフラや生産性向上を進める「システム」、それらを活用する「ヒト」の意識の3分野に分けられます。
フレックス制度や短時間勤務、モバイルワークなどの導入状況や人事評価制度の対応状況。
「時間や場所にとらわれない働き方」のインフラとなるネット会議システムやセキュリティーを担保した文書管理・ネットプリントシステム、フリーアドレスなどの導入状況。
従業員の生産性や満足度、働き方改革の目標や方針が明確化されていて、それらが社内に浸透しているかなど。
現状把握で洗い出された現実と理想とのギャップに基づき、対策が必要な課題と優先度を決定します。
どの程度の改善を見込むかの「目標」の決定も大事です。全社にテレワークを導入するのと、一部部署・職種で試験的に導入するのでは必要な施策や予算規模も異なってきます。
抽出した課題に対する施策と、予算・担当者・日程などを決定します。長年習慣化された結果今の状態があるので、施策の検討にあたっては自社の環境や風土に適した方法を検討し、改善計画を社内全体で共有します。
制度の策定やITサービスの導入など具体的な施策を進めます。
などの施策が考えられます。
ルール・システム・ヒトについて、アンケート等で改善状況を測定します。
定期的に測定することで、当初の想定と異なっていたことに早めに気づいて軌道修正したり、追加施策でさらなる生産性向上を図れます。
少子高齢化による人手不足は、今後数十年にわたって進行します。この状況に対して企業も「働き方改革」を通じて魅力的な職場環境を構築し、それを内外にアピールして人材採用や離職防止につなげていく努力が求められています。
いいじかん設計 編集部
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