登場人物
菊池 竜也さん
・コニカミノルタ株式会社 経営企画本部IT企画部 部長
・従業員の働き方の更なる進化を牽引している
今野 史子さん
・コニカミノルタ株式会社 経営企画本部IT企画部 デリバリ・オペレーショングループ グループリーダー
・安定した社内共通基盤の提供や、セキュリティー対応を行う
桑原 諒さん
・コニカミノルタ情報システム株式会社 システム開発・サービス本部 基盤技術部 所属
・リモートワークに関連するネットワークインフラの管理と運用を担当している
鈴木 智雄さん
・コニカミノルタジャパン株式会社 DXソリューション事業部 ITS事業推進統括部 ITサービス管理部 所属
・日常的にテレワーク環境を活用している。本コラムの企画立案者。
コニカミノルタグループのITインフラ整備における3社の関係性
今回はコニカミノルタ株式会社(以下 本社)とコニカミノルタ情報システム株式会社(以下 情報システム社)、コニカミノルタジャパン株式会社(以下 ジャパン)の3社での座談会となります。今のコニカミノルタグループのテレワーク環境がとても働きやすいと感じ、この環境を整備された方々にその背景などをお聞きしていきます。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
菊池さんと私が所属している本社のIT企画部では、コニカミノルタグループのITインフラ共通基盤を提供しています。
情報システム社は、コニカミノルタグループのIT関連の設計・構築・運用を司る会社です。企画・方針・全体戦略について本社とタッグを組んで、日本全国のコニカミノルタグループ会社20社のITインフラ全体を整備しています。
ここにはもちろんジャパンも含まれていて、新しい働き方の自社実践をする上では、「本社のIT環境整備のビジョン 」と、「情報システム社の構築・運用ナレッジ&スキル 」、「ジャパンが描く働き方のビジョン 」の三位一体が必要不可欠だった と考えています。
コニカミノルタグループの働き方改革を支えたITインフラ整備の黎明期
もう当時のことを知る人は少なくなってきたと思いますが、2003年にコニカとミノルタの統合後しばらくは、ITインフラ整備といえば社内インフラが対象でした。全社IT担当者以外にも部門ごとにIT担当者が存在し、それぞれが部門ごとにサーバーを設置し、管理していました。
その過程で、部門別のNTドメイン中心から、全社共有のファイルサーバーの利用などを通じてAD(Active Directory)中心に移行したような大きな動きはありましたが、それも一般的な企業のITトレンドだったと思います。大きく変わったのは2012年のことですね。
そうです。コニカミノルタ株式会社の本社がオフィスを移転し、それと同時に多くのインフラが変わりました。およそ300名が一つのフロア内のどこに座っても良いという部門横断のフリーアドレスで、これをやるにはペーパーレス化と同時にITインフラの大きな切り替えが必要 でした。
例えば、デスク固定のIP電話を廃止し携帯電話を一人1台持つようになり、どこでも通話できる環境が整いました。また通話以外でもコミュニケーションを取れるように、Microsoft Lync(のちにSkype for Businessに改称)が導入されました。
離れた場所で業務をしているメンバーでも、Microsoft Lyncでチャットをするとすぐ返信がきました。今では当たり前かも知れませんが、当時はメールに比べて圧倒的に早いコミュニケーション に感動したことを思い出しますね。
ほかにも、パソコンはウルトラブック(薄型のノートタイプ)が推奨され、全社共通のセキュアな無線LANに接続して業務をするようになりました。個人を認証するこの無線LANは、SSID非表示かつ期限付きの証明書を採用することでセキュリティーを高めていましたね。
そして、各拠点に無線LANが普及したことで、出張の際にノートパソコンだけ持って行けば業務ができるようになりました。以前は各拠点にあるIPアドレス貸出帳を確認して有線LANで接続していたので、その工数が減りネットワークへの接続が簡単になりました。
実感いただいたように、デバイスだけでなくソフトウェアやネットワーク通信などをトータルでの最適化 を通じて、固定席での働き方からフリーアドレスの働き方へ移行していくことを目指し、改善を重ねていきました。
会議室の利用はTeams導入でどう変わった?
