納品まで2ヶ月かかるナンバリング伝票を1ヶ月で納品。
印刷事業は未経験だったが、バリアブル印刷ツールにSaaSを導入した理由とは

株式会社ヒィズ大阪
(株式会社ヒィズ大阪 写真右から 代表取締役 吉田 節子様、アシスタント 松本 真雪様、スタッフ 澤田 舞様)

企業プロフィール

企業名

株式会社ヒィズ大阪

所在地

大阪府大阪市東住吉区桑津4-13-11

従業員数

3名

先代社長から引き継いだ大阪の事務所。地元企業のニーズを掘り起こし、強みのデザイン力と提案力で印刷事業をスタート

株式会社ヒィズ大阪 吉田 節子さん

「大阪・桑津の事務所は、先代社長である父から譲り受けました。先代の頃は、いわゆる“町の印刷屋さん”でして、長年お付き合いいただいている地元企業のお客様からの依頼を受け、名刺や伝票、領収書などを印刷、納品するという事業内容でした。

昔からのお客様からのご依頼は引き続きお受けしつつ、私が事業継承してからはデザイン力とお客様への提案力を新たな強みとしています。例えば先日も、名刺をご依頼いただいた不動産業を営むお客様のオフィスへお伺いしたところ、『名刺以外で、販促のために必要な印刷物がイメージできない』とのお悩みをお伺いしました。そこで契約時の資料などをとりまとめ、お渡しできるクリアファイルのような封筒があれば、便利かつ好印象を与えられるのではとご提案させていただき、その後納品させていただきました。他にも、地元お菓子メーカーさんからパッケージのリニューアルのデザインをご依頼いただき取り組んでおります。
ネット印刷が普及した昨今、私たちのような企業が生き残っていくには、お客様のニーズを的確に掘り起こし、より魅力的なデザインをご提供することが求められるのではないでしょうか」(吉田氏)

桑津の事務所には、複写機や複合機といった印刷現場に必要不可欠な機器やソフトウェアが揃っており、引き続き得意先企業からのご依頼に応えることができた。印刷する情報を変化させながら大量の枚数を印刷することができる「バリアブル印刷」を知ったのも、先代から事業を引き継いだタイミングだったという。

以前導入していたバリアブルソフトはバグやエラーが多発し、大量の廃棄が。サポートも終了で途方に暮れていた

バリアブル印刷による印刷物の発注についても、先代から引き継ぐ形で長年お付き合いがあった販売会社からのご相談からスタートした。納品する印刷物は公的機関へのデータ管理用の伝票で、納期はデータ作成を含めて2ヶ月ほど。3枚複写の20万組というボリューム、そしてデータ管理番号と紐付けるナンバリングが一つひとつ変化するという依頼内容だった。

事業継承まではバリアブル印刷はもちろん、印刷事業すら未経験だった吉田氏が当時抱えていた課題を振り返った。

先代の頃から導入していたバリアブルソフトは、データをPCから複合機へ転送するだけで1時間かかったり、バグの問題でデータ生成が上手くできなかったりと、さまざまな不満を抱えていました。あまりにもバグが多かったのでソフトウェアを何度もインストールし直したのですが効果はなく、データ生成中にフリーズしないよう『頑張れ、頑張れ』と神頼みするほどです。

株式会社ヒィズ大阪 松本 真雪さん

新しいツールの導入を決意したのは、ソフトウェアを提供していた企業からの対応がきっかけでした。バグやフリーズの報告と対応方法を相談しても電話口の方からは『2020年12月にサポートを終了しているので、ご自身でマニュアルを読んでください』との返答しか得られず……。当時、途方に暮れてしまったことを覚えています。
また、私が事業継承した時期はソフトウェア上で柔軟にデザインを変更できなかったために、印刷した紙全体の1/3もの廃棄が発生していたことも課題のひとつでした」(吉田氏)

すでに導入していたバリアブルソフトの販売、サポートがすでに終了していたこと、バグやエラーが多く発生していたために業務に悪影響がでていたこと、それによって大量の廃棄が発生していたことを課題と感じ、同社では新しいバリアブルソフトの導入と将来的な印刷機のリニューアルを進めることを決定した。

導入の決め手はクラウド型、MacOS対応、そして操作性。高額に感じた月額料金でも納得できた背景とは

株式会社ヒィズ大阪 吉田 節子さん

同社を事業継承する以前、吉田氏はWeb制作やイベント企画、グラフィックデザインなどを手掛けていたこともあり、新しく導入するバリアブルソフトは「クラウド型」であること、デザイン制作ソフトウェアとの親和性が高いMacOSに対応していることを条件としていたと、吉田氏は当時の比較検討について振り返る。

「オンプレミス型のソフトウェアの場合、バージョンアップのたびにユーザー側に手間が発生します。しかしクラウド型のソフトウェア、つまりSaaSであればソフトウェア側でアップデートしてくれるため、常に最新の状態で快適にサービス利用ができる点が大きなメリットですね。

また、MacOSはデザイン制作ソフトウェアを快適に操作できるだけでなく、頻繁に最新版がリリースされることもポイントです。そのため、導入するSaaSにはMacOSに対応していることを求めていました。ただ、バリアブルソフトはさまざまな企業がリリースしており、印刷業界未経験だった自分にはどれを選ぶべきなのか、正直なところ判断しにくかったです」(吉田氏)

そうした状況で弊社からご紹介させていただいたSaaSが、クラウド型バリアブルソリューションであるVariable Studioだ。クラウド型であるため、頻繁にアップデートが実施されること、PCへのインストールが不要で最新のブラウザがあれば動作すること、そしてMacOSに対応していることを説明させていただき、その後トライアル環境を提供させていただいた。

「トライアルでは主に操作感や、バリアブル印刷の業務がスムーズになるかどうかを確かめています。以前のソフトウェアと比べ、特にデータ生成とデータ転送があっという間で、『もうできたの……?本当に?』とびっくりしました」(吉田氏)

Variable Studioのトライアルには、同社のアシスタントである松本氏も参加している。就職以前は主にデザインを専攻し、デザイン業務に携わるのは同社が初めてだったという。

社長と同じく、私自身もバリアブル印刷は初めての経験でしたが、Variable Studioは分かりやすいツールだなと感じました。ホーム画面にバリアブル印刷に必要な機能や項目がまとまっており、そこからクリックしていけば想定していた通りの画面に移動できます。画面の読み込み速度やデータ処理もスムーズです」(松本氏)

Variable Studioの機能については高く評価いただいた一方、印刷業界にはまだ馴染みが薄いサブスクリプションモデルの料金形態と費用面については正直悩んだと、苦笑いしながら吉田氏は口を開いた。

「私たちのような小規模な印刷会社にとって、年間で合計36万円のサブスクリプションは大きな負担です。バリアブル印刷の案件が発生しない月は一時的に解約できればと思いましたが、それだとソフトウェア内のデータが保存できません。

ただ、ありがたいことにバリアブル印刷のご相談は今後もお客様からいただけそうだということ、バリアブル印刷への対応が可能で実績があることは地域の印刷会社さんとの競合優位性の観点からみても有効だと思えたこと、そして『ソフトウェア費用を軽く回収できるくらい案件をこなせばいいだけ』と考えたことが決め手となり、Variable Studioの導入を決定しました」(吉田氏)

3枚複写で年間80万組のナンバリング伝票を印刷。厳しい納品チェックをクリアし、社内のツール浸透も実現

トライアル期間を経ての正式採用だったことでVariable Studioの導入はスムーズに進行し、現在は3ヶ月に1度の頻度で公的機関へのデータ管理用の伝票や、ナンバリングされた領収書のバリアブル印刷を受託していると吉田氏は話す。現在のVariable Studioの活用状況について、引き続きお話を伺った。

「Variable Studioの活用では、コニカミノルタジャパン社の担当の方から丁寧なサポートをいただくことができました。データ制作の方法といったバリアブル印刷の設定や操作方法だけでなく、そもそも印刷事業に関する質問でも、メールで丁寧に教えていただけました。

ナンバリングされた領収書のバリアブル印刷は1ヶ月におよそ1社で、だいたい50枚組100冊の5,000枚を納品しています。公的機関へのデータ管理用の伝票は需要によって多少の前後はありますが、だいたい3ヶ月に1度、つまり年間3枚複写でおよそ80万組を印刷する計算です。
公的機関へのデータ管理用の伝票は、安全対策に取り組む一般社団法人や地元の行政機関からチェックをいただく必要があります。Variable Studioで印刷した伝票の試作品は無事にチェックを通過し、お客様である販売会社様に無事納品しています」(吉田氏)

株式会社ヒィズ大阪 吉田 節子さん

導入当初は社長自身でVariable Studioを操作していたが、現在はアシスタントの松本氏、スタッフの澤田氏が中心となってバリアブル印刷の業務を担っている。

以前のソフトウェアと比べて断然効率がよくなりました。私自身、1回教えられただけでだいたいの操作方法を理解できています。もし明日、新しいスタッフが入社したとしても、1日もあればVariable Studioの操作方法を教えられるはずです」(澤田氏)

データ作成、転送などの効率化で、2ヶ月かかる納品が1ヶ月に!PC上の事前確認で印刷ミスがなくなり、紙の廃棄もゼロに

株式会社ヒィズ大阪の皆さん

Variable Studioの導入によって、公的機関へのデータ管理用の伝票や領収書といったお客様からの要望に対して無事に応えることができた同社。今回の取り組みを総括し、Variable Studioの導入でどのような成果が得られたのだろうか。

「バリアブル印刷に必要なデータを確実に作成できるようになり、所要時間も圧倒的に短くなりました。以前はそもそもフリーズ等で作成できないことがあったり、データ転送だけで1時間以上もかかっていたりと問題だらけで、発注から納品まで2ヶ月は必要でした。しかし、Variable Studioを導入した現在では1ヶ月程度に短縮できています。

バリアブル印刷の操作に関する変化として、MacOSのPC上でデータ作成から転送まですべて完結するようになり、印刷機の前に立って無事にデータ転送されるか待つことがなくなりました。
また、オンプレミス型のソフトウェアはインストールされたPCでしか操作できませんが、クラウド型のVariable Studioであれば誰のPCでも作業ができます。実際、私たち3人のなかで手が空いている人がバリアブル印刷の作業をしています」(吉田氏)

「オンラインデザイン機能でバリアブル印刷のデータを印刷前にプレビューできるのは便利です。特に伝票は公的機関にもチェックいただくほど厳格なものなので、ミスは許されません。印刷前にPC画面上でナンバリングにミスがないