電子帳簿保存法はこれまで様々な改正がされてきたこともあり、現在どのような要件で運用されているのか混乱を招いてしまいがちです。
2023年3月時点での電子帳簿保存法の要件は以下の通りです。
■帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
■書類:貸借対照表、損益計算書、棚卸表、領収書、預金通帳、注文書、契約書、請求書、納品書など
7年間あるいは10年間(法人税法の規定による)
電子帳簿保存法では、電子取引データおよびスキャナ保存について「真実性の確保」と「可視性の確保」という要件が定められています。
■真実性の確保
タイムスタンプの付与または訂正・削除の記録が残せること、訂正・削除の防止に関する事務処理の規程を定めそれに沿った運用を行うことなど
■可視性の確保
システムの操作説明書・マニュアルなどを備え付け、「取引年月日」「取引金額」「取引先」による検索が可能であること
■真実性の確保
・タイムスタンプの付与期間は2ヶ月と概ね7営業日以内
・期限内の入力が確認できる場合はタイムスタンプが不要
■可視性の確保
・スキャナの解像度200dpi以上、重要書類はRGB256階調以上のカラーであること
・解像度・階調・書類サイズなどの詳細情報を記録しておくこと
電子取引データおよびスキャナ保存の要件のなかに、「タイムスタンプ」という文言が出てきます。そもそも「タイムスタンプ」とは何か、どういった役割を果たすのか詳しく解説しましょう。
タイムスタンプとは、「ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術」のことを指します。
電子帳簿による保存では、保存後にデータを簡単に書き換え、上書き保存することで不正な改ざんができてしまいます。
これを防ぐためには、いつそのデータが作成・保存されたものであるか、それ以降データが編集されていないことを客観的に証明する必要があるのです。そこで、電子データにタイムスタンプを付与することで、それらを証明し真実性を担保できるようになります。
タイムスタンプの仕組みを簡単に表すと、以下のように表現できます。
上記にある「時刻認証局(TSA)」とは、「時刻認証業務認定事業者」とも呼ばれ、タイムスタンプを発行する第三者機関を指します。PC内部の日付や時計は、手動でどのようにでも設定できるため、ファイル情報に含まれている作成日時や最終更新日時には客観性がありません。誰も改ざんできない時計を持つ、信頼できる機関と照合することで、電子データが作成された日時、およびその後の改変が行われていないデータであることを証明できます。
これは、イメージ的には手紙や封書で言うところの「内容証明郵便」と似ています。郵便物の場合は、配達日時の記録と同時にその内容の控えを郵便局が保管する必要がありますが、電子データの場合は、時刻認証局とよばれる第三者機関が暗号化技術を使った(改ざんが極めて難しい)タイムスタンプを発行することで、そのデータの信頼性を客観的に証明しているのです。
タイムスタンプを付与してもらうためには、どういった手順を踏む必要があるのでしょうか。事前に必要な準備としては、以下の2点が挙げられます。
時刻認証業務認定事業者は、2023年2月時点で以下の5社が提供するサービスが指定されています。
● アマノセキュアジャパン株式会社「アマノタイムスタンプサービス3161」
● セイコーソリューションズ株式会社「セイコータイムスタンプサービス」
● 株式会社TKC「TKCタイムスタンプ」
● 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社「MINDタイムスタンプサービス」
● 株式会社サイバーリンクス「サイバーリンクス タイムスタンプサービス」
ただし、ユーザーはこれらの時刻認証業務認定事業者と個別契約をする必要はありません。タイムスタンプの付与が可能な会計システムを選ぶことにより、これらの手間を省略することができます。
タイムスタンプの付与に対応した会計システムでは、スキャンした書類画像をアップロードすると、その画像データにタイムスタンプが自動的に付与される仕組みになっています。
電子帳簿保存法が改正されるたびに、タイムスタンプ付与の要件は変化してきました。
例えば、2022年4月の法改正以前は、タイムスタンプの付与が必須というルールがありました。しかし、現在では以下の条件を満たせばタイムスタンプが不要となっています。
「訂正・削除が不可能なデータであること」は、例えば手書きの書類をスキャンしたPDFデータなど、(WordやExcelのようにいつでも編集可能な文書ファイルと比べて)物理的に訂正や削除が難しいデータを指します。
また、「期限内(最大2ヶ月と概ね7営業日以内)にデータ化したことが客観的に分かる場合」とは、保存日時が確認できるクラウドサービスやこれと連携する会計システムを利用した場合などが想定されます。クラウドサービスの時計は常に正確に管理されており、自社内のPCなどと違ってユーザーが勝手に改変することができないからです。
現在の電子帳簿保存法では、どのような書類にタイムスタンプの付与が求められるのか、タイムスタンプを付与する際に押さえておきたい注意点もあわせて紹介します。
タイムスタンプの付与が求められるのは、主に「国税関係帳簿書類」と「決算関係書類」、「取引関係書類」の3つに分類できます。
タイムスタンプの運用にあたっては、特に電子帳簿を悪用した不正利用に注意しなければなりません。
例えば、1枚の領収証を複数人の従業員がスキャンし、それぞれにタイムスタンプを発行することは不正行為にあたり、青色申告の承認取り消しや追徴課税・推計課税が課される恐れもあります。
これを防ぐためには、領収証を受領した際に手書きの署名をし、速やかにスキャンするなどのルールを定め運用していくといった対策が求められます。
電子帳簿保存法の改正によって、タイムスタンプの運用ルールは大幅に緩和され、事業者にかかる負担は軽減されました。
しかし、全てのケースでタイムスタンプが不要となったわけではなく、国税関係帳簿書類や決算関係書類、取引関係書類については引き続きタイムスタンプの付与が必須となります。
従業員による不正が疑われないようにタイムスタンプを正しく運用し、また実際に不正が起こらないよう正確な情報やルールを社内に周知させることが重要です。
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