Microsoft Teamsを導入する前までは、離れた拠点同士の会議はテレビ会議システムが使われていました。各拠点の会議室に大型モニターが設置されており、IPアドレスで接続するシステムです。しかし従業員数に比べて会議室が少なかったため、予約で埋まっており利用できないケースがありました。
Microsoft Teamsは、パソコンとネットワークがあれば会議ができるため導入しました。初めのうちは認知されていなかったり使い方が分からないために広がり方はゆっくりでしたが、半年もしないうちに操作にも慣れて会議の主流になりました。気付いたら従来のテレビ会議システムがあまり使われなくなっていましたね。
そうですね。このMicrosoft Teamsの導入と従業員への浸透により、会議室の予約をせずとも遠隔地の従業員と会議を開催することができるようになりました。
Microsoft Teamsを国内のコニカミノルタグループ全社に導入した時には、IT企画部門が各拠点の従業員向けに基本的な使い方や応用編などを説明するハンズオンセミナーを開催 しました。
テレワーク先行的試行から対応環境整備の時代
ITインフラが整備されるにつれ、出社をしなくても働ける環境ができてきました。そこで、コニカミノルタ株式会社の本社勤務の従業員を対象に在宅勤務の試行が始まりましたね。
まだ大人数での一斉テレワークが想定されていない時期だったので、まずは少人数の協力者かつ短期間の試みでした。
日中に自宅に居るのは休日という感覚が体に染みついていたので、平日に自宅で会社のパソコンを開いてメールやチャットを使って業務をすること自体に、非日常感、ドキドキ感がありました。
在宅勤務を始めた段階では、VPN接続が必須でした。というのも、ファイルは社内のファイルサーバーに格納して共有するルールがあり、メールも社内ネットワークの環境でなければ確認できなかったためです。
そこで、社内ネットワーク環境でなくともファイルやメールの確認を行えるように、クラウドストレージサービスの
Box やクラウド型メールシステムの
Exchange Online などを導入しました。業務で使われるアプリケーションを徐々にSaaS化していったことで、VPN接続が不要なケースが増えていきました。
この変更は従業員にも即座に体感できるメリットがありました。1GBで容量がいっぱいになっていたメールボックスが、Exchange Onlineの導入で100倍の容量になったんですよね。
導入前は週に2・3回はメールボックスの残量警告を受け取って、受信トレイのメールをローカルへ移動したり削除するという作業をしていましたね。この作業の工数も考慮するとExchange Onlineはコストパフォーマンスもよく、当面の課題も解決できるということで導入を決めました。
こうした試行を経てテレワークの対象者を増やしていき、新しい働き方が従業員に浸透していきました。
コロナ禍の前後で表面化したVPNライセンス数とアクセス集中の問題
2019年から、東京オリンピック開催に伴う交通制限に備えてテレワーク導入の準備を進めていました。そのため新型コロナウイルス感染症拡大による想定外の出社制限にも対応することができました。
ほとんど全員がテレワークになったので、賑わっていたオフィスががらんとしましたね。コミュニケーションはというと、コロナ前よりも部門を越えて協力する機会が増えた 記憶があります。
そう言えば、コロナ禍の大きな環境変化の中でビジネスをどのように継続、発展させるかというテーマのタスクフォースが立ち上がり、コニカミノルタグループの様々な人達がオンラインで集まって短期間で検討を進めたという取り組みもありましたね。
元々モバイルパソコン、携帯電話、クラウド環境の社内システムなどは整っていたので、インフラ面でテレワークの壁は無かったように思えますが、アクセス者が急増したことで、ITインフラ整備を担当していた今野さんや桑原さんは色々な課題があったようです。
テレワークの準備がないままコロナ禍に突入していたら、大変なことになっていた と思います。コロナ前のことですが、近畿地方に大型台風が上陸し、緊急で一斉テレワークを実施したことがありました。その時、VPN接続がパンク状態となりました。
当時、VPNソリューションの同時接続が可能なライセンスは1,000ユーザー分確保されていました。これは、国内のコニカミノルタグループ会社全従業員の1割程度にあたります。そのため一斉テレワークを実施するには不足しており、一部の従業員がアクセスできない状況となりました。
この状況を改善するために、緊急時のVPN接続に対応できる「緊急ライセンス」を追加購入しました。
その後のコロナ禍で、1日あたり平均約3,500ユーザーがアクセスするようになり、通常ライセンスを7,500ユーザー分まで拡大しました。
VPN接続以外のもう一つの大きな問題は、アクセス集中 でした。従業員に配布しているパソコンは、社内に複数あるプロキシサーバーのいずれかを介してWebサイトにアクセスするようになっていました。そのパソコンを社外で利用することになり、往路・復路で全ての通信が特定のプロキシサーバーに集中 するようになったのです。
その解決策として導入したのがクラウドプロキシです。全従業員の社内外アクセス先や通信量を分析調査した結果、多くの通信がMicrosoft 365へのアクセスだということが分かったためです。
クラウドプロキシへの置き換えと、特定のサービスへの通信はどこをパスさせるのかなど、通信品質、運用コスト、セキュリティー全ての面で成立するように構築 していきました。
インフラ担当者は、課題が生じた時に早急な対応を求められますが、解決すると何事も無かったように日常に戻ります。皆さんのご尽力あってこそのインフラだということを、声を大にして言いたいです。縁の下の力持ちですね。
これからの働き方を支えるインフラ整備
コニカミノルタジャパン株式会社の浜松町本社オフィスも元々固定席でしたが、同じ時期にフリーアドレスを導入していました。その後テレワークでも快適に働ける環境が整えられたことで、今ではABWという働き方を自由に選べるオフィスになっています。これまでのお話で、このオフィス改革にはITインフラ環境の整備が背景にあった ことが分かりました。
デスクトップパソコンからモバイルパソコンへ移行したり、業務効率向上のためにSaaSを導入したり。セキュリティーを担保しつつ従業員の積極的な活用を推進することで、働き方改革を進めていたんですね。
はい。それは決して本社だけで進めたのではなく、本社と情報システム社が連携を密に行っていたことで、スピーディーに進めることができたのだと思います。
会社としては別会社でも、お互いに目指すものが共通しています。目先の問題だけに翻弄されない、長期的で裏付けのあるIT戦略が共有されていた から、様々な課題を一緒に乗り越えることができた のだと思います。
皆さん、本日はありがとうございました。コニカミノルタグループのITインフラを支える皆さんの努力が、今の働きやすさを実現しているのだと改めて感じました。また、新しい働き方の自社実践をコニカミノルタジャパンができているのは、菊池さん、今野さん、桑原さんのようなITインフラ担当の方々が多様な視点を持って一つずつ最適化したためであると思います。課題を洗い出して根本から解決する。ビジネスの基本ですが決して容易ではなく、あらゆる視点で俯瞰するために協力して取り組むことで、新しい価値を創造できるという事例でした。
コニカミノルタジャパンでは、テレワーク実現ソリューションに留まらず、様々なお客様のIT環境構築の施工事例があります。以下のページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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