公開日2024.12.13
ラベル新聞 吉永様の講演から学ぶ
現在のラベル市場と今後の予測
国内唯一のラベル関連専門誌 ラベル新聞の営業部長 吉永様をお迎えし、「現在のラベル市場と今後の予測」というテーマで講演をいただきました。
本記事では、吉永様の講演内容をもとに、ラベル市場の最新動向や今後の市場予測について詳しく解説します。ラベル印刷会社のみなさまだけではなく、商業印刷に携われている方々にとっても、今後のビジネス戦略を考える上で非常に参考になる内容です。ぜひご一読ください。
ラベルフォーラムジャパン2024主催者報告
ラベル市場のお話の前に、まずは弊社主催にて開催させていただいたラベルフォーラムジャパン2024についてご報告させていただきます。
今回は東京ビッグサイトでは初めての開催となり、おかげさまで過去最大の出展をいただくことができました。新規出展も増え、なかでもデジタル印刷機やレーザーカッター・カッティングプロッターなどの後加工機を数多く展示いただき、みなさまの注目を浴びました。
イベントのテーマは、「持続可能なラベルの未来を切り拓く」。本テーマは、ブランドオーナーに商品の魅力を伝えるラベルの価値や環境配慮対応への取り組みを啓発したいという想いで掲げさせていただきました。
ラベル専業以外の展示も増加
ラベルフォーラムジャパンでは国内外から多様なラベル製品を集めた博覧会「ラベルパビリオン」も開催していますが、今回は専業のラベル会社だけではなく、兼業や他業種からの参加も増えました。
「大きなステッカーでも反らない」ということをユニークに訴求された西村謄写堂様や、箔やメタリックインキを活用したお酒ラベルに力を入れられている錦明印刷様など、専業以外の印刷会社様にも一緒に盛り上げていただきました。
※ラベルフォーラムジャパン2024については、コニカミノルタ出展レポートでも詳しくご紹介しています。
現在のラベル市場
それでは本題の「現在のラベル市場」についてご説明させていただきます。
日本の粘着ラベル市場ですが、ラベル印刷会社数としては2,800社。これはロールtoロールのラベル印刷機を1台以上持っている会社をカウントしています。ピーク時には3,000社程度ありましたが、統廃合が少しずつ進みに現在の数になっています。
ラベルの市場規模は、5千億円。経済産業省が発表されている印刷市場(5兆円)の約10%程度にあたります。出荷量としては13億㎡で、東京ドームで例えるとおよそ3万個分になります。
ラベル印刷機は2,800社に11,000台が導入されており、1社平均で3~4台が使われている計算になります。ロールtoロールのデジタルラベル印刷機は400台で全体の約3%にあたり、このあとのラベル印刷機の設置状況でも述べますが、効率化や人手不足の観点からも今後さらに増えていくと予想しています。
粘着ラベル出荷量推移
市況ですが、ラベル市場はこれまで堅調に推移してきました。年平均の成長率で言いますと、1%程度の底力を持っています。ただここ数年は、コロナ禍や物価上昇による買い控えなどで、やや厳しい状況が続いていました。
しかし、ラベル新聞の見解では、ラベル市場はまもなく回復すると見込んでおり、1%台の成長率に戻ると確信しています。
ラベル印刷機の設置状況としては、半数以上の53%を凸版平圧機が占めています。続いて凸版間欠機が25%。ハイエンド機にあたる凸版輪転機が13%。デジタル印刷機は3%です。
しかし、この半数以上に設置されている凸版平圧機が2024年に製造中止になることが発表されました。約6,000台設置されている凸版平圧機を今後更新するとしたら、凸版間欠機かデジタル印刷機にするか、という状況になっています。
これまでラベル業界はなかなかデジタル化が進んでいませんでしたが、近年は人手不足解消、効率化、付加価値拡大の観点から導入される会社も増えつつあります。全ての課題がデジタルで置き換わるというわけではありませんが、凸版平圧機の製造中止により、デジタル印刷機の導入は今後も増えていくことでしょう。
景況感アンケート
ラベル新聞で実施させていただいた景況感アンケートでは、増収・増益と回答された会社が半数以上と、ラベル業界の経営状況は改善傾向にあります。
受注状況としては3,000枚以下のジョブが30%以上を占め、ラベルでも小ロットジョブのニーズが増えています。
ジョブの色数をみてみると、識別性や美粧性を高めるという観点から3色以上のカラーラベルの需要が51%と増えています。そのほか単色が27%、2色が22%という状況です。
さらに段取り替え時間の平均値については、アナログ印刷機に比べてデジタル印刷機の段取り時間は、約1/3以下という結果でした。
ラベルのジョブは「6割が特色」と言われるほど特色が多いことが特徴ですが、段取り替え時間の多くを調色に費やしています。調色は、調整作業に約1時間程度かかるだけではなく、合わせるための経験値も必要になります。
こうした段取り替え時間の削減や属人化の解消、小ロットジョブにも効率的に対応できるという観点から、ラベル業界でもデジタル化に対する見方が変わってきているのです。
課題と今後の予測
アンケート調査で見えてきた課題としては、やはり資材価格の高騰や人手不足、生産性の見直しが急務であるという点です。
資材価格の高騰や賃上げなどのコストに関しては、収益性の改善やロスの削減などを推し進めていかなければならないという声が多く聞こえています。
人手不足の解消については、技術の平準化を進めていくなかで、印刷機以外のソフトウェアなども含めてワークフロー全体の改善を図っていかなければならない状況であり、ラベル新聞としても様々な知見の啓発を進めていきたいと考えています。
最後に今後の予測としては、ラベル業界のボーダレス化が進んでいくと考えています。商業印刷やパッケージ印刷からの参入が増えており、全体の17%が商業印刷との兼業、さらに20%がパッケージ印刷との兼業になっています。このボーダレス化は今後ますます進むでしょう。
こうしたボーダレス化のなかで商品力や競争力を確保するためには、付加価値の高いラベルを提供できるかが重要になってきます。最近のトピックで言いますと、容器包装のポジティブリスト制度が導入され、食品に直接ラベルを貼ることも可能になりました。これによりブランドオーナーとしては包装費が削減でき、環境対応につなげることができます。
こうした社会の変化や求められるニーズに柔軟に対応しながら、付加価値のあるラベルがますます求められていくでしょう。
ラベル新聞社 吉永 宙Profile:1973年福岡県生まれ。ラベル新聞社にて25年間営業を担当。2004年から市場調査事業を開始し、調査部を兼務。年間3~4件、累計70件の調査プロジェクトに対応する。 Profile:1973年福岡県生まれ。ラベル新聞社にて25年間営業を担当。2004年から市場調査事業を開始し、調査部を兼務。年間3~4件、累計70件の調査プロジェクトに対応する。 |
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