セミナーレポート
「整形外科外来の常識・非常識2020」とは?
第91回 日本整形外科学会学術総会

「整形外科外来の常識・非常識2020」セミナーレポート

2018年5月26日(土)、第91回日本整形外科学会学術総会・コニカミノルタジャパン共催のランチョンセミナーが開催されました。全国から多くの先生方に参加いただき、会場の椅子はすぐに埋まり、立見が出るほど注目度が高いものでした。セミナー終盤の質疑応答では積極的に質問される先生方もいて超音波診療への関心の高さが伺えました。超音波画像診断装置を使った外来はその正確性や安全性から、今後ますます注目を浴びる分野です。整形外科における超音波診療の実症例を交えながら紹介します。

「超音波診療」のパイオニア皆川洋至氏

今回お招きしたのは、城東整形外科の皆川洋至先生です。皆川先生は、長年痛みによって苦しみ続けた患者さんを数多く救ってきた超音波診療の先駆者です。皆川先生のセミナーは毎回満員となりますが、今回は参加者が溢れ返るほど大盛況で、超音波診療に関心がある方が増えている印象を強く受けました。会場スクリーンに映し出されたのは神経についての説明や超音波診断装置を使いながらの診療の様子。症状が改善された患者さんの事例をいくつも紹介いただき、どれも感動するような回復ぶりが分かる内容でした。座長には兵庫医科大学病院の麩谷博之先生をお迎えし、「整形外科外来の常識・非常識2020」というテーマで講演していただきました。

常識は時代とともに変わる

過去と現在の「常識」の違いについての映像を流しながら講演がスタートしました。昭和の常識が平成の非常識ということはいくつもあります。それは医療の分野においても同じことが言えます。

例えばもっとも多い救急外傷が「足関節捻挫」。昭和の常識はまずレントゲンを撮ります。しかし骨折と脱臼はわずか5%しかいません。つまり95%の人は骨に異常がないので、そこにある痛みをレントゲンで診断することができませんでした。靭帯断裂も同様です。「骨に異常ありません。だから大丈夫」では患者さんが納得するでしょうか。痛みの原因が曖昧で、緩和されなければ他の病院へ行ってしまいます。つまり医者は患者さんからの信頼を失うことになるのです。レントゲンだけに頼らず、「まずエコー」が平成の“常識”になりつつあります。

捻挫、五十肩は病名ではない

「捻挫」「五十肩」という言葉は病名で使われていることが多いですが、皆川先生によれば、 捻挫は病歴、五十肩は俗語であり、ちゃんと診断できていないといいます。捻挫、五十肩ともにレントゲン写真を撮っても90%の人は異常がなく「骨に異常はない」ことだけしか判断できないのです。

五十肩の場合、痛みの場所や動作のほか、肩由来の痛みなのか?首由来なのか?というのを見極めることが大切です。首を動かして痛みが走れば首由来(頚椎由来)、腕を動かして痛みがある場合は肩由来(肩関節由来)というように、まずは患者さんの痛みを理解します。原因が分かったら、エコーガイド下で生理食塩水を注入して痛みを和らげるハイドロリリースという手技を積極的に取り入れているという説明もありました。

鼠径部痛へのハイドロリリース

痛みの原因が分かりくいと言われているのが神経がいくつもある「鼠径部」だそうです。
痛みを緩和するため、鎮痛剤を飲みながら1年ほど通院しても治らないという患者さんがたくさんいます。皆川先生は、鼠径部の痛みを理解するには「大腿神経」「陰部大腿神経」「外側大腿皮神経」「閉鎖神経」「腸骨鼠径神経」の神経を理解することが大切だと言います。
可動域制限と疼痛部位の確認をFABERtest、FADIRtestで行い、鼠径神経症状を探り、超音波を使ってハイドロリリースをすることで痛みの答え合わせができるということを説明して下さいました。昭和の常識ではわからなかった痛みの原因も、平成の常識「エコー」を使えば、局部へアプローチが可能です。患者さんへの治療映像は、どれも感激するような回復ぶりが分かるものでした。

ハイドロリリースを海外でも指導

現在、多くのアメリカ市民は薬物中毒に陥っています。整形外科医は生命を脅かすオピオイド薬物の使用を最小限にするよう患者や医師に呼びかけている背景もあり、世界的にハイドロリリースの技術を要望する声が高まっています。皆川先生は積極的に海外でのハイドロリリースの指導も行っています。今年の5月はフィリピンへ行き、膝が痛くて歩けなかった人を帝京大学笹原先生のハイドロリリース技術によって、すぐに歩けるようになった様子も紹介されました。

セミナーアンケート結果

エコーガイド下HRを行っていますか? はい31%、いいえ69%
本公演後エコーガイド下HRに興味を持ちましたか? はい88%、いいえ12%
本公演の満足度をおきかせください。 大変参考になった86%、参考になった11%、普通3%
患者向けの冊子について。 便利である60%、院内に置いてみたい35%、不要である5%

アンケートの結果、超音波を使用する先生のうち、約70%がエコーガイド下注射(HR)を実施していないことがわかりました。 しかし、皆川先生の講演後には、実に90%近くの先生が、未実施のエコーガイド下ハイドロリリースを今後は行いたいという積極的な意見をお持ちになっています。また、セミナーの満足度も「大変参考になった」が86%というとても高いものになりました。

また、弊社はハイドロリリースの 認知度を上げるため、皆川先生のご協力のもと、患者様に向けたマンガ冊子を作成しております。今回のアンケートでは、この冊子に対するご意見も伺いました。それによると、ほぼ全員の先生が患者様にエコーを分かり易く説明するツールの必要性を感じていることが分かりました。

高画質でコンパクトなエコー

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