テレワーク・デイズ2019の実施結果発表!オリンピックに向け実施規模拡大
- #働きやすい環境づくり
- #ITセキュリティーの強化
オリンピック・パラリンピック開催時の交通混雑緩和の施策として期待されるテレワーク。本番に向けた予行演習として年々規模を拡大してきた「テレワーク・デイズ」の2019年実施結果を総括します。
INDEX
テレワーク・デイズの概要と歩み
テレワーク・デイズとは、「テレワークを活用した働き方改革の全国展開及び東京2020大会の交通混雑緩和にも寄与するよう一斉にテレワーク実施を行う国民運動」(総務省資料から テレワーク2019実施概要書)と定義されています。主催者は、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府で、東京都及び関係団体と連携して開催したものです。
2017年7月に3年後の東京オリンピック・パラリンピック開催日となる7月24日の1日だけ実施した「テレワーク・デイ」からスタートし、2018年度は、7月24日から1週間を実施期間とすることで「テレワーク・デイズ」と名称が変わり継続してきました。2019年度は、さらに期間がオリンピック・パラリンピック全開催期間と同じ約1ヶ月となるなど、運動として大きな拡大を遂げてきました。
特に2019では、全国で3,000団体、延べ60万人の参加を目標としました。(2017年度は、950団体、6.3万人の参加でしたが、2018年度は1,682団体、延べ30万人に拡大しました。)2020年東京大会一年前の、文字通り「本番のための最後のテスト」として実施されたわけです。
「テレワーク・デイズ」の2つの目的
「テレワーク・デイズ」が企画されたのは、テレワークが「働き方改革」の有力な促進手段であり、社会的効果が高いとの認識からデイズの運動を契機として、全国的にテレワークを普及拡大していくことを目的としています。
同時にこの運動は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に予想される超過密な交通混雑の解消の切り札になるとされたことから、働き方改革と東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通混雑解消の切り札として、デイズ開催の2大目的となりました。
特に、当初、開催期間中の交通混雑の予測はかなり深刻なものでした。国土交通省では、大会期間中の観客と大会スタッフ数は約1,010万人、1日当たり最大約92万人と予測しています。またNHKが大会組織委員会に取材した番組では、聖火台が設置されるなど大会を象徴する地域となる東京の臨海部は、多い日で1日当たり15万人を超える人出が想定されていることが分かりました。
どのようにオリンピック開催中の交通混雑を解決するか?
既に何度か指摘されているように、テレワークで混雑解消に成功したロンドンオリンピックでのテレワーク活用実績がモデルとなっています。期間中、企業の約8割がテレワークや休暇取得などの対応を行い、市内の混雑を解消したとされています。
テレワーク・デイズ2019開催概要
テレワーク・デイズ2019は、2020年東京大会前の本番テストとして、 2019年7月22日(月)から9月6日(金)の約1ヶ月間を実施期間と設定し開催されました。特にテスト分析の集中日としてオリンピック開会式の7月24日をコア日と設定されました。(デイズ2019は全国に呼びかけましたが中でも、都内企業は、大会開催日程2019年7月22日(月)~8月2日(金)、8月19日(月)~8月30日(金)を集中的実施期間として対応するよう呼びかけています。)
また、期間中には、「2020TDM推進プロジェクト(交通需要マネジメント)」、「東京都のスムーズビズ」とも連携して実施されました。特に、東京都のスムーズビズと合同開催として、2019年7月1日、今夏の様々な取組内容について、世の中に広く発信し、より一層の機運醸成を図るためのプレイベントが開催され、総務大臣、経済産業大臣及び東京都知事が参加、特別協力団体等によるフォトセッションのほか、企業・団体等による取組・意気込みを語ってもらうパネルセッションを実施しました。
