ビジネスソリューション

Giving Shape to Ideas

公開日2025.04.18

未来の印刷現場を創るDX戦略
~AI×感性脳工学×製造見える化で収益・効率・品質を革新~

未来の印刷現場を創るDX戦略セミナーの様子 未来の印刷現場を創るDX戦略セミナーの様子

※本記事は、2025年3月に開催されたJP2025・印刷DX展のセミナー内容をもとに構成しています。

最新のAI技術、感性脳工学、そして製造プロセスの見える化を活用することで、印刷業界は「攻めのDX」と「守りのDX」を通じて持続的な成長と競争力の強化を図ることができます。本記事では、その具体的な実践方法と戦略についてご紹介します。

攻めのDXと守りのDX

まず初めに、デジタルトランスフォーメーション(DX)について簡単にご説明します。皆さんも既に様々なDXに取り組まれていると思いますが、DXは大きく2つに分けることができます。それは、NTTデータ経営研究所が提唱している「攻めのDX」と「守りのDX」です。

攻めのDXは社外に影響を与えるデジタルトランスフォーメーションを指し、既存のサービスを高度化し、顧客接点を抜本的に変えることを目指します。具体的には、印刷サービスの高度化やIT・データを活用したビジネス改革などが含まれます。これにより新たな価値を創出し、競争力を強化することが可能です。

一方、守りのDXは社内で行うデジタルトランスフォーメーションを指し、業務プロセスの改善や蓄積データの見える化などが含まれます。これらの取り組みは企業の事業運営を最適化し、業務の効率を高めることを目的としています。例えば、印刷業界では印刷プロセスの自動化やデータ管理の効率化が守りのDXに該当します。

DXの最大の目的は、IT技術やデータを活用してビジネスを変革し、新たな価値を創出して事業を拡大することです。ここからは、印刷業界における攻めのDXと守りのDXを実現するための戦略や方法について解説していきます。

攻めのDXと守りのDXの説明図

攻めのDXと守りのDX

感性脳工学に基づいたデザイン評価

DXには様々な目的がありますが、印刷業界においてDXを推進すべき理由の一つは、消費者の購買行動の変化とそれに伴う意思決定プロセスの長期化です。

これまで消費者は欲しいものを認知し、興味を持ち覚えていて、再度それ見た時に購入していました。しかしインターネットの普及により、検索して調べてから買うという行動が生まれました。さらに現在では、SNSの普及により検索した情報を消費者が投稿者として発信・共有することで、マトリックス的に情報を得られる時代になっています。

このような購買行動の変化により、購買に繋がる部分で「感情が占める割合」が非常に大きくなっています。消費者の購買意欲を引き出すためには、感情が重要な役割を果たすようになり、特に視覚から得た情報の感情価値(心を動かされる瞬間を作ること)が非常に大切になっているのです。

購買行動の変化と意思決定プロセスの変遷

購買行動の変化と意思決定プロセスの変遷

売れる・選ばれるデザインの重要性

意志決定プロセスの長期化に伴い、購買行動を促すためには見る人の心を動かすパッケージデザインやチラシ、販促物が重要になります。そのような売れる・選ばれるデザインを作る上で重要な要素となるが、「注目性」「配色」「色彩」「質感」「可読性」です。

コニカミノルタが提供するEX感性は、独自の画像解析技術と感性脳工学を活用し、人が視覚から情報を得た際に脳内でどのような情報処理が行われるかを解明します。これにより「注目性」「配色」「色彩」「質感」「可読性」を定量的に可視化し、売れるデザインをクラウド上で評価・分析することが可能です。

感性価値を伝えるための要素

商品デザインで感性価値を伝えるための要素

消費者に選ばれるデザインを感性脳工学で紐解く

消費者が購買意欲を抱く要素のひとつに「注目性」があります。人は何かを見た際、瞬時に色彩・明度・形・動き・人物/イラストなどの詳細情報を処理し記憶します。その中でも特に「注目性」は最初のタッチポイントとなる重要な要素です。EX感性では画像をソリューションにアップロードすることで、注目性をはじめとする様々な感性を紐解く分析ができます。

注目性分析では、取り込んだ画像に対して人は初見時にどこを見て、どの順序で視線を動かすのかをヒートマップや動画分析結果で表示することができ、特定の範囲の注目性を数値(%)で把握する際にも役立ちます。注目性は7%を超えていると10人中8人の短期記憶に残ると言われており、人は過去に見た記憶がある対象に対して購買意欲が高まる傾向があります。

これまで、注目される部分の評価基準は人の感性やセンスに委ねられていました。しかし、そのセンスを紐解いて数値化することで、これまでセンスの良い人にしか感じ取れなかった部分を数値化して見える化することができます。

