RPAとは「Robotic Process Automation・ロボティック・プロセス・オートメーション」の略。デスクワーク作業をソフトウェアのロボットに代行させる概念を指します。RPAの基本的な仕組みは、業務の処理手順をパソコン画面上でロボットに覚えさせ、必要な時に覚えさせたことを実行します。ブラウザやクラウドなど様々なアプリケーションを横断し、自動的に業務を遂行してくれます。
RPAの最大のメリットは、労働時間の削減が期待できる点です。労働力不足が叫ばれる日本では、RPAの浸透が人手不足解決の糸口になると期待されています。株式会社矢野経済研究所の調査によれば2017年のRPA市場規模は31億円。それが2021年には3倍以上の100億円規模にまで成長すると予想されています。
RPAでは特に「ホワイトカラーの業務」を代行・自動化することが可能です。自動化できる作業内容としては、繰り返し入力やデータ照合、データ出力などが挙げられます。基本的にRPA自身が思考・判断することはできません。あくまで登録した作業手順を再現するのがメインです。
ただ、RPAツールの中にはAIを搭載しているものや複数のロボットを同時に稼働させるものもあり、その場合はより高度な作業を自動化することができます。
続いて、コニカミノルタジャパンの導入支援サービスを例に、RPA導入プロセスを見ていきます。
RPAの導入を検討する際には、はじめに「RPAを活用する目的」を明確にすることが大切です。導入目的に加えて、KPIや目標なども定めます。この際、ツールを実際に利用する現場の意見にも耳を傾けながら、目的設定・ルール構築を進めましょう。
自動化する業務を洗い出す作業は、RPA導入プロセスの中で最も重要といっても過言ではありません。「どの部署のどの作業を代行させるのか」を決定するには、各部署で行っている作業の棚卸しが有効です。
棚卸しによって、今まで無意識的に行っていた作業や、問題意識が特になかった作業などを可視化でき、改善すべき業務がどれなのかが見えやすくなります。
導入検討ステップにおける業務の洗い出しは、あまり時間をかけずに進めましょう。この後にある「Step1.トライアル」でロボットに業務を教え込む作業と並行して行うこともできます。
RPAの目的、自動化させる作業がある程度固まったら、実際に導入するツールを選定していきます。RPAツールには「クライアント型(デスクトップ型)RPA」「サーバー型RPA」「クラウド型RPA」など、いくつかの種類があります。
クライアント型(デスクトップ型)はPC内にソフトフェアを導入し、特定のパソコンで行っている作業を自動化するタイプのRPAです。別名「RDA(Desktop Automation)」とも呼ばれ、個人作業の自動化に適したツールです。WinActor が代表的なソフトウェアです。
サーバー型はロボットがサーバー内で作動し、業務を横断的に管理・自動化できます。業務の自動化に適したツールで、Automation Anywhere が代表的なソフトウェアです。1台のパソコンに対して複数のロボットを稼働させることも可能です。大規模展開(スケール化)ができる一方で、導入コストは高くなります。ですが、各自のPCにソフトのインストールをしなくてもサーバーにアクセスすることでロボットの開発や稼働させることが可能なため、テレワークでも利用できることや、複数人で一つのロボットを開発する際には有効な手段です。
クラウド型はクラウド上にあるロボットを使って作業を自動化するRPAです。RPA as a Serivice(RPAaaS)と呼ばれるRPAの実行環境をまるごと提供するライセンス体系のものを指しています。業界初のクラウド型RPAが Automation Anywhere と言われています。自動化できる作業範囲が限定的だったり、動作スピードが通信状況に依存してしまうことはデメリットですが、サーバーの準備が必要ないため初期コストを比較的安価に抑え、サーバー保守等の運用コストも削減できることはメリットです。
RPA導入の成功のカギは、いきなり複数の部署で導入したり、複雑で大規模な作業を自動化したりするのではなく、「小さく始める」ことです。そのためには、まず基礎的な内容の作業(ルーティーンのデータ入力作業など)をロボットに代行させてみます。
ここでロボットに業務を教え込む内容を示すリストを作成します。最初は専門知識を持った人のアドバイスを得ながら作成するのが良いでしょう。リストを作成したらロボットにリストを登録し、実際に動かしてみます。このトライアルは一定期間設けて、その後の検証材料とします。
PoCとは「Proof of Concept」の略で、日本語では「概念検証」と呼ばれます。RPA導入によって期待される目標、例えば「業務時間を20%短縮し、そのコストはいくら以下である」などを設定し、トライアル結果を評価・検証するステップのことを指します。