2019の実施結果として、参加者は、7月22日(月)~9月6日(金)の実施期間で、2,887団体、約68万人が参加。実施団体と特別協力団体の合計は2,424社となりました。1社・団体平均で約280人が参加したことになります。この数字は、前年度2018と比較して参加企業・団体数で約1.7倍、参加者人数で約2.2倍となりました。多くの企業・団体・地域の参加により2019の目標は達成されました。
テレワーク・デイズ2019の実施効果
テレワーク・デイズの一つの目的は、テレワークを実施することで交通混雑を解消すること。そのため、デイズ開催期間中参加企業や団体は期間を定めて「全社員一斉の在宅勤務の実施」や「モバイルワークの有効活用や郊外のサテライトオフィス・コワーキングスペースなどの有効活用」を実施しました。その結果、様々な効果を確認することができました。
通勤者減少量
報告を見ると、鉄道などを利用する通勤者の比較では、東京23区全体で通勤者が1日あたり約26.8万人(減少率-9.2%)減少、週間平均では134.1万人(減少率-9.2%)となりました。区別で見ると千代田区、港区、新宿区、中央区など都心部で減少量が多い結果となりました。(調査は自宅から500m以上離れた勤務地(東京23区内)に訪れた20歳から64歳を対象に、期間外と期間中の通勤者人数を比較したもの)
また、2018年と2019年の比較で見ると、テレワーク・デイズを実施した通勤者減少の効果は408,242人の減少から1,235,451人の減少へと一気に約83万人の減少となり、運動の効果が明らかになりました。
勤務体系の内訳
多様な働き方のあるテレワーク。デイズ期間中は、「在宅勤務」を活用した企業・団体が1,675社・団体(構成比77.3%)となり、テレワーク・デイズ2019におけるテレワークは「在宅勤務」を軸に設定しつつ、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務と多様な勤務形態を導入した企業・団体が多いという結果になりました。
業務効率化・コスト削減の効果
テレワーク・デイズ2019に参加して得られる波及効果の中に、業務の効率化やコストの削減があります。デイズをきっかけにテレワークを実施したことにより、オフィス事務および残業時間など、すべての指標で大幅な削減効果が見られたと報告されています。
事務用紙等は約38%減少(2018年は約14%)、残業時間は 約44.6%減少(2018年は約45%)と業務効率化に貢献しました。
消費電力の削減
また、全社一斉の在宅勤務などを実施することにより、消費電力の削減効果も認められました。デイズ結果報告では、電力削減率の回答があった21団体のうち、19団体で、集中実施日の7月24日における消費電力量が通常時よりもっとも削減率の大きな団体では69%(2018年は13%)削減、平均で9.1%(2018年は4%)の削減効果があったとされています。
オリンピックで予想される交通量の見込みと必要な対策
交通混雑の要因の一つ、道路交通の状況を見ると、さらに深刻な課題が浮かび上がっています。下図にあるように、一般交通に大会関係車両が加わることで交通状況は厳しくなる見通しであり、対策を講じなければ大会輸送のみならず、経済活動、市民生活への影響が大きく、特に首都高の渋滞は、現況2倍近くまで悪化することが想定される、と指摘されています。
大会時に必要な対策としては、TDM(交通需要マネジメント)とTSM(交通システムマネジメント) で構成される交通マネジメントを実施し、大会関係者や観客の円滑な輸送と経済活動、市民生活の共存を図るとされていますが、特にTDMの実施においては、テレワークの実施が必須のものと指摘されています。
一方、鉄道利用の実態としては、コア日(7月24日)の駅出場者数は、ピーク時間帯1時間(8時台)において、重点取組16地区中11地区で減少が認められたとしています。特に、重点取組地区別の駅出場者数の変化では、霞ヶ関・虎ノ門がピーク時15%減少、大会会場に向かう浜松町・田町、品川ではそれぞれ6%、5%の減少となった。
オリンピックを契機に効率的な働き方に取り組もう
