少子高齢化が進む日本では労働人口が減少しつつあり、人手不足は企業の事業に影響を与える経営課題となっています。
人手不足には必要な人材を採用できない採用難と、離職による定着率の低下の2種類あります。離職でできた穴を採用で埋めようとすれば、採用と教育のコストがかかり、職場環境を改善して離職を食い止める方が効率的なことに企業は気づき始めています。加えて、働く人の賃金単価はずっと上がっている状況のため、採用にかかるコストは毎年さらに高くなる傾向にあります。
“「働きがい」や「働きやすさ」がある会社では、従業員の仕事に対する意欲が高く、職場への定着が進みやすい傾向があり、さらに、会社の業績も高い傾向にある。”
また、魅力的な職場環境をPRできれば採用にもつながります。実際、新社会人女性に対する調査では、就活で給与水準より「働きやすさを優先」する人が7割、という結果も出ています。(2020.02.現在)
「職場環境」の概念では、厚生労働省が定める「快適職場指針」を指す場合と、さまざまなストレス対策も含む広義の職場環境を見る場合があります。
まず1992年に改正された労働安全衛生法で、「快適職場づくり」が事業者の努力義務とされました。その指針としては、厚生労働省が公表した「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針(快適職場指針)」があります。
労働者は生活時間のおよそ1/3を職場で過ごしています。生活の一部と言ってよい職場が、寒かったり、汚れていたり、人間関係が良くないと労働者自身が不幸になるとともに、生産性も低下します。
「快適職場指針」が良くない職場環境から労働者を守る最低限のものだとすれば、近年各企業が導入している「従業員満足度」は人手不足やモチベーションアップに先手を打つオフェンシブな施策と言えるでしょう。
厚生労働省の「快適職場指針」では、職場の環境について現状を的確に把握し、職場の意見、要望等を聞いて、快適職場の目標を掲げ、計画的に職場の改善を進めることが必要としています。
具体的な施策としては「作業環境の管理」、「作業方法の改善」、「労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備」、「その他の施設・設備の維持管理」の4つの視点から改善を講じます。
こうした「快適職場指針」の取り組みによって、職場全般と安全衛生両面で効果が表れます。
出典:平成16年度快適職場づくりのもたらす安全衛生等に関する効果についての実態調査「快適職場指針」はどちらかと言えばハード寄りですが、最近はストレスチェック制度の開始や従業員満足度の概念が広がるなど、従業員のメンタルヘルスを気にする傾向が強まっています。
ストレスのない職場環境をつくるアイデアとしては、既に用意されているツールやヒント集を活用すると便利です。
例えば、厚生労働省の「職場環境改善のためのヒント集 メンタルヘルスアクションチェックリスト」には、職場の従業員参加のもと、仕事の負担やストレスを減らすための改善アイデアが盛り込まれています。
全国から集めた改善事例を6つの領域30個に分類してチェックリストとしてまとめたものです。それぞれ、数個ずつ施策例を列挙します。
・少人数単位の裁量範囲を増やす
・個人あたりの過大な作業量があれば見直す
・各自の分担作業を達成感あるものにする
・労働時間の目標値を定め、残業の恒常化をなくす
・繁忙期やピーク時の作業方法を改善する
・個人の生活条件にあわせて勤務調整ができるようにする
・個人ごとの作業場所を仕事しやすくする
・反復・過密・単調作業を改善する
・温熱環境や視環境,音環境を快適化する
・職場の受動喫煙を防止する
・衛生設備と休養設備を改善する
・上司に相談しやすい環境を整備する
・同僚で相談でき、コミュニケーションがとりやすい環境を整備する
・仕事に対する適切な評価を受け取ることができるようにする
・個人の健康や職場内の問題について相談できる窓口を設置する
・セルフケアについて学ぶ機会を設ける
・昇進・昇格、資格取得の機会を明確にし、チャンスを公平に確保する
熊本地域医療センターで、看護師の日勤と夜勤の制服を色分けした所、残業時間が大きく減った事例で、働き方改革が難しい医療現場の先進事例として、注目を集めています。
ひと目で勤務時間がわかるため、勤務終了が近い人には新しい仕事を振らないなど、定時退勤しやすい職場環境ができ、導入翌年度は一人当たり年110時間あった残業が半減、18年度には約20時間と1/5まで減るなどの成果として現れ、離職率が1割以下と半減しました。
ネットイヤーグループでは、オフィスのリニューアルを通じてコミュニケーションを活性化しました。
リニューアル前は、休憩ラウンジが複数階に分かれていたり、執務エリアと混在していて休憩している社員の隣で会議をしている状況でした。ラウンジを一つの階に集約して大きなスペースとしてリニューアルするとともに、休憩スペース、お昼寝もできる回復スペース、ノートパソコンも持ち込める集中スペースを新設しました。また空いた階には各階でバラバラに仕事をしていた部署の部屋を新設、業務を効率化しました。
人が増えたり年月が経つと、オフィスに効率的な利用方法ではない箇所が出てくるものです。コミュニケーションを活性化し、生産性が高いオフィスをつくるアイデアは、コニカミノルタジャパンにご相談ください。
2021年にはニューノーマル時代の働き方を実現するオフィスとして、「つなぐオフィス」にリニューアルしました。テレワークとオフィス出社でのそれぞれの働き方に良い点があり、どちらか一方の働き方にするのではなく、その日に実現したい業務目的に合わせて、両方を柔軟に使いこなすハイブリッドな働き方ができるオフィスとして、様々な座席レイアウトを用意しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
働き方改革の施策として、ペーパーレスやフリーアドレスを実現し、紙資料保管スペースやオフィスのコストを削減する事例が出てきます。
コニカミノルタジャパンでは本社の浜松町移転をきっかけに働き方改革を自社実践していて、250名が一部屋に収容できるオープンなレイアウトや、各自のワークスタイルに合わせて座席の場所やスタイルを選択できるフリーアドレス制を採用し、コミュニケーションの活性化や生産性の向上を実現しています。
コミュニケーションや創造力を高める家具やツール、空間、ペーパーレス化で紙がある場所に縛られない働き方が可能になっている現場をご見学いただけます。
チェックリストの項目を見ていくと、既存の業務やルールを変更したり、効率化するシステムを導入するには、経営陣の理解・協力が重要であることが分かります。
人手不足が慢性化する状況でなかなか採用が進まず、優秀な人材が離職してしまうと仕事が回らなくなります。働きやすい職場環境を作り、従業員の満足度が上がれば、職場への定着や意欲の向上が見られ生産性向上が期待できます。
中小企業での働き方改革や職場環境改善の取り組み事例を「いいじかん設計 動画カタログ」でご紹介中です。こちらもあわせてご覧ください。
いいじかん設計 編集部
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