職場環境改善の重要性や具体的な事例を紹介
- #働きやすい環境づくり
- #人材採用と定着
- #業務改善・生産性向上
ニューノーマル時代の働き方改革を進める上で、生産性の向上とともに重要視されているのが、ワーク・ライフ・バランスの向上や健康経営の側面です。これらを実現する上で、重要なポイントとなるのが職場環境改善です。職場環境改善に取り組む意義は深く、従業員の精神状態の改善だけに留まりません。
職場環境改善の重要性を踏まえて、具体的な取り組みと事例を紹介します。
INDEX
職場環境改善の重要性と必要とされる背景
職場環境改善の重要性について理解することは、従業員のストレス軽減だけではなく、モチベーションや生産性の向上につながります。職場環境改善の概要を確認してみましょう。
職場環境改善とは?
職場環境改善の概念には、以下の2つの考え方があります。
■狭義の職場環境改善:厚生労働省が定める「快適職場指針」を指す
■広義の職場環境改善:様々なストレス対策を含む
1992年に改正された労働安全衛生法で、快適な職場づくりが事業者の努力義務とされました。国民全般の安全衛生への関心を高める目的で設立された安全衛生情報センターにて、企業が守る指針としてガイドライン「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」が公表されています。
ガイドラインでは、快適な環境を構築するための対策(職場の暑さや寒さなどの環境を整える、ストレス相談の部署を設けるなど)や、注意すべきポイント(継続的な実施が必要、労働者の意見を反映させるなど)が具体的に述べられています。
職場環境改善が必要とされる背景
職場環境改善が重要視され、厚生労働省がガイドラインを発表しているのは、組織が働き方改革を実行するために、職場レベルで働きやすさを実現することが不可欠と考えられているためです。また、従業員の心身の健康保持・増進に企業が積極的に関わることにより、従業員の活力向上や生産性向上につながるとも考えられています。
つまり、職場環境改善は、健康経営や働き方改革を実現する手段の一つとされるのです。
職場環境改善のメリット
職場環境改善で生じるメリットについて、具体的に見ていきましょう。
従業員の精神的ストレスの改善
厚生労働省が公表する「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引き~」では、ストレスチェック制度を受けた後に職場改善の経験をした労働者の約6割が、ストレス軽減に有用だったという結果が述べられています。また、ストレスチェック制度が実施されなかった職場の労働者よりも、心理的ストレス反応の改善度が高いことも分かっています。ストレスチェック制度を活かすためには、ストレスチェックの結果を手がかりに、個人面談や集団分析を踏まえて職場環境改善に取り組むことが重要です。
関連記事:
従業員の健康維持
職場環境改善に取り組み、従業員の精神的状況を良好に保つことは、従業員の健康状態の改善にもつながります。ストレスチェック制度の導入をはじめとした健康経営に企業が取り組むことにより、従業員の健康状態を配慮した組織体制を構築できます。
生産性の向上
前述の厚生労働省の手引きでは、職場環境改善を実施して、生産性が向上したことによる費用便益効果を示す研究結果が紹介されています。職場環境改善のためにかかる費用が従業員ひとりあたり7,660円であるのに対して、職場改善による利益向上額が従業員ひとりあたり15,200円となり、費用便益が約2倍になるのです。
従業員定着率の向上
職場環境の改善によって、従業員が「働きがい」や「働きやすさ」を実感しやすくなり、仕事へのモチベーション向上が期待できます。ワーク・ライフ・バランスの向上やエンゲージメントの向上は、離職率の低下や職場への定着につながります。人材難の環境下でも人材を確保しやすくなるでしょう。
職場の問題点改善の具体的な取り組み方と事例
具体的な取り組み事例は、自社で職場環境改善を目指す際の目安になります。取り組み方と事例を紹介します。
取り組み方のステップ
職場環境改善は、次の3ステップで取り組んでいきます。
■現状の課題の洗い出しと法令の確認
残業時間や設備・制度の不備など、従業員が感じている課題を、従業員アンケートを実施して明確にします。このとき、安全衛生に関する職場環境の安全性を確認するために、法令の確認も行います。
■具体的な対策の構築
経営者もしくは管理者が主体となり、具体的に対策を構築します。特に中小企業においては、すべての対策に手がまわらないことも想定されるため、優先順位を決めて実施したり、外部業者のサポートを活用したりすることをおすすめします。できる対策から実施する姿勢が重要です。
