従来のオフィスは、社員一人ひとりに固定の座席が設けられ、部署やチームごとにまとまって配置するレイアウトが一般的でした。オフィスへの出社を前提とした働き方のもとでは、部署やチームごとに対面でコミュニケーションがとれる座席の配置が合理的であったためです。
しかし、現在はITの普及によって、リモートワークのような新しい働き方を選べるようになっています。オフィスへ出社する社員とリモートワーク社員が混在するなかでは、必ずしも従来型のオフィスが合理的とは限りません。そのため、働き方の変化に応じてオフィスも多様化し、従来とは異なるレイアウトを採用する企業が増えてきました。
社員ごとに座席を固定せず、カフェやコワーキングスペースのように自由に座席を選べるフリーアドレスもその一つです。フリーアドレスでは、異なる部署やチームの社員とのコミュニケーションが活性化されるため、部門横断的な交流が生まれることが期待できます。
一方で、フリーアドレスには「仕事に集中したいのに、途中で話しかけられて作業効率が低下する」といった懸念もあります。この問題の解決策として、コニカミノルタでは、執務フロアと来客フロアのエリアに対し、異なる7つの機能を持たせたゾーンとソリューションを設置し、「High」クオリティーなオフィスを提唱しています。
例えば、リモートワーク中の社員とオンラインで打ち合わせをする際にはミーティング用のスペースとして最適な「High Collaboration」ゾーン、一人で作業に集中したいときにはソロワーク用のスペースに適した「High Focus」ゾーンへ移動します。業務内容に合わせて最適な環境を選べるのです。
ほかにも、創造性や革新的なアイデアが求められる業務に適した「High Creativity」ゾーン、プロジェクトワークやアトリエ・ラボ・デモルームなど特殊な機能・環境が用意された「High Function」ゾーン、機密情報を扱う議論や業務に適した「High Secure」ゾーンなどがあります。
このように、オフィスのレイアウトを変えることによって、コミュニケーションの活性化と業務効率化・生産性の向上の全てを実現することが可能です。
従来のオフィスからフリーアドレスへ移行する際には、業務を遂行する上で様々な課題があることも事実です。特に重要となるのが、社内の意識改革とワークフローの改善です。これらの課題を実現するためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
フリーアドレスを導入したものの、部署やチーム単位でまとまって席についてしまうと導入の意味がなくなってしまいます。フリーアドレス導入の目的は、部署に関係なく社内横断的にコミュニケーションを活性化することであると説明し、社員から理解を得る必要があります。その上で、フリーアドレスを運用するためのルールを策定します。
例えば、終業時にデスクに私物を置いたまま帰宅するスタイルが定着してしまうと、実質的にその人の固定席となってしまいます。仕事に使用するパソコンや文具はもちろんのこと、マグカップやスマートフォンの充電器など、一切の私物を残さないよう徹底することが求められます。
また、離れた場所からでも部署やチーム内で業務のやりとりを円滑に行うためには、電話やメールだけでなく、チャットツールのようなコミュニケーションツールも用意しておくとよいでしょう。
フリーアドレスの導入にあたって、もう一つの代表的な課題として挙げられるのが、ワークフローの改善です。
フリーアドレスでは、誰がどこに座っているのかを毎回確認しなければならず、従来のオフィスレイアウトに比べ、書類の授受や捺印の依頼に時間を要してしまいます。また、リモートワークも併用するとなると書類を回覧できず、申請業務が滞ってしまうことも考えられるでしょう。
フリーアドレスを導入する際には、こうしたワークフローの問題を解決することが大前提です。そのためには、ペーパーレス化が大きなポイントとなります。紙の書類に依存したワークフローから脱却し、ワークフローシステムを導入して、時間や場所にとらわれない働き方を実践できる環境を準備することが重要です。
ワークフローの改善ができれば、対面でなくとも業務の連携や引き継ぎが円滑に行えるようになり、社内全体の業務効率化や生産性向上が期待できるでしょう。
従来のオフィスから脱却し、フリーアドレスの導入が成功すれば、社員にとって理想的な労働環境を実現できる可能性が高まります。企業にとっても、人材の定着化や採用力の強化につながることが期待できるでしょう。
従来のオフィスでは、ほかの部署がどのような仕事をしていて、誰がどのような役割を担っているのか見えないケースも少なくありませんでした。しかし、フリーアドレス導入によって、社内の様々な人とのコミュニケーションが活性化すれば、各人の仕事内容や役割が可視化されることも期待できます。
業務の進め方で困っているとき、社内の部署や社員一人ひとりの役割が把握できていれば、相談すべき相手を特定しやすくなり、生産性も向上していくでしょう。
また、フリーアドレスへの移行に合わせてペーパーレス化を推進すれば、ワークフローが改善され業務効率化の実現にも近付きます。理想の働き方を企業が実現するためのポイントは、従来のオフィスへ出社する働き方以外に、フルリモートワークやハイブリッドワークなど、社員一人ひとりに合わせた働き方を選択できるようにすることです。
子育てや介護と仕事を両立しなければならない社員でも働きやすい環境を整備することで、キャリア形成の支援につながります。社員の仕事に対するモチベーションアップも期待でき、企業にとっては自社の魅力が向上し、採用力の強化につながることが期待できるでしょう。
働き方改革が進められるなか、業務の生産性を向上させると同時に、社員間のコミュニケーションを活性化させるためには、今回紹介したようなフリーアドレスへの移行が有効な手段の一つといえます。
従来のオフィスからフリーアドレスへの移行を成功させるためには、社員の意識改革やペーパーレス化など取り組むべきことは少なくありません。しかし、これらの取り組みを実現すれば、社内コミュニケーションの活性化やワークフローの改善は大きく進むでしょう。
フリーアドレスは、社員のライフステージに合わせフレキシブルな働き方が実現できるほか、ワークライフバランスの構築にもつながると期待できます。理想の「はたらく」を実現するためにも、フリーアドレスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
いいじかん設計 編集部
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