働き方改革を企業側からの目線のみで考えると、本質を見誤ってしまう恐れがあります。はじめに、従業員目線からの働き方改革について考えます。
「働き方改革」は業務効率化だけを指すものではありません。
働き方改革というと就労時間削減や休出・残業の禁止が想起され、「業務効率化」という経営者目線での効果を求めがちです。しかし、働く側(従業員)にとっては必ずしも効率化がゴールではなく、充実した生活を送りながら意欲的に働けることが重要です。業務を効率化して作業時間を短縮することで、より良い創造的な仕事や学びに時間を使えるようにすることが、真の意味での働き方改革といえるでしょう。
働き方改革とは、日本の労働人口の急激な減少や、働く人のニーズの多様化などに対応するために考えられた国の施策です。働く意欲を持つ人であれば、誰もが生産活動に参加できる「一億総活躍社会」を実現するための取り組みです。
働き方改革を実現するためには、長時間労働の是正や、非正規社員と正社員の格差の是正といった、労働に関する問題を解決していく必要があります。子育て、あるいは介護をしながらでも働くことができる、心身に何らかの事情がある人でも安心して働ける社会であることが、働き方改革の根幹となっています。
また、都会と地方の間で働く機会の格差をなくすことも課題の一つです。能力があり、地方に住みながら働ける機会を探している人や、都市部に住みながら地方創生など地域活性化に携わりたい人もいるでしょう。意欲のある働き手と人材を求める組織を結び付けやすくすることも、働き方改革で実現すべきことです。
業務効率化は、真の意味での働き方改革実現に向けた条件にすぎません。
業務効率化を進めて各業務・各プロセスの生産性が向上すれば、労働時間の短縮や、業務の一極化に向けた問題を解消するワークシェアが可能となります。企業が業務効率化に成功すれば、個々の事情を抱える誰もが労働現場に参加できる環境が実現します。
しかし実際には、働き方改革の本質から外れ、効率化を追求することだけに焦点が当てられる場合も少なくありません。効率化を進めたことによって従業員が働きにくい環境になってしまえば、本末転倒です。
働き方改革では、多様性のある柔軟な働き方の実現が求められます。しかし、その必要性を知りながらも、新しい体制に移行できないという企業は多く存在します。なぜ新体制へと移行できないのか、原因を探ってみましょう。
柔軟な働き方の実現を阻んでいるのが、伝統的な紙での書類管理や、手作業が多く、電子機器を活用しないアナログな承認フロー、仕事やライフスタイルに対する前時代的な価値観・先入観などの様々な制約です。
企業の業務体制および管理体制が、新しい働き方に合わせて整備されにくいことが原因となっています。
業務体制を変更する際には、他部門・取引先への影響を考慮し、セキュリティー対策や法規対応も重要です。業務内容が自部門だけで完結しない場合は、新たな体制へ移行することは容易ではありません。
データ化、ペーパーレス化の遅れも、柔軟な働き方の実現を阻みます。紙媒体をベースとした業務では、整理・情報更新などの際は都度、保管場所から書類を探し出して差し替える作業が発生します。
過去のデータの検索ができず欲しい情報がすぐに手に入らないと、業務遂行に時間がかかるでしょう。書類保管のスペースや時間コスト、人員も必要となり、合理的とはいえません。
申請や稟議の手続きで紙の書類を回覧する方法の場合、進捗状況が分からないため次のステップに進むことができないことがあります。
決裁者の不在、見落としなどによる処理の遅延が発生しやすいのも大きなデメリットです。紙媒体ではリアルタイムでの情報共有ができないため、業務を迅速に処理することが難しくなります。
また、案件ごとに書類・フォーマットが統一されていないケースもあり、申請者の作業負担が増えることもしばしばです。
日本企業の特質としてよく挙げられることに、他者に気を遣う風潮があります。上司よりも先に退社するのは失礼、長期休暇はほかのメンバーに迷惑をかける、家族の事情を職場に持ち込んではいけないなどの潜在的な意識が根強く残っています。働く人の権利を行使するというあたりまえのことが、なかなかしづらいというのが現実です。
