後継者不足が原因の倒産が過去最多など、経営者の高齢化と後継者不足が社会的な課題となっています。60歳以上の経営者の約半数が廃業を予定しており、うち28.6%が後継者難を挙げてるという調査もあります。
廃業となると、事業を通じて培ってきた人脈や技術など、大切な経営資源が失われてしまうため、早めの着手が重要です。たとえば後継者の育成には5〜10年かかるとされています。
事業承継ガイドラインでは、次の5つのステップで事業承継を進めていきます。
事業承継はプライベートな領域に関わるため、なかなか外部の専門機関に相談しづらく、また経営者も多忙なため後回しになりがちと言われています。そのため、とにかくまずは準備の必要性を認識することが第一歩です。手始めに「事業承継診断票」に取り組み、現状認識することも有効です。
後継者へ引き継ぐためには、現在の会社の状態を正しく把握することが必要です。把握できた現状を、後継者や社内に共有するために「見える化」をします。
事業承継のための準備ステップ2、3をきっかけに経営改善されることもメリットに挙げられます。
親族内・従業員承継の場合と社外への引継ぎの場合で異なります。
ステップ1~4を踏まえ、事業承継を実行し、適宜計画のブラッシュアップを行うなど、PDCAを回します。
事業承継は経営状況や経営課題、経営資源等を「見える化」することから始まります。事業承継の5つのステップのうちのステップ2「経営状況・経営課題等の把握(見える化)」にあたります。「見える化」の具体的な方法は、「会社の経営状況の見える化」「事業承継課題の見える化」の2つを行います。
会社の経営状況を確認します。「会社の経営状況の見える化」に際するチェックポイントは次のとおりです。
事業承継のメインの課題である後継者候補について検討します。「事業承継課題の見える化」に際するチェックポイントは次のとおりです。
事業承継の方法として「親族内承継」「役員・従業員承継」「M&A」の3パターンから決定します。3パターンそれぞれにメリット・デメリットがあります。
「親族内承継」「役員・従業員承継」で行う、事業承継計画の作成と実行についてご紹介します。事業承継計画について中小企業庁は、"自社や自社を取り巻く状況を整理した上で、会社の10年後を見据え、いつ、どのように、何を、誰に承継するのかについて、具体的な計画を立案しなければならない。この計画が、事業承継計画である"と謳っています。
事業承継計画作成の流れは、まず経営者が自身の経営の歴史や価値観を再認識したうえで、中長期目標を設定し、計画を作成します。
事業承継計画作成から実行にあたり、重要なポイントは次のとおりです。
なお、事業承継計画には次の項目を盛り込みましょう。
中小企業庁策定の「事業承継マニュアル」では、事業承継計画のサンプルと記入例も公開されていますので、ぜひご参考ください。
後継者不在等のため、親族や従業員以外の第三者に事業引継ぎする場合、M&Aも選択肢となります。M&Aの流れは、「M&A仲介機関の選定」と「売却条件の検討」を行い、交渉の末、譲り受け企業が決定します。
M&Aには専門的な知識が必要です。また、自社の希望にマッチした譲り受け企業を見つけるノウハウも重要です。そのため、M&A専門業者や取引金融機関、士業等専門家等の中から、信頼できる仲介機関をいかに見つけるかが肝になります。
M&Aは、全く知らない外部の経営者に変わってしまうため、従業員に影響が出るのではと懸念される経営者も多いですが、自社に合ったM&A仲介機関を見つければ、信頼できる経営者を選ぶことも可能です。普段のお付き合いや紹介、WEB等の情報源も参考にしながら自社に合ったM&A仲介機関を選びましょう。
M&Aを行うにあたり、自社の希望にマッチした譲り受け企業を見つけるためには、
など、どのような形で事業承継を希望するか事前に売却条件を考え、M&A仲介機関に伝える必要があります。
M&Aの主な手法は以下の手法があるので、どの方法を希望するか予め考えましょう。
「事業承継ガイドライン」をもとに、事業承継の全体の進め方・手順についてご紹介しました。事業承継では、「親族内承継」「役員・従業員承継」の場合は、後継者の選定から育成および事業承継計画の作成と実行、「M&A」の場合は、仲介機関の選定や交渉などのステップがあり、業務多忙の中ではどうしても優先順位が上がりにくいかもしれません。
しかし事業承継は、経営者自身が過去、現在、未来の経営環境を改めて振り返り考え、後継者へ大切にしてきた価値観やノウハウの共有を行え、更に様々な改革により経営を磨き上げる機会とも捉えられます。そして何より事業を存続するためにも、早い段階でまずは取引金融機関、士業等の専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。
文責:大内絵梨子(中小企業診断士)
民間食品企業で人事、働き方改革関連業務に従事。中小企業診断士取得後、ヘルスケア事業の企業を中心に経営支援を展開。
二児の母として育児と仕事と経営支援の三足のわらじを履き日々奮闘する中で得た知見を活かし、経営コンサルティングや研修講師、執筆活動を行なっている。
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