トライアル中、実際どのぐらい業務時間を削減できたのか、エラーはどの程度発生したのか、代行させる作業は適正か、など実際に運用してみた結果をレビューします。効果が見られるのであればそのまま拡大し、そうでなければ運用ルールを再考し、改めてトライアルを実施するといいでしょう。
トライアル導入実施後は効果測定をしてみましょう。一定の効果を得ることができたら、正式にRPAを導入します。
本格導入後、想定通りの成果が得られたら、ロボットを横展開し、自動化させる作業の拡大を進めていきます。将来的には、RPAの内製化も視野に入れましょう。外注体制よりもフレキシブルな対応が可能となり、自社に合ったRPA環境の構築につながります。
コニカミノルタジャパンでは2017年よりRPAの取り組みを開始し、RPAを “Digital Workforce(ロボット社員)” の手と捉え、様々な部署で「作業じかん」を削減し「いいじかん設計」を実践しています。ここで最新の自社実践事例をご紹介します。
コニカミノルタジャパンにとって3月は年間で一番の繁忙期ですが、2020年の3月は新型コロナウイルスの影響もあり、海外からの複合機の部品が予定通り入荷しないという事態に。
在庫調整のため、物流スタッフが1件ずつ在庫を引き当てながらシステムに入力する突発業務が発生しました。在庫引き当ては一日あたり400件、処理時間にして一日あたり12時間にもおよぶ「作業じかん」でした。
そこで、受注システムから受注データを抽出し、在庫調整リストとデータを突合する処理をRPAで自動化することを試みました。対応すべきオーダーをRPAで確認、整理し、その結果をもとに物流スタッフが優先順位を立て、処理を進める、人とロボットが協働する仕組みを構築しました。
RPAで業務を自動化した結果、手作業で一日あたり12時間かかっていた処理時間を85%削減することに成功!年間2,460時間の「作業じかん」の削減となりました。無事年度内に処理を終えることができ、お客様や会社の会計への影響も最小限に抑え、多方面で「いいじかん」を設計することができました。
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先の項目にも述べたように、RPAを利用する際は業務を細かく洗い出し、手順をロボットに教え込み、確実にロボットが業務を処理できるようトライアルや効果検証を重ねなければなりません。ですがこれまでの社内実践やお客様事例などのノウハウから、今回、ロボットの作成にかかった期間は、物流担当者のヒアリングや開発・トライアルも含めて約10日間という早さで実施することができました。
多くの企業が業務効率化を求めてRPAの導入を進めていますが、まだまだ試行錯誤をしており、導入を諦めてしまうケースもあります。RPAの展開は、「RPAは手段であり、目的とならないようコントロール」することが肝要で、どの業務でどのように活用するのかをしっかりと考えることが大切です。
また、ロボットに業務を教え込む前に、そもそも自動化を検討している業務が「人」「ロボット」「社内」「外部の協力会社」のどのリソースを使用することが最も効率的なのか、を改めて検討することをおすすめします。
仕事は適材適所で実施すること一つのリソースに絞らなければいけないわけではなく、合わせて利用することも一手です。先ほどご紹介した事例も、すべてをロボットに実行させたわけではなく、人とロボットが協働することで業務を効率化できた一例です。
どのリソースで業務を行うことがもっとも効率的か、最初は判断に困ることも多いでしょう。RPAの導入を成功させるためには、専門知識を持った人にアドバイスや支援をしてもらいながら進めることが望ましいと考えます。
コニカミノルタジャパンではRPAの導入や業務効率化の支援を行っております。お客様の状況に応じて様々なプランをご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
RPAはその業務効率改善効果から、今後も導入する企業が増え、技術的な進歩が進めば、AIや他のソフトウェアとの連携もスムーズになり、より複雑な作業も自動化できるようになるでしょう。
RPAは導入すればいきなり業務効率化される「夢のツール」ではなく、既存業務の棚卸しや適用業務の切り分けを経て、段階的に導入するステップが必要です。自社実践を経てRPAの導入・運用ノウハウを持つコニカミノルタジャパンに、お気軽にご相談ください。
中小企業でのRPAをはじめとした業務自動化ツールを導入した事例をいいじかん設計動画カタログでご紹介中です。こちらもあわせてご覧ください。
いいじかん設計 編集部
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