働き方改革の推進とともに、こうした意識も少しずつ変わってきてはいますが、企業全体、組織全体をとおしての意識改革が求められます。
「紙で手渡すことで誠意を見せる(電子データを送付するのは失礼)」という風潮があることも、業務体制の変更を阻む要素です。
何時間も話し合いに費やしながら、最終的には以前と似たような方針に落ち着くといった、意味の感じられない会議の開催もいまだに多いのではないでしょうか。その背景には、検討に着手していないと上位職から指摘を受けるため、「検討したが障害があり断念した」という結論を潜在的な既定路線とする、業務への姿勢が隠れていそうです。
そうした潜在意識のなかには、改革や新しいやり方を提案・推進してもし失敗した場合、張本人として批判されるのではないかといった不安が潜んでいるかもしれません。こうした「失敗を否定する価値観」の存在も、新たなやり方の導入意欲を失わせる要因です。
ペーパーレスやテレワーク(またはリモートワーク)を導入した場合に実現できることとしては、以下が考えられます。
デジタルを中心にした仕事の進め方になることで、物理的な場所(出社や座席)や定時の勤務時間といった従来の制約がなくなります。
ペーパーレスやデータ化、クラウド活用によって、自宅やカフェ、サテライトオフィス、ワーケーションなどの様々な場所で業務が可能となります。出社率に合わせたフリーアドレス制の導入で、企業側のコスト抑制につながることも期待できます。
企業の意識変化が進み、業務に合わせた場所の提供という考え方にいたることで、ABWの実現にも寄与します。ABWの詳細については、以下の記事でも解説しています。あわせてぜひご覧ください。
決まった時間に決まった場所で働かなければいけないという意識に対する変化を、現実的なかたちで提示できます。オフィス出社や固定された勤務時間に対応できない人材の戦力化が可能となり、働く意欲がある人の意志を尊重できます。
ペーパーレスやテレワークの導入を、テレワーク・オフィスワークにかかわらず、コミュニケーションの活性化につなげることも可能です。働く場所に縛られなくなると、フリーアドレス制の導入も進み、オフィス内にも自由な空気が生まれます。フリーアドレス制では、固定席よりも出社とテレワークの垣根が低くなり、精神的にもテレワークの受け入れが進むことが期待されます。
コミュニケーションツールの充実、社内カフェやフリースペースの設置など、新しい業務体制に合わせたアイデアの導入も可能です。これまでかかわる頻度が少なかった部門間のコミュニケーションが活性化し、部署を越えたコミュニケーションが創出できるでしょう。
ペーパーレスやテレワークを導入するにあたり、業務の見直しが図られます。優先度が低く、招集の必要性が低い会議は見直されていくでしょう。
リモート会議ですむような打合せやミーティングが増えれば、業務へ集中できる時間や、その他の業務活動に取り組む時間も確保しやすくなります。
ペーパーレスによりシステム導入が進むと、ワークフローの可視化・リアルタイムでの情報共有が可能となります。スケジュールのすり合わせが容易になり、プロジェクト進展についての認識の一致が得られます。
情報共有の円滑化によって、トラブル発生時にも迅速に対応でき、リスクを最小化できます。企業全体での情報伝達も速やかに行えるようになり、意思決定のスピードが上がるでしょう。
文書の電子化については、以下のサイトで詳しく紹介しています。
クラウドやコミュニケーションツールの活用により、場所や時間を意識せず、不便を感じずに業務ができるようになり、いつでもどこにいてもリアルタイムに業務を遂行できます。
チームによる共同作業には、コミュニケーションツールの整備が不可欠です。同じ画面、同じ情報を基にした作業が可能となり、コミュニケーションツールを使った活発な意見の交換が実現します。業務遂行の履歴が見られるので、見落としていた問題もあとで対処できるため、業務精度の向上につながります。
