公開日2024.07.25
印刷現場の声が導いた技術革新
開発者が語るTU-510進化の裏側
コニカミノルタのトリマーユニットTU-510は、四方断裁・スジ押し・ミシン目・名刺カットなど、人手と専門性が必要な後加工処理をインラインで自動化し、印刷現場の効率化と安全性の確保を両立することができます。
この革新的な製品は、発売後も印刷現場のお客様の声を聞きながら機能強化や改良を続け、早くも3世代目になります。本記事では、TU-510開発担当のコニカミノルタ株式会社 小崎氏に、その進化の裏側についてお聞きしました。
発売後に開発担当として参画
私は、コニカミノルタでTU-510の機械部分の開発担当をしています。このチームには、TU-510の発売後に参画しました。
TU-510はインラインで自動断裁や多彩な加工処理ができるこれまでにない製品で、印刷現場が抱える人手不足や属人化の解消を目指し、コニカミノルタが自社開発しました。しかし、発売直後は加工の精度や断裁の仕様範囲、生産性に対するお客様からの評価が芳しくなく、厳しいご意見を寄せられることもありました。そうした現場の声を受け、もっとお客様に活用していただける良いものにしていくため、現在のチームが始動しました。
発売当初はお客様と接する機会が多いサービス担当や販売担当から現場の声を伺っていましたが、TU-510の機能強化や改良にあたっては、私たち開発メンバーも積極的にお客様の現場へ足を運び、直接フィードバックをいただいています。
そもそもなぜ、他にはないインライン自動断裁に着目したのか
コニカミノルタはもともと印刷業界の人手不足や職人の高齢化などを見据え、人手と専門性が必要な後加工の自動化に積極的に取り組んできました。発売前に関わっていたメンバーに聞いたところ、「市場調査を進めるなかで、やはり印刷の最終工程として断裁やスジ押しなどがあり、それをインラインで自動化できれば現場の負担をさらに軽減できるという点に着目した」ということです。
これは余談ですが、TU-510の開発にあたり当初は後加工機メーカーさんに見学に行ったそうです。しかし当時はまだメーカー連携の機運がなく自社開発しようということになり、結果的に発売後も自分たちで機能強化や改良を推進できています。
お客様のお仕事に応じた試作品から設計
TU-510の機能強化や改良にあたっては、まず現場で吸い上げた課題や要望をもとに、お客様の現状に応じたカスタマイズ設計や試作を行っています。
例えば、断裁や折りなどの後加工といっても、抱えているお仕事内容によって必要な工程や機能はさまざまです。さらにお客様からだけではなく、印刷会社様と日々向き合っている販売担当からも「こんな機能はできないか」という相談が入ります。そういった要望にひとつひとつ応えていくことが、現在のTU-510の進化につながっています。
TU-510で2枚分割時にミシン目をつける試作例
現場のニーズが高い機能は、試作品から量産化へ
こうした試作を行っていくなかで、他の現場でもニーズが高い機能については量産化を目指してTU-510自体のバージョンアップも行っています。これまでに量産化した例はいろいろありますが、そのなかの一つが長尺印刷からの複数枚分割です。
TU-510は発売当初から用紙長1,300mmの長尺印刷に対応し、フルブリード加工・クリースを組み合わせてフチなしの長尺ポスターやA4サイズの観音折りパンフレットなどが簡単に作成できましたが、さらにインラインで複数枚分割もできるようになり、長尺POPや棚POPなども作成できるようになりました。
他にも、ミシン目がつけられる位置の拡張やクリース領域の拡張、名刺対応サイズの拡張など、さまざまな機能強化を量産化で実現しています。
さらに現在、3世代目としてドブ幅を0.1mm単位で可変できる機能や、年賀ハガキでドブ幅無しの十字断裁ができる機能を量産化しており、このドブ幅可変は長尺印刷にも対応させています。
こうした後加工に関するニーズや知識は現場で学ばせていただく機会が多く、お客様とお互いに対話を繰り返しながら、課題を洗い出して改良につなげています。
モットーは、お客様からの要望より幅広く対応できること
量産化は、これまでのTU-510の機能やできることを維持したまま、新しい機能を実装させる必要があります。そのため、試作品とは異なり開発や検証にはとても時間がかかります。しかし、お客様に少しでも早く活用していただくためのスピード感も重視しており、新製品ではなくアップグレードという形で対応しています。こうした量産化で心がけていることは、お客様から来ている要望に加えて、さらにもっと広く対応できるように設計することです。
例えば、ミシン目の機能強化にあたっては、お客様から要望があがっている用紙の坪量よりも広く対応できるように工夫しています。量産化は開発の過程で難しい壁に当たることも多いですが、できるだけ多くの現場で活用していただける対応力を目指しています。
おすすめしたい機能は“全部”
こうした試作や量産化を進めていくなかで、TU-510の市場での評価も確実に良くなってきていると実感しています。実際にお客様や販売担当から「TU-510のおかげでこんな効果があったよ」と言っていただけるようになりました。
TU-510を活用いただくことで危険が伴う断裁作業を回避でき、後加工まで仕上がった状態で排紙できるので、現場の効率化と安全性の確保を両立することができます。現場の声と共に進化を続けるTU-510のさまざまな機能を、ぜひ多くのお客様に試していただきたいです。
機械側だけではなく操作パネルの改善も提案
印刷機を操作するタッチパネルなどのソフトウェア開発は別チームが担当していますが、実際に現場で触ったときの押しやすさや操作性などは、私たち機械側の開発チームからも改善要望を上げています。
量産化で機械がアップデートする際は操作パネルも新機能を盛り込んだ新しいものになりますが、触っていてわかりづらい部分や押しづらい部分は改善を提案します。
機械とソフトウェアでは開発視点が異なり苦労する点もありますが、より良いものにしていくために連携して取り組んでいます。
さらなる機能拡充を視野に
今後の展望としては、TU-510の機械側でできるアップデートだけではなく、IQ-501やソフトウェアも含めた機能拡充も視野にいれています。まだまだ構想段階で具体的なことはお伝えできませんが、もっと加工の精度をあげたり、断裁位置をさらに簡単に調整できたり、ソフトウェアとも連携しながらより良い製品にしていきたいと考えています。
難しい課題こそ、やりがいを感じる
私は技術者として、「これは解決できないかも」という難しい課題にこそ、やりがいを感じます。検証を重ねていくなかで、周囲が「これはかなり難しい」と言っていることが実現できたとき、技術者としての達成感があります。
印象に残っている経験として、現場でお客様にヒアリングをした際、「ドブ幅があと1mm違っていたら使えたね」と言われたことがありました。1mm単位の仕様の差で製品が使えるか、使えないかが決まってしまうのか、と考えさせられる経験でした。それだけ印刷現場は繊細な仕事をされており、そういった現場の難しい課題を解決できるような開発をしていかなければと思いました。これからもお客様と共に、さらなる技術革新を目指していきたいです。
― 小崎さん、ありがとうございました!
※掲載されている情報は取材時のものであり、閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。(取材時:2024年7月)
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