日本と海外のテレワークの状況を、コロナ禍以前と合わせて紹介していきます。
コロナ禍によって、世界中でテレワークを実施している様子がニュースで報じられました。では、2020年以前のテレワーク事情は、どのようなものだったのでしょうか。厚生労働省のサイトには、各国の企業におけるテレワーク普及率が以下のように公表されています。
出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト 海外のテレワークの導入状況テレワーク発祥の国である米国では、やはり突出した普及率が見られます。欧州各国は調査年が2010年と古いにもかかわらず、日本より高い普及率を示すところが多く、日本の普及率の低さが感じられます。加えてこの調査では、日本での導入率調査は従業員規模100人以上の企業を対象としているため、従業員規模100人未満の中小企業を含めた場合には普及率にさらに大きな差があると考えられます。
国内でのテレワークの状況推移を見てみましょう。
総務省の調査によると、東京オリンピックの開催予定を翌年に控えていた2019年9月末時点、企業におけるテレワーク導入率は20.2%となっていました。そこから、2020年3月時点での正社員におけるテレワークの実施率は13.2%、さらに4月には27.9%となり、ひと月の間に2倍以上に増加していることからテレワークは新たな働き方として一定の割合で定着したと見られます。(出典:パーソル総合研究所 第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査)
コロナ禍以降の海外のテレワークに関する情報を見ておきましょう。
8割以上の企業がテレワークを導入している米国では、週5日以上の在宅勤務者が17%から44%とコロナ禍以前に比べて大幅に増加しました。
英国では、2020年3月からの外出規制期間中におけるテレワーク従事者の割合が約5割に達しています。2019年時点の国内企業に対する調査では、68%が「フレキシブルなワークプレース」の方針を表明しており、すでにテレワーク導入へのベースが整っていたことが伺われます。
フランスにおいては、テレワークに関する労使の合意が2020年11月26日に成立。コロナ禍でテレワークが急増するなか、従来のテレワークの法規制では十分でないとする労働組合の要請が、長い協議の末に通った形となりました。
海外企業の多くがテレワーク導入を進めていますが、実施後に課題が浮き彫りになる例も少なくないようです。特にテレワークに関して懸念される点としては、以下のようなものがあります。
企業と社員の間の信頼関係の度合いによっては、監視下に置かれていない時間での社員の業務遂行力について、懐疑的な見方をする意見も聞かれます。
家に閉じこもって仕事をすることにより、心理面への影響が懸念されます。コミュニケーションの機会が失われる期間が長引くと、社員間・上司部下間の信頼感が低下する恐れがあります。
個人的な時間との境界がなくなり、長時間働き過ぎる可能性があります。
開発や研究職などの職種によっては、自宅における業務環境が整わず、出社せざるを得ないという例が見られます。
セキュリティー体制の整備された社内とは異なり、テレワーク環境では情報漏えいや攻撃対象とされるリスクが高まります。
上記の項目を見ると、海外企業でのテレワーク普及率は高いものの、抱えている課題は日本と変わりません。
では、なぜ日本ではテレワークの普及が遅れているのでしょうか。主な原因として企業への帰属意識の違いや、作業環境・機器類の整備不足、社員の管理体制や雇用形態など、日本企業特有の理由が考えられます。
そのほかにも、米国のような国は国土が広く、日本ほど交通網が発達していないため、日本よりもテレワークのメリットが大きかったという事情もあるでしょう。
日本でも課題の克服方法が検討され、テレワークのメリットがデメリットを上回ると認知されれば、導入に前向きになる企業が増えることが予想されます。
先行する海外企業から見える実施のポイントと、テレワークの事例を紹介します。
・「勤務時間」を決める
生活サイクルを乱さないためには、自宅やその他の場所で仕事をする際にも出社時の勤務時間を基本とするのが望ましいと言えます。勤務時間を定めればプライベートの時間と分けることができ、働き過ぎを抑制できます。
・ワークスペースの確保
仕事モードに入り作業に集中するためには、業務環境を整えることが大切です。専用の部屋が確保できない場合には、パーティションやカーテンで仕切るといったように、生活から隔離した状態を作ります。
・Webカメラの利用
仲間意識が失われていくことは、精神的にも業務を遂行するうえでも好ましくありません。メールや電話に加え、適宜Webカメラを通じてコミュニケーションを取ると良いでしょう。朝礼や終礼など定時にコンタクトを取るようにすれば、働く仲間がいるという安心感が共有できます。
・テクノロジー面での準備
インターネット回線や業務環境を整えるための機器類、多方面からのアクセスを可能にするサーバーやストレージなど、テレワークを円滑に行うためには細部にわたる準備が必要となります。テレワークについて戦略的に考え、ノートパソコンその他のハードウェアやクラウドベースの連携ツール、最適なビジネスアプリケーションの選定などを行います。
・社員へのサポート
社内での業務と変わらない生産性を上げていくためには、社員をいかに支援するかがより重要となります。物心両面でのサポートを提供することが、持続性のあるテレワークを実現します。また、テレワークの実施に当たっては、職務や業務内容とそれを行う社員のテレワークとの適合性を確認しておく必要があります。
