無理なく上手に続けるために。自社ナレッジが根付く業務マニュアル作成&運用の秘訣
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日本の社会課題として見逃すことのできない少子高齢化に伴う労働人口や生産年齢人口の減少。2030年問題特集でもご紹介した通り起こり得る問題は様々ありますが、ベテラン社員の退職による属人化した技術力や知識、ノウハウの損失に伴う生産性の低下もその一つです。
その予兆を感じさせる身近な例として、昨今のコロナ禍で療養・隔離期間のため普段の担当者が急に休暇を取得することになり、いざほかの社員が対応したら「普段よりも時間がかかり、大変だった」という場面が挙げられます。多くの企業でその片鱗が見えつつも、本腰を入れて対策ができていない業務・スキルの属人化の課題について、無理のない効果的な対応策とはどのようなのか。コニカミノルタジャパンの社員が事例を交えながらご紹介します。
INDEX
なぜ、今、マニュアルの整備が必要?
――今回はDXソリューション事業部 ICW事業推進統括部 ICW商材開発部 副部長の中村圭さんと、ICW商材開発部 事業推進グループの髙松 萌香さんにお話を伺います。まず自己紹介と、現在の業務内容について教えてください。
中村さん「オンラインマニュアルサービス「COCOMITE(ココミテ)」の発起人で、2020年の販売開始以降事業責任者を担当しています。手順や知識を「記録する」 「伝える」 「定着させる」、それらに関わる全てのビジネス組織と人々にテクノロジーの力で高い効率・効果と、ワクワクを提供することを事業開発チーム一丸となって目指しています。」
髙松さん「私はCOCOMITEのマーケティングを担当しています。WEBサイトの運営や、COCOMITEを用いた業務の属人化に関する課題解決方法を解説するセミナーの企画・運営・講師などを行っています。」
――早速ですが、多くの企業でマニュアルといえば普遍的で特に目新しい存在ではありません。これが今、なぜ注目されているのでしょうか?
中村さん「2030年問題特集 第2話でも解説されていますが、社会的な少子高齢化の影響が企業にも及んでいます。ベテラン社員の退職が迫ってきたところで、企業の財産ともいえる属人化した知識を、次の担当者に引き継ぐ場面が増えてきていると思います。もともとナレッジの共有や研修は対面で行うことも多く、特にOJT(On-the-Job Training:実務の中で人材育成をする取り組み)を実施しながらスキルを伝えていくケースが一般的です。ですが、手順書が整備されていない状態でOJTを中心に社員教育を行う場合、教育者の伝え方や実務によって教える内容に差が出てしまうこともあります。習得の質とスピードを保つため、“知識を共有できるツール”としてのマニュアルの重要性が、この問題によって再認識されてきたと考えています。」
髙松さん「また、コロナ禍でオペレーションが変更になったことや、働き方がテレワークに切り替わったこと、あるいは本人や家族のコロナ罹患で急遽休んだ担当者の業務の代行が困難という経験もあり、マニュアルの注目度が上がるきっかけとなりました。このような場面に備えて、業務手順を正しく共有し、誰でも同じ品質で業務を遂行できるよう、ナレッジやノウハウを可能な限りドキュメントに落とし込みライブラリー化することが、経営課題の一つとして認識されています。」
――とはいえ、業務マニュアルはすでに多くの企業で普及していると思いますが、何が問題なのでしょうか。
中村さん「はい。マニュアルは多くの企業で作成されています。それらはExcelやWord、PowerPointなど電子データで原本を作成し、それを紙で印刷して配布、もしくはデータのままメールや共有フォルダを使って公開するケースが多いと思います。しかし、閲覧・作成方法にかかわらず、常に最新版を正しい範囲に展開できている企業はそれほど多くないと推察します。例えば、内容を改訂するたびにファイル名の末尾に「FIX版」「ver.22」、「○○作業反映版」、などと記載して別名保存して使っているケースなどが多くあるようです。
――いわゆる“運用あるある“の課題ですね。これだと、複数の従業員やマニュアル発行者と使用者の間に、異なるバージョンのマニュアルが出回ることになりますね。
中村さん「そうです。このような状態では、マニュアルを参照したい人が格納場所を検索しても、検索結果が膨大でなかなか目的のものに辿り着けない、あるいは最新版のマニュアルがどれか判断できず古いバージョンのマニュアルをもとに作業してしまう、などの問題が起こり得ます。もし対象のマニュアルが部門を横断して利用されるものだったら、「最新のマニュアルはどれなのか?」などの問い合わせが担当窓口に殺到し、対応工数が増えることも考えられます。また、古い情報をもとに作業を実施すると事故や顧客からのクレームにつながりかねません。」
――バージョン管理の煩雑さから、マニュアルが利用されにくい状況に陥って、業務効率や業務品質にも影響してしまうということですね。
髙松さん「はい。マニュアルを整備することで、「業務標準化の推進」「教育工数の削減」「クレーム・事故発生件数の削減」「問い合わせ対応工数の削減」などを実現することができます。マニュアルは作って終わりではなく、きちんとした管理のもとで活用されてこそ効果が出るドキュメントです。そのためには、以下のような原則を守る必要があります。
- 作業シーンを想定し、再現性を重視した粒度でマニュアルを作成する
- 利用者が目的、状況から探しやすいように配列、掲載する
- 手順の変更などがあれば即時反映させて迅速に改訂版を発行する
この原則を守って運用サイクルを回すことで、ナレッジを会社の情報資産として管理するだけではなく、業務効率化も実現することができると考えています。」
作業を再現できるようにするには?マニュアル作成のコツ
――作って終わりではなく活用して効果を出すマニュアルにするためにはどのようにすれば良いでしょうか。
中村さん「高松さんが挙げた原則にも関連しますが、マニュアルの作成時点においては次の2つが非常に重要だと考えており、それぞれの具体的な手法についてご紹介します。」
① 利用者が保持している予備知識を正しく認識すること
② 作業品質の再現が可能な粒度で手順を描写すること
ベテランの方が作成したマニュアルを見ながら新人の方に作業をしてもらうと、意外と作業を完了できないことがあります。ベテランが作成するマニュアルは、意外にも記載情報の抜け漏れが発生しやすいんです。これがあると、「書いてない!聞いてない!」「そんなことぐらい書かなくても想像つくでしょ!」という不毛なやり取りにも発展しがちです。
――長年業務に携わっていることで、普段注意しているポイントが無自覚になってしまうのですね。あとは言葉では表しづらい、感覚的なポイントもありそうですね。
中村さん「そうした感覚的なポイントも含め、ベテランの技術を記録し伝承したい場合には、『マニュアル動画』の活用がおすすめです。マニュアル動画は作業一連の流れ、前後連続した所作を伝えられることが最大のメリットで、タブレットを活用して撮影、閲覧し効果的な教育への活用が期待できます。」
――確かに、動画だと言葉で表しづらい動きを繰り返し確認することもできますね。
中村さん「動画は記録できる情報量が多いですが、それゆえに次のようなデメリットもあります。
- 視聴に時間がかかり、注意すべきポイントが伝わりにくい
- 内容を圧縮しようとすると、動画編集ツールを使いこなすノウハウが必要
- 動画ファイルの検索性の確保に工夫が必要
こうしたデメリットを踏まえ、動画マニュアルの際は、ステップバイステップに分解した作業の文章表現と、その作業に対応した動画とを組み合わせて掲載するハイブリッドの動画マニュアルの作成がおすすめです。各ステップの関連情報として具体的な基準(測定できる数値など)や、異常の見分け方、ベテランから伝えたいコツなどをテキストで明示すると、より理解が深めやすいマニュアルになります。また、マニュアル作成は、新任者が編集しベテランが監修するようなペアで進めると、理解しやすく業務を再現しやすいマニュアルを作成することができますよ。」
――ベテランにしか分からない感覚値も、新任者だからこそ悩むポイントも明確になって、活用されるマニュアルが作成できるということですね。
中村さん「さらに理解度を高めていただくために、研修受講の履歴や保有ナレッジ・スキルなど対象者の理解度に合わせて作成するのも効果的ですね。ステップバイステップに分解し、理解度に合わせて利用できるマニュアル作成すると、以下の効果が見込めます。
- 業務手順や判断基準の明確化が進み、業務品質が向上する
- 習得の個人差や教育のムラが解消され、人材育成が安定化する
- 教える人が居ない時にも学べることで、自律的な学習を促進する
細分化したマニュアルの作成ではマニュアル数が増えますので、閲覧者を想定した管理方法の工夫も重要です。例えば、業務について関連するキーワードやタグで手早くマニュアルが検索できるようなファイル名、フォルダ分けをしておくと良いですね。業務実施対象者レベル、業務目的、準備と作業完了、手順や基準を速やかに正確に理解できる学習環境は、自律的なステップアップの促進につながります。」
「作って終わり」にしないために。マニュアル運用のコツ
――様々な人の知見を活かして作成することで、理解を深められるマニュアルが作成できるということが分かりました。ですが、使ってもらわなければ、作成した意味がありませんよね。
髙松さん「はい、その通りです。先ほどのおさらいになりますが、多くの企業でマニュアルが作りっぱなしで上手く活用されない状況になってしまうのは、次のようなことが考えられます。
① マニュアルが更新されておらず古い情報しか掲載されていない
② マニュアルが探しやすい場所にない。担当者に聞いたほうが早い
③ 紙マニュアルで運用しており、出先やリモートワーク時に閲覧できない
④ マニュアルを作る人によってフォーマットが異なるので、見づらい
こうした事態に陥らないようにも、マニュアルの運用ルールを整備し、そのルールを社内浸透させることが大切です。
例えば「②マニュアルが探しやすい場所にない」の場合は、マニュアルの保管場所や保管方法を再検討するといいですね。マニュアルがどこにあるのか分からない状況では、誰もマニュアルを閲覧できませんから、情報にたどり着きやすい設計を意識してみてください。保管場所が決まれば、タイトルのネーミングルールやマニュアルのフォーマットを決めるなども、マニュアルを「作って終わり」にしないコツです。
こうした運用ルールをしっかりと定め、それにのっとった運用をすることが重要です。また、マニュアル運用をしやすい「ツール」を導入することも効果的な打ち手の一つになります。」
効率的なマニュアル作成・運用を実現するツールとは?