こうしたデザインの評価を見える化することで、コンペの受注率をアップさせ、競合優位性を作り出すことが可能です。これがEX感性を活用して実現いただきたい攻めのDXです。

EX感性は色彩分析やポジショニング分析なども可能です。画像以外にもWEBサイトや動画などにも対応し、手軽に分析することができます。また国別でも7か国の分析に対応しており、とくに色彩分析において力を発揮します。

例えば日本人の場合、薄いグレーや赤色で宛名書きされると嫌だなと感じることがあります。これは本能的な判断というよりも、後発的に得た文化的背景や教育によるものです。このように国や文化によって異なる感性を理解し、適切に対応することが重要です。

EX感性での分析の結果サンプル

EX感性での分析の結果サンプル

印刷業界×生成AIによる新しいビジネスの形

分析はしたものの、デザインを作ることが難しいと感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、デザイン制作における攻めのDXについてご紹介させていただきます。

印刷業界はいま、「人手不足」「デジタル化による紙需要の減少」「激しい価格競争」という課題に直面しています。こうした厳しい状況を乗り越え、印刷業界の成長に繋がる鍵だと考えているのが、生成AIの活用です。

生成AIに関して、日々のニュースで耳にしない日はないかと思います。その中で、生成AIが人の仕事を奪うのではないかという議論もよく見られます。しかし、コニカミノルタはそうはならないと考えていますし、そうあるべきではないと考えています。

生成AIを活用することで現在働いている方々がより働きやすく、働き甲斐のある環境を作り出すことが重要だと考えています。このような考え方のもと、生成AIを活用して印刷業界の顧客接点の抜本的改革を支援していきたいと考えています。

画像生成AIで顧客接点の抜本的改革を実現

画像生成AIで顧客接点の抜本的改革を実現

デザイン商談でよくある課題を解決

私たちが生成AIを活用した攻めのDXで解決するのは、デザイン商談でよくある課題です。それは、どんなデザインにするかのイメージが正しく伝わらないことによるすれ違いです。

クライアントからのデザイン依頼を営業が持ち帰った際、どんなデザインを作るかのイメージがかなり抽象的であることが多いのではないでしょうか。そのため、デザイナーがデザインを作って初めて発注者と受注者の会話が具体的になります。そしてデザイン提案時に「イメージと違う」「また複数案持ってきて欲しい」などの修正が頻発し、これが制作現場の大きな負担になっています。

そこでコニカミノルタは、研究開発中のデザイン案件受注支援ソリューション「TWOCAT」を通じて、デザイン商談におけるこうした課題を解決し、顧客接点の強化を実現したいと考えています。

デザイン商談時の大きな課題

デザイン商談時の大きな課題

画像生成AIを活用し、商談の場で要件を引き出す

TWOCATを活用することで、デザイナーがデザイン案を作る前に、営業が商談の場で発注イメージをクライアントと一緒に具体化することができます。これにより、いままで大きな負担となっていたデザインの出し戻しを抑制することができます。

世の中では様々な画像生成AIが活用されていますが、現時点ではチラシやパンフレットなどのデザインを作ることは難しく、イメージのすり合わせに使えませんでした。しかしTWOCATは、機械学習において学習済みのモデルを特定のタスクやデータセットに適応させるために調整する手法(ファインチューニング)を行うことで、実際のデザイン商談時にも使えるリアルなデザインをその場でお見せすることができます。

ファインチューニングのイメージ図

特別なチューニングで具体的なイメージ提示が可能

TWOCATは商談の場で対話をしながら、音声をもとに商品、ターゲット、コンセプト、テイストが自動で入力されていきます。これにより、クライアントの要望をリアルタイムで反映し、具体的なデザインイメージをその場で共有することができます。

さらに画像を見ながら、「このデザインはいい」「ここは変えたい」など話した内容がそのままレポートに作成されるため、方向性が明確になった状態で社内に持ち帰り、デザインに着手することができます。文字はダミー文字が配置されますが、実際の文字を打ち込んで配置する機能もあります。

TWOCATを活用することで、クライアントと共にデザインの方向性を探ることができ、その商談体験が顧客接点の強化につながります。さらにTWOCATとEX感性を組み合わせることで、デザインの方向性を戦略的に提案することも可能です。これらの攻めのDXにより、価格競争ではない付加価値を提供し新しいビジネスが広がっていくのではないかと考えています。

デザイン制作のやり直しを大幅に削減

方向性が明確になり、やり直しを大幅削減

※TWOCATで生成される画像には、まれに著作権で保護されたコンテンツが含まれる可能性があります。ソリューション内でも著作権リスクの確認を行っておりますが、生成された画像はあくまで方向性を探るための参考用途としてご利用ください。

クラウドで実現する工程・効率・損益の見える化

近年、印刷業界でも様々なDXの取り組みが進められています。しかし、依然として属人的な進捗管理やアナログな工程情報管理を行っている企業も少なくありません。ここからは守りのDXとして、クラウド上で簡単にできる工程・効率・損益の見える化を通じたスピーディーな経営判断の実現についてご説明します。

まず初めにお伝えしたいことは、クラウドを活用することで以下の工程管理が簡単にできるということです。

① 全行程作業時間の記録(デザインや後加工、アッセンブリも含めて)
② データ利活用(単品損益管理)
③ リアルタイム進捗管理

全行程作業時間の記録を行うことで作業の標準時間を把握し、業務プロセスのボトルネックを発見して改善することが可能です。また、熟練担当者と新人担当者の作業時間を長期的に観察することで技術継承が不足している部分を可視化し、人材育成を促進すべきポイントを見つけることができます。

次に、収集したデータの利活用による単品損益管理についてです。これにより、案件ごとにその仕事が本当に黒字か赤字かを把握することができます。労務費などの間接費も含めて収益の状態を正確に把握できるため、改善が必要な案件やクライアントへの対応など迅速な経営判断が可能になります。

最後に、リアルタイム進捗管理についてです。これは手軽に始めることができ、効率が非常に向上するため、守りのDXとしてまず取り組んでいただきたいポイントです。経営者、責任者、営業、現場担当者などすべての関係者がリアルタイムに情報を確認できるため、確認作業の手間が大幅に減ります。また前の工程の進み具合もわかるため、後工程の準備などスムーズな業務遂行に繋がります。

印刷業界の進捗管理における課題

印刷業界の進捗管理における課題

JobManagerで見える化する印刷現場の新時代

コニカミノルタが提供するAccurioPro Dashboard JobManagerを活用することで、先ほどの3つのポイントをすべて実施することができます。JobManager以外でも実施可能ですが、一からシステムを構築する必要がなく、非常に安価で簡単に始めることができます。

JobManagerは印刷工程に限らず、デザインや製本、アッセンブリなど様々な工程を自由に登録することができます。また作業指示書のレイアウトも自由に作成できるため、現場のニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。

さらに、パソコンが近くにない現場の方でも、QRコードやスマートフォンを活用して作業管理を行うことができます。紙の作業指示書も出力可能なので、デジタルとアナログの両方のニーズに対応しています。

CSVでの自動アップロードも可能です。これにより既に基幹システムを構築している企業でも工程管理だけをJobManagerで行うことができます。蓄積したデータもCSV出力が可能なので、労務費を含めた単品損益管理が容易に行えます。

以上のようにJobManagerを活用することで、印刷業界の守りのDXをスムーズに進めることができます。まずは1つの機能からでも始めてみてはいかがでしょうか。

JobManagerの機能

迅速な経営判断に使えるデータ蓄積と可視化

手書きの伝票を使っていた印刷会社様でも、JobManagerを導入することで受注管理を全てデジタル管理に移行しました。現在では単品損益管理も始められ、経営戦略に活かされています。

こちらはダミーの数値データですが、どのクライアントの売上比率が高いか、カタログやパンフレットなど品目ごとに最も労務費がかかっているのは何か、営業担当者ごとの売上などをきちんと把握することができます。

単品損益管理の見える化イメージ

単品損益管理で収益が見える化

ここまで印刷業界の攻めのDX、守りのDXを実現するための実践方法やソリューションをご紹介しました。DXの導入は、業務効率の向上や経営判断の迅速化に大きく寄与します。クラウドを活用した工程管理やリアルタイム進捗管理、単品損益管理など、具体的な取り組みを通じて、印刷業界の未来を切り拓くことができます。

DX推進に関するお問い合わせや詳細な情報については、こちらまでお気軽にご連絡ください。皆様のDX推進のサポートを通じて、コニカミノルタはこれからも印刷業界の持続的な成長に貢献してまいります。

コニカミノルタジャパン 小林 与晴

コニカミノルタジャパン株式会社 DXエバンジェリスト

小林 与晴

Profile:東京の印刷会社に13年勤務し、製造部・生産管理部・企画部・営業部と経験。「印刷会社が輝ける社会を作る」をビジョンとし印刷会社のDXを支援するサービスを企画・開発・展開をしている。

Profile:東京の印刷会社に13年勤務し、製造部・生産管理部・企画部・営業部と経験。「印刷会社が輝ける社会を作る」をビジョンとし印刷会社のDXを支援するサービスを企画・開発・展開をしている。

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