・適切なツールの提供
テレワークという新しい働き方を可能とするためには、それに特化したツールが必要です。コミュニケーションやタスク管理、時間管理、さらに業務ワークフローの自動化ツールなどを活用しながら、テレワークで発生する課題と向き合っていきます。
テレワーク導入に当たっての課題と対応ソリューションについては、「テレワークソリューション」にてご紹介しています。
海外企業のテレワーク実施の事例を紹介します。
・Twitter社
SNS大手企業Twitter社では、業務環境が許す限り「永遠に」テレワークを認めることを発表しています。また、テレワークに必要な家具や機器などを揃えるための費用として、社員に1,000米ドルの特別支援手当を提供。テレワークを無理なく実施できるよう、社員のサポートを強化しています。
・Dell Technologies社
IT大手Dell社では、約5年前から働き方改革に着手していました。すでに90%の社員にノートPCを配布しており、リモートワーク環境の整備に努めています。開発者、営業担当者、コンタクトセンター、工場、エグゼクティブなど職種や業務内容に合わせ、最適なITツールを提供。これまでテレワーク勤務の対象とされていなかった職種についても、新たなソフトを導入してテレワークができるように図っています。
・Deloitte Tohmatsu Consulting社
監査、税務、法務、コンサルティング業務、ファイナンシャルアドバイザーなど、幅広い事業を展開するDeloitte Tohmatsu Consulting社。同社ではコロナ感染の状況を鑑みて、在宅勤務指示が出される以前からテレワークを導入し、オンラインでの会議などを実施してきました。また、全ての予定を関係者間で共有することが通例となっており、それを可能とするために予定表システムを活用。テレワークへの下地は十分に整えられていました。
さらに、同社ではテレワークの実施においても通常と変わらない成果を上げ続けるため、「タッチポイントミーティング」を通じて各人の作業状況の把握を行なっています。
「タッチポイントミーティング」とは、テレワーク実施によって進捗状況が不明確になる、個人が課題を抱え込んだままになるなどを回避するために、適切な段階でケアできるよう社員との接点を設けるミーティングです。同社ではタッチポイントミーティングを行うことによって、作業指示から進捗の確認、さらには最終的な成果の評価まで、きめ細かく対応できる体制を整えています。
ここまで海外のテレワーク事情を中心に見てきましたが、日本人の働き方はこれからどのように変化していくのでしょうか。
コロナ禍を経て、日本社会においてもオフィスに対する意識の変化が起こっています。これまで当たり前であった社員全員が集まるような大きなオフィスを、不要と判断する企業も増加しています。その表れとして、すでにオフィスの縮小化や、解約によるコストカットの動きが見られます。
社員側でも都市部から地方への移転を考える人が増加し、総務省の調査によれば東京では2020年7月から5カ月連続で転出超過となりました。テレワーク期間が自身の仕事と人生について、あらためて見直す機会となったことが推測されます。
テレワークの有効性は、感染症対策だけではありません。地震や台風などの自然災害、テロ攻撃への対処法ともなります。オフィスへ通勤できない状況下での業務継続、重要データの分散化といったリスク対策としても有効です。
コニカミノルタジャパンでは「ニューノーマルの働き方」に関する資料をご提供しています。多様性のある働き方の検討には、当社のホワイトペーパー「コニカミノルタジャパンのニューノーマル時代の働き方」をご活用ください。テレワークによりワーク・ライフ・バランスが実現するようになれば、企業としての魅力が増し、人材確保への好ましい材料となるのが期待できます。遠隔地での業務が可能であれば、リクルート対象の拡大により人材不足解消の一手ともなり得るでしょう。
テレワークの浸透によって、社会全体が柔軟性のある働き方へシフトすることは容易に想像できます。すでに時差通勤やフレックスタイム制を活用し、出社の分散化と出社率の抑制を図っている企業は珍しくありません。
全ての業務をテレワークとするのではなく、多彩な働き方を併用し、スモールオフィスやサテライトオフィスを設置するという方法も考えられます。新しい働き方の普及とともに、オフィスの最適化への注目も高まっていくでしょう。
オフィス最適化サービスについては、「Office Right Sizing~ニューノーマルの働く場・働き方を実現するサービス~」をご参照ください。
テレワークの実施にはコミュニケーションやリスク対応、環境整備など世界的に共通する課題もありますが、進め方や手段は企業それぞれの条件に合わせた検討が必要です。テレワーク導入の成功事例から分かるのは、管理側がテレワークについて十分に理解し、常に適切な施策を探っていることです。ワークスタイルの改革に向けた取り組みにまい進し、実施後には効果測定を行い、導入しただけで終わらせないといった姿勢も求められます。自宅勤務のみに固執するのではなく、社員の意見を随時聞きながら柔軟な働き方を提供していくことが、持続的な働き方改革へとつながります。
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いいじかん設計 編集部
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