■実行・評価・改善
職場環境改善の実行・評価・改善を行います。アンケート調査や残業時間の集計など、数値化が可能な項目では定量評価の実施が効果的です。
取り組み方のアイデア・事例
職場環境改善の取り組み方のアイデアや、具体的な事例について紹介します。
■ストレスのない職場環境づくりのアイデア
職場環境づくりについて、一からアイデアを出すのは難しいものです。厚生労働省のヒント集「職場環境改善のためのヒント集 メンタルヘルスアクションチェックリスト」や、既存のアイデアを参考にしましょう。そのなかから、自社の状況にあてはまる項目を選んでみることをおすすめします。また、選んだ項目や自社の事情に合う項目をリスト化すると、効果的なチェックリストが作成できます。
■職場環境改善の事例
熊本地域医療センターでは、日勤と夜勤の看護師の制服の色を変えることにより、全体の残業時間削減に成功しています。残業の状況がひと目で確認できるため、定時間近のスタッフには仕事を依頼しないなど、自然に勤務時間を意識する体制が整えられたためです。
■コラボヘルスの事例
コニカミノルタでは、2013年以降、フィジカル面・メンタル面の不調者やリスクのあるスタッフを見える化して、「人財力」の向上を目指しています。その過程において、会社(人事部)と健康保険組合の一体運営(コラボヘルス)を行い、従業員一人ひとりに対して密な個別対応が取れる体制を整えています。
その結果、フィジカル面でのハイリスク者低減(2013年から2017年で74ポイントの低減)や、メンタル不調者の減少(2012年4月の137名から2018年4月の63名へ減少)などの成果を上げています。
詳しくは「コニカミノルタの「健康経営」~データ活用による「見える化」で従業員の意識・行動を変える!~」をご覧ください。
■職場におけるリスクシミュレーション
作業現場では、人体や環境に対して有害な物質が発生してしまうリスクがあり、従業員や工場の近隣住民などに不安を与えることがあります。リスク対策として、現場の従業員へのコミュニケーションを通じたリスクシミュレーションをした上で、産業医によるリスク評価を実施すると良いでしょう。
職場環境改善の注意点|本当に従業員が希望している改善か?
職場環境改善をはかるうえでの注意点についても確認しておきましょう。
課題と取り組みの内容が一致しているか?
改善はあくまで課題があってこそのものです。
例えば、社内コミュニケーションが十分に取れる仕組みが整っている組織であるにもかかわらず、さらにコミュニケーションを活性化させようとして、面談制度を導入したらどうなるでしょう。過度な制度の導入は、かえって管理者と部下の双方に負担を生じさせ、生産性が低下する可能性があります。
負荷と効果のバランスが保てているか?
職場環境改善は、大きな成果が得られる場合には積極的に推進していくべきです。しかし、効果(コスト削減・新たな働き方の実現)よりも負荷(オフィスレイアウトの決定、内装設計・施工、各種専門業者の選定・契約、オフィス家具の選定・購入、引越しなど)があまりにも大きい場合には、対策を見送るべきかもしれません。
職場改善の恩恵に不公平がないか?
職場改善によって得られる恩恵が一部の従業員に偏っており、他の従業員にとって負担が大きくなる場合には、会社にとって本当に必要な処置かどうかを再検討する必要があります。従業員のモチベーションが低下してしまう可能性が高いためです。
改善すべき点が合っているかどうか、現状を確かめるには社員アンケートが効果的です。
コニカミノルタジャパンでは自社での実践経験に基づく働き方改革支援サービスとして、「いいじかん可視化サービス 働き方状況把握アンケート」を実施しています。コニカミノルタの自社実践ノウハウと、産学連携研究による設問で構成されたアンケートで、働き方改革の為に必要な自社の状況把握と効果測定が可能です。
課題に合った職場環境改善の実施と評価・チェックを実施しよう
近年、従業員のストレスや健康状態の改善のために、職場環境改善の重要性が指摘されています。職場環境改善に効果的に取り組むことにより、企業は生産性向上や従業員のエンゲージメント向上にも取り組むことができます。
自社に合った課題解決を行うためには、従業員に対してアンケートを実施し、課題を明確にしてから取り組むようにしましょう。また、改善対策実施後にチェック・評価を行い、PDCAのサイクルを回すことも忘れないように気を付けましょう。
いいじかん設計 編集部