――ルール化が有効なのは理解できますが、緻密なルールほど全社員がしっかり守るのが難しいというジレンマがありますよね。そこで、正しいルールに沿った運用を実現しやすいツールとしておすすめなのが、コニカミノルタのオンラインマニュアルソリューション「COCOMITE」ということですね。
髙松さん「はい。COCOMITEは、いつでも どこでも 誰とでも 簡単にマニュアルを作成・共有・一元管理できるオンラインマニュアル作成・運用ツールです。フォーマットに沿って画像や文章を入力することで、誰でも同じような仕上がりのマニュアルを作成できる上に、作成工数を削減することもできます。
COCOMITEのマニュアル編集画面
画像や添付ファイルを挿入する際の画面レイアウトは規定のもので、編集中の画面が公開時にどう見えるのか、プレビューが可能。フォントの大きさや色、箇条書き、表作成など、ブラウザーから直感的に操作・編集ができる。
各マニュアルは、作業工程をさらに分解する「ステップ」に区切れており、目次からはこのステップが一覧できる。ステップの入れ替えや、ステップの間に新たなステップ(手順)を追加することも感覚的な操作で行える上、目次にも即座に反映される。
先ほどお伝えした、情報に辿り着きやすい設計やファイルのネーミングルール、マニュアルのフォーマットを統一するなど、ポイントを押さえた運用も可能です。例えば、マニュアルの更新をしていくうちに、どのマニュアルが最新版か分からなくなってしまうことがあると思いますが、COCOMITEを使えば常に最新版のマニュアルのみが展開されるため、古いバージョンのマニュアルが誤って参照され続けてしまうなどの問題も解消することができます。」
サブフォルダーは5階層まで作成できるため、業務の分野、粒度、シーンに合わせてグルーピングをすることが可能。各マニュアルのタイトルは150文字以内で任意に設定できるようになっている。
マニュアルを更新するタイミングで旧バージョンはアーカイブされ、常に最新版にアクセスできるようになる。誰がいつ改訂したのかが一目で分かる改訂履歴表示もあり、この履歴から旧バージョンを確認することも可能。
――これまでに教えていただいたマニュアル作成や運用の課題をCOCOMITEが解決に導いてくれるのですね。
髙松さん「はい。COCOMITEはブラウザーからマニュアル原稿の作成やデータのアップロード、更新やアクセス権設定などの運用管理ができるため、マニュアルの発行と共有が簡単である点もご評価をいただいています。URLやQRコードで簡単にマニュアルを共有することができ、スマホやタブレットでサッと簡単にマニュアル参照をすることが可能です。その他、コメント機能や閲覧ログ機能など、マニュアル活用分析やフィードバックに関する機能も搭載しており、マニュアル運用を一気通貫でご支援できます。」
それぞれのマニュアルは参照用のURL取得やQRの生成が可能。また、COCOMITEユーザー以外の閲覧者も表示できるアクセス権設定とURLの生成が可能。
――コメント機能や閲覧ログ機能はどのように活用するのでしょうか。
髙松さん「コメント機能は、マニュアルの改善・更新にご利用いただている事例があります。先ほどもお伝えした通り、マニュアルは作って終わりではなく、閲覧されて初めて効果が出るものですので、常に更新することが重要なんです。よく、本部でマニュアルを作成し、閲覧・活用するのは現場部門、というケースがありますが、あるお客様企業では、現場部門の人が「実は現場ではこのように作業していて効果が出ています!」などのフィードバックをコメント入力することで、その内容本部側で確認、マニュアルを更新する、という運用をされています。これはコメント機能を活用により、マニュアルのブラッシュアップはもちろん、本部と現場の双方向コミュニケーションが円滑となった事例の一つです。」
中村さん「また、閲覧ログ機能は、マニュアルの活用度を確認できる機能です。作成したマニュアルがきちんと見られているか、活用状況の見える化に課題を感じていたお客様から、ご好評をいただいています。マニュアル作成者としても、閲覧状況が分かることがモチベーションにつながるとの嬉しいお声もいただいています。 実はコメント機能や閲覧ログ機能はお客様の声から生まれた機能なんです。お客様にもっとCOCOMITEを使いたい!使い続けたい!と思っていただけるよう、お客様からのご要望をもとにした開発をこれからも進めていきます。」
マニュアル別に、誰がいつ読んだのかをトレースできるようになっている。改訂履歴がある場合には、改訂後より最新のバージョンを閲覧していることが確認できる。
閲覧者同士あるいは閲覧者と作成者の間で、質問や要望、補足説明などの情報交換ができる。これにより、従来の口頭やメールなどでの「あのマニュアルのあの説明が分かりにくかった」のようなやり取りによる行き違いや対応漏れを防止できる。
――お客様のご意見なども反映しながら、便利機能を増やしているのですね!今後の機能拡充も楽しみなところですが、とはいえ現在マニュアル作成によく用いられているMicrosoftのWord、ExcelやPowerPointのほうが導入ハードルが低かったり、多くの方が使い方を理解しているので、手軽なイメージがありますね…。
中村さん「おっしゃる通り、Word、Excel、PowerPointは、報告書、計画書、プレゼンテーション、仕様書、チェックリストなど多様な用途、様式に対応し、自由度が高く表現機能も十分にある王道ツールですが、これまでにお伝えしたようなマニュアル作成や運用のデメリットも発生しがちです。対して、オンラインマニュアル作成ツールは作成から閲覧・管理・コミュニケーションまである一貫性、高い検索性で運用しやすいサービス機能、そして業務マニュアルに最適化されたシンプルなレイアウトとバージョン管理機能が備わっていることがメリットです。」
高松さん「確かに、いままでそれらのソフトで作られて来た大量のマニュアルをCOCOMITEに移行するのは大変ですし、手間も掛かります。COCOMITEは写真や動画だけでなく、各種ドキュメントファイルもそのまま添付することが可能なので、最初は簡単な箇条書きと既存のマニュアルの添付で作成し、改訂のタイミングで少しずつ移行していくという使い方がおすすめです。また、既存マニュアルのCOCOMITEへの移行(転記)作業を代行するサービスも承っており、一部のお客様ではこれがご導入の決め手にもなりました。」
サムネイルエリアには画像、動画、PDFを、添付ファイルエリアにはExcel、Word、PowerPoint、CSV形式のファイルを添付できる。
――マニュアル作成ツールに限らず、社内に新しいシステムを導入する場合は切り替えのタイミングが難しかったり、場合によっては、これまでの運用が変わることで社内からの反発もあるかも…と心配される点かと思います。ですが、既存のものも活用しながら少しずつ移行していく運用もできたり、何よりこれまでの煩雑なマニュアル作成・運用が整理されるほうが、メリットは大きそうですね。
まとめ
――作って終わりではなく、活用されるマニュアルを整備するために気を付けるべきポイントをたくさん教えていただきました。それでは最後に一言お願いいたします。
髙松さん「今回はCOCOMITEをベースにマニュアル作成についてお伝えしましたが、世のなかにはほかにも様々なオンラインマニュアル作成ツール存在します。ツール導入時には、達成したい目的にあったツールを導入することが大事です。また、最初から大きな範囲で導入するのではなく、できるだけ小さく導入し、成功体験を積み重ねることで社内に浸透させていくことも、社内展開成功のカギとなります。マニュアル作成・運用にお困りの方は、小さなことでも構いませんのでぜひ一度お問い合わせください。」
中村さん「COCOMITEは、お客様のご要望を反映し成長し続けるプロダクトです。お客様の課題や実現したいことに刺さるご支援が可能ですので、ぜひ一度ご相談をいただければと思います。今後ともコニカミノルタジャパンのCOCOMITE、それに続くナレッジコラボレーション事業の進化にご期待ください。」
――中村さん、髙松さん、ありがとうございました!
オンラインマニュアルサービス「COCOMITE」を活用されたお客様の声を導入事例でご紹介中です。マニュアル作成・運用の見直しを検討したのか、背景から導入の効果までまとめていますので、ぜひご覧ください。
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いいじかん設計 編集部