最初に2030年問題の概要と、関連性の深い2025年問題を説明します。
2030年問題とは単独に定義された問題ではなく、2030年に表面化すると考えられる数々の社会問題の総称として使われる言葉です。
2030年問題の根底にあるのは、人口減少・少子化・高齢化社会といった日本が抱える慢性的な課題。2030年以降は社会に長く内在してきたこれらの要素により、大きな混乱が引き起こされると予測されています。
具体的にはこれらが雇用や医療、社会保障に大きな影響を与えることで、考え方やシステムの変革を余儀なくされると見られます。
2030年問題に深く関わっているのが、2025年問題です。2025年には「団塊の世代」と呼ばれる層が、全て75歳以上の後期高齢者となることで社会構造に大きな変化が起こります。
「団塊の世代」は、戦後の第一次ベビーブーム時に誕生した1947(昭和22)年~1949(昭和24)年生まれの人たちです。出生数では約806万人、人口のおよそ5%を占める大きな集団となっています。
厚生労働省による2025年問題の具体的な内容は以下のとおりです。
厚生労働省が示している「今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~」 を見ると、2015年に「団塊の世代」が65歳以上の前期高齢者に達しました。それ以降はこれまでの高齢化の進展の速さに加え、高齢者数の多さ、つまり人口に占める比率の高さが、さらに大きな問題となっています。
2025年には一般世帯に対する世帯主65歳以上の割合は約37%、そのうち高齢者の一人暮らしは約37%になると予想されています。ここで問題とされるのが、要介護者の急増です。厚労省の別の調査によると、特に75歳以上になると、要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇します。介護が必要になった主な原因では、「認知症」がもっとも多くなっており、2018年時点では高齢者の7人に1人が発症しているという研究結果もあります。今後、高齢者の増加とともに、認知症高齢者の数も増えることは免れません。
これまでは地方の高齢化が注目されてきましたが、首都圏をはじめとする「都市部」での高齢化も急進しています。介護施設や介護人材の不足、地域とのつながりの薄い都会での独居といった、これまでとは異なる問題が顕在化すると考えられます。
日本の死亡者数の増加は、高齢化に伴うものです。高齢化率が上昇するに従い、死亡者数も増加していきます。出生率を上げる画期的な施策が打ち出されないうちは日本の総人口の減少は早まっていくと考えられます。
2030年問題によって、社会にはどのような影響があると考えられているのでしょうか。
2030年には15歳以上65歳未満の生産年齢人口比率が6割以下となり、高齢者層の割合が高まります。労働需要に対する人手不足は、644万人とも予測されています。
労働人口が減少することで日本の経済活動が鈍化する恐れがあり、経済成長率・GDP(国内総生産)の低下へとつながります。働き手の補充が期待できない企業では、ダイナミズムが失われ、思い切った施策を実施できなくなる可能性が高まります。経済力が落ちれば国際市場での競争力も下落し、日本の国際社会での存在感が薄れるかもしれません。
経済成長率の低下、税収の減少により、社会保障費への不安がもたらされます。ほかの年代と比較したとき、75歳以上になると一人当たりの医療費や介護認定率が上昇し、社会保障費への負担が増大します 。現役世代の割合が低下するなか、介護・医療費が増加し、国の財政を圧迫することが懸念されます。
市民サービスの担い手の不足も深刻です。自治体のような市民生活に直結する場での人手不足は、生活に対する満足度低下の原因となり、社会生活の円滑な運営に支障をきたす恐れがあります。
2030年問題の衝撃をどのように受け止め、企業の存続のためにはどのような考え方で備えるべきなのかを解説します。
2025年、2030年はすでに目前に迫っています。何とかなるのではないか、というように現実から目をそらしたままでは、社会の変化についていけなくなるでしょう。
これまで以上に人的資源の獲得競争が激化することは目に見えています。グローバル人材、IT人材といった特殊なスキルだけではなく、直接的に業績(売上・利益)に結びつく業務を担う人材のみならず、その直接業務を支援する業務、例えば、人事、総務、経理といった企業の屋台骨とも呼ばれる業務の担い手も不足すると予測されます。そうなると企業の強みである製造や開発、営業、販売といった業務を継続するために必要な業務処理が滞ることになります。従業員の評価や給与計算、あるいは様々な事務処理といった作業が効率的に行えない状況になると、企業内に不満がたまり、製品の品質が維持できなくなる可能性も高まり、やがて企業のブランド力の低下を招く事態にもなりかねません。
人的資源以外にも、社会全体の不安が大きくなるなかで、新たな設備投資を控える傾向がまん延し、消費行動が縮小化に向かう可能性もあり得ます。
2030年以降も企業を安定して継続していくためには、現実をしっかりと見据えながら自社の改革・改善の方向を探る必要があります。
コロナ禍においてテレワークの導入が推進され、その重要性や有用性も実感するところとなりました。業務のオンライン化の可否を精査し、テレワークへの体制を整備することは、既存の人的リソースの効率的な活用が行えるだけでなく、新しい人材登用への可能性を広げることにつながります。
また同時に、人手の絶対数が減少するなかでは RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用による反復作業の自動化や、逆に難易度の高い作業の省力化に向けたAI活用といった道を探る必要もあります。新しい技術を積極的に、自社業務に取り込む姿勢も必要です。業務効率化や人手不足の解消を促すためのRPA活用については以下の記事もご参照ください。
また、営業職における人手不足はデジタルマーケティングの施策やオンライン商談ができる環境を構築することが一対策となります。コニカミノルタジャパンのIDEA SHOWROOMでは営業プロセスのDX推進に関するおすすめ見学コースを公開中です。ぜひお気軽にご覧ください。
社内の人的リソースを十分に活用するために業務の振り分けを行い、選択肢の一つとして、外部への依頼やアウトソーシングの活用を視野に入れることも必要でしょう。
フレックスタイム、時短、テレワーク、ダブルワークなど、働き方の多様化を受容・促進し、潜在する人的リソースを戦力として活用していきます。地方人材や介護・育児などで離職した人への再アプローチ、退職者に向けたリクルートなど、幅広い年代・属性の活用から可能性を見出していきます。
人材獲得においては、いかに魅力ある企業の姿を示せるかが一つのポイントとなります。企業内部の課題を整理し、厳しい時代のなかでも仕事に対してやりがいや喜びを感じられる職場であることを目指します。
公正な評価制度やキャリア形成支援、女性登用の枠を広げるといった姿勢も必要です。自社本位の考え方から脱却し、持続性のある世界を築いていくためのSDGsに配慮した社会貢献度の高い企業であることも、人材から選ばれる企業としての強い条件となります。
2030年まですでに10年を切り、団塊の世代が後期高齢者になる日も近づいてきています。企業が自社存続のためにどのような手を打てるのか、悠長に構えている場合ではありません。自社の特性を改めて見つめ直し、同時に、組織体制、業務工程など人的リソースを適切に十分活用できているかの視点をもって、多角的に課題を洗い出しましょう。そして問題解決に効果があると判断した施策については、その実現可能な手段を検討した上で、速やかにスタートさせる必要があります。大切なのは、2030年問題の社会への影響を広くとらえること。近視眼的な思考ではなく、社会全体に貢献しつつ自社としても持続可能な手法の検討と実施が求められます。
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いいじかん設計 編集部
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