テレワーク・デイズの実施概要やその効果について、主に報告会で発表されたデータを中心にまとめてみました。東京オリンピック・パラリンピック開催は目前に迫っています。いよいよ本番が開始されます。
テレワーク・デイズの波及効果は大きく、例えば、重点取組地域の2万人を超える社員が5日間連続でテレワークを実施するなど、大企業において、全社的、大規模、連続したテレワーク実施の動きが拡大しました。
またテレワークを含めた働き方の効果測定(MINDS)、ソロワークなど集中力向上、イノベーション創出などを目的とした新たなテレワークの展開など、企業において、テレワーク・デイズ期間と併せて週休3日や新たな働き方改革にチャレンジする動きや、他社とのコラボレーションの動きが活発化しました。
さらに、テレワーク・デイズ期間中、サテライトオフィスやコワーキングスペースを積極的に活用することによって新しいコミュニケーションが活発化したと報告されています。
企業だけではなく、全都道府県の約6割、27都道府県が実施団体・特別協力団体として参加。市町村も含めると昨年度比、約2倍の団体が参加(約100団体⇒約180団体)しました。
最後に忘れてならないことをお伝えします。ロンドンオリンピックでのテレワークによる混雑解消の成功事例の背景にはこんなことがありました。実はロンドンの企業・団体には、テレワークを実施する習慣ができ上がっていたということです。つまり、オリンピックでのテレワークの一斉実施の素地は、ロンドンの企業や団体においては特別のことではなかったということです。イギリスはテレワークの先進国でもあったのです。
学びたいことは、東京オリンピック・パラリンピックでテレワークを実践するためには、1日でも早くテレワークを実践し、「普通の働き方」として定着させることです。
官民を挙げたテレワーク・デイズという大規模な国民運動に参加することを契機に、テレワークの効果を実感し、個々の企業や団体、自治体で「自社版テレワーク」を実施していくことが期待されています。
コニカミノルタジャパンのテレワークやスムーズビズの取組みはこちらでご紹介しています。
まとめ
わが国のテレワークは、外資系企業やIT企業に先導されて徐々に浸透してきましたが、逆に、地方自治体(市区町村)などでの取り組みが遅れがちと言われてきました。これまで、市区町村の職員がテレワークを実践している例は、1,700を超える団体のうち、数えるほどしかありませんでした。
ところが、昨年来、「テレワーク・デイズ」への参加を契機として、テレワークを実践する市区町村が、東京都港区、渋谷区、町田市、などのように、次々と出現しており、職員の働き方改革や、役所全体の業務改革を志向した積極的な取り組みが目立っています。なかなか機運が盛り上がらなかった地方自治体の職員のテレワークを一気に推し進めるほどのパワーが「テレワーク・デイズ」にはあるようです。そして、それは、オリンピック・パラリンピック東京大会のインパクトでもあります。
1964年の東京オリンピックが、新幹線や高速道路などのレガシーを残したように、2020年の東京大会が、日本社会の岩盤をこじ開け、テレワークの普及というレガシーを残してくれることを期待したいものです。
コニカミノルタジャパンではテレワークを実行する上での様々な課題を解決するソリューションに加えて、人事・労務まわりの制度見直しまで、ご支援することが可能です。
働き方改革の課題を解決するソリューションについては「IDEA SHOWROOM」でご覧いただけます。テレワークが気になるお客様向けのおすすめ見学コースもご用意していますのでお気軽にご覧ください。また、中小企業での働き方改革やテレワークの取り組み事例をいいじかん設計動画カタログでご紹介中です。こちらもあわせてご覧ください。
文責:三浦 拓馬(日本テレワーク学会 理事・事務局長)
新聞社勤務後、TQCコンサルタント企業の起業に参画。その後、欧米のテレコミューティングの進展に接し、1994年、株式会社いわきテレワークセンターの設立に参画。テレワーキングと改善活動という二つの領域の調査研究、普及促進活動を展開中。
株式会社いわきテレワークセンター東京オフィスディレクター、一社 日本テレワーク協会研究員、NPO法人地域産業おこしの会事務局長、大学講師、公開セミナー講師など実績多数。