テレワーク導入の効果と労務管理の課題

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テレワーク導入の効果と労務管理の課題

近年、働き方改革への対応が問われる中、情報通信技術を活用することで場所や時間にとらわれない働き方を行う「テレワーク」を導入する企業の数が急増しています。
しかし、テレワークには正確な労務管理を行えるのかという不安も伴います。よって、企業側がテレワークの効果や管理方法に対する理解を深めた上で導入する必要があります。

INDEX

テレワーク導入の肝は労務管理にあり

テレワークには、自宅で仕事を行う在宅勤務、客先や移動中にパソコン等で仕事を行うモバイルワーク、会社のオフィス以外の拠点で仕事を行うサテライトオフィス勤務があります。
いずれの場合も、会社との間で、情報通信技術を活用した定期的な連絡や情報の共有を行います。

テレワークを行うことで、以下のような効果が得られます。

  • 作業に集中できることで生産性が向上する
  • 顧客対応のための時間を増やせるため営業効率や顧客満足度が向上する
  • 自宅での労働が可能になることで育児や介護による従業員の離職を防止でき、遠隔地に住む人材の雇用もできるようになる
  • ワークライフバランスの実現や通勤負担の軽減により従業員満足度が向上する
  • ペーパーレス化の進展や通勤に対する費用負担の減少などにより事業コストが削減される

反面、以下のような課題も存在します。

  • 労働時間を正確に管理することが難しい
  • 個人の行動が見えづらいことにより人事評価がしにくくなる
  • 従業員間のコミュニケーションが希薄になることがある
  • 機密情報等の漏えいリスクが高まる

テレワークの実施にはこれらの課題を解消できる労務管理体制が必要です。

企業に対応義務!テレワーク実施時も労働基準法が適用される

企業に対応義務!テレワーク実施時も労働基準法が適用される

テレワークであっても、企業との間で雇用契約が成立しているのであれば労働基準法が適用されます。具体的には、以下の対応が必要となります。

1.労働条件の明示

テレワーク対象期間中の労働時間や賃金、その他の労働条件を具体的に明示する必要があります。テレワークの対象となることで労働条件の変更が生じる場合は、新たに雇用契約書を作成する対応が望ましいです。

これに関して注意すべきことは、以下の2点です

  • 就労場所としてテレワークを行う場所を明示する
  • 不利益な労働条件変更を行う場合は本人の同意を得る

2.実労働時間の把握

企業には、雇用する従業員の実労働時間を正確に確認し記録することが義務付けられています。これに関しては、テレワークで働く従業員も同様です。始業・終業時刻や休憩等による不就労時間を正確に把握する管理体制が必要となります。

3.就業規則の変更

テレワークを全従業員に適用するルールに基づいて実施する場合は、ルールの内容を就業規則上に規定し、全従業員に周知したうえで就業規則の変更手続きを行う必要があります。

就業規則上に規定すべき内容として、以下のようなものがあります。

  • テレワーク期間中の人事評価や労働時間の管理方法
  • テレワーク期間中の連絡体制や出勤義務
  • テレワークの実施に伴う通信費や情報通信機器使用などの費用負担
  • 情報セキュリティーに関する義務
  • 社内教育や研修などへの参加義務

テレワーク対応の就労規則は厚生労働省から雛形が提供されている

前節で述べたように、一定のルールに基づいてテレワークを実施する場合は、ルールの内容を就業規則上で規定する必要があります。
テレワークに関する規定は、賃金規程などと同様に就業規則の本則に付属する別規程として作成することが一般的です。内容に関しては、厚生労働省が提供している以下の雛形が参考になります。

参考:厚生労働省「テレワークモデル就業規則 ~作成の手引~」

色々なパターンあり!労働時間の管理方法

色々なパターンあり!労働時間の管理方法

テレワーク従事者の一日の実労働時間は、業務の開始時刻から終了時刻までの合計時間から業務を中断、休憩した時間を引くことで求められます。

会社が業務の開始・終了時刻や業務を中断、休憩した時間を把握する方法としては、テレワーク従事者からの報告と労働時間を管理するためのITツールの活用があります。
テレワーク従事者からの報告に関しては、使い慣れたEメールや電話を使うのも一般的です。所定の始業・終業時刻と異なる業務の開始や終了を認める場合は、報告タイミングなど運用ルールを明確にしておく必要があります。

テレワーク従事者からの報告に基づいた労働時間管理を行う場合、報告内容が正確でないことによる不確実性が生じることもありますが、ITツールを活用した労働時間管理を行う場合は、業務の中断や休憩の時間も含めて働いている時間を正確に測定できるのがメリットです。

労働時間管理に使えるITツール

労働時間管理に使えるITツール

テレワークを実施している企業では、テレワーク従事者と会社のオフィスで働く従業員との間のコミュニケーションを保つために、TeamsやChatworkなどのチャットと音声機能を兼ね備えたITツールを活用しています。

スケジュールの共有に関しては、Microsoft 365 のOutlookやGoogleカレンダーのようなスケジュール共有機能が充実したITツールが便利です。

また、勤怠システムが申告制の場合、実際は長時間労働になっていて企業に罰則が発生するリスクがあります。PCの操作ログと勤怠システムを組み合わせることで、申告時間と実績が極端に乖離している人のチェックや、正しい労務管理を行うことができます。

働き方改革に対応するため勤怠管理に求められるツールとその機能をまとめると、以下のようになります。

PCのログインとログアウトを行うことで出勤・退勤時間を管理する

SKYSEA Client View などの勤怠システムとPC操作ログ管理アプリの組み合わせで可能です。

離れた場所にいる従業員同士が互いに顔を見ることができるようにする

Teamsなどのアプリで対応可能です。

業務の開始と中断・終了時に簡単なボタン操作を行うことで業務に従事した時間を記録する

AKASHI などの一部のクラウド勤怠管理アプリで対応可能です。

従業員の労務時間を自動集計することで、会社が正確な労働時間を把握する

AKASHI などの一部のクラウド勤怠管理アプリで対応可能です。

まとめ

人口減による労働力不足への危機が迫る中、多様な働き方を認めることで優秀な人材の定着、確保を実現していく人事政策は、企業が生き残ることへの有用な手段となります。その一環として、テレワークが注目されているのです。

コニカミノルタジャパンではテレワークを実行する上での様々な課題を解決するソリューションに加えて、人事・労務まわりの制度見直しまで、ご支援することが可能です。
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文責:大庭 真一郎(経営コンサルタント)
大庭経営労務相談所 所長
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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