クラウドとコミュニケーションツールについては、以下のサイトで詳しく紹介しています。
スピーディーな情報発信、定型業務の作業時間圧縮によって、クリエイティブな仕事に注力できるようになります。
クリエイティブな仕事を行うためには、同じ業務を担当するメンバー間でのコミュニケーションや、思考を深めるための時間のほか、アイデアの源となる様々な刺激を受けるための時間が必要です。
これまでの定型業務を自動化し、十分な時間を創造性が求められる仕事に振り分けられるようになれば、個々の能力を発揮できる余裕が生まれ、新規事業・プロジェクトや各種施策の企画などを立ち上げて経営の強化につなげていくことも可能です。
クリエイティブな働き方の実現については、以下のサイトで詳しく紹介しています。
テレワークの推進によって、今までの組織文化は更新されていくことになるでしょう。そうした新しい組織の文化が、資料作成などの作業じかんを削減し、そこで生まれた余白をアイデアを生み出す創造じかんや視野を広げる自分じかんに当てる「いいじかん設計」の実現を後押しします。そのために必要な業務改善の方法を解説します。
テレワークでは業務のペーパーレス化が不可欠な要素です。紙媒体からデジタルへの移行に際しては、廃棄・整理(倉庫)・データ化の3つの方法を軸に進めていきます。
ワークフローシステム・クラウドストレージ・オンライン会議システム・電子契約サービスなど、ペーパーレス化に寄与するツール・サービスの活用を視野に入れ、自社の状況に応じて進めていきます。
テレワークで課題の一つとなるのが、社内コミュニケーションの維持です。企業では、対面・非対面の差異をつくらず、気軽に会話できる場を提供することが求められます。
ビジネスチャット、メッセージ、オンライン会議システムなど、自社や業務に合わせたツールを導入します。また、精神面での取り組みとして、「ちょっとした相談」を気兼ねせずにできる、インナーコミュニケーション活発化の施策を検討します。
悩みや疑問を自己完結せずに何でも話し合える企業風土を目指すことが、業務上でのリスク軽減策ともなります。
ペーパーレス化の軸となるのが、紙の書類・ハンコを用いる承認フローからの脱却です。稟議・各種申請のワークフローを見直し、書類作成の時間軽減・書式の不備の回避・承認ルールの統一化・承認プロセスの可視化を軸として、自社に適したワークフローシステム導入を検討します。
企業は、従業員がどのような働き方を選んでも、常に公正な評価が得られる体制を整備しなければなりません。
テレワークのように、上司が部下の仕事ぶりを把握しにくい状況では、どのように勤務評価を行うべきかを検討する必要があります。社外での業務では、業務成果と行動の関連が可視化しづらくなります。定量的な評価は客観的ですが、それのみに偏ると目に見えにくい働きへの評価が得られず、従業員側に不満が生じる場合もあります。
成果物基準、定期面談・1on1ミーティングの実施、業務姿勢、勤怠管理など、あらゆる要素を組み合わせ、多角的な判断が評価につながる体制を整備します。
出社の有無を問わず、従業員の健康に配慮した労働時間管理体制を整備します。
テレワークに対応した就業規則を整備し、勤務時間の記録や作業状況の記録を正しく実施し、給与システムとの連携体制を構築します。
行動基準となるルール策定と同時に、上記の作業を実現できるツールの選定が必要です。
真の働き方改革とは、企業と働く人の双方に相乗効果をもたらすかたちで実現されるものです。働く意欲を持つ人が不安なく仕事ができる環境が整えば、人材確保の問題や、離職率の低下も解消されていきます。
コニカミノルタジャパンでは、ワークフローのアナログからデジタルへの転換でテレワーク実施をサポートしています。また、クラウドや各種ツールを用いて従業員間のコミュニケーションを活性化するためのサービスを展開しています。オフィスワークでもテレワークでも、場所にとらわれない多様な働き方を実現する「いいじかん設計」をぜひご活用ください。
いいじかん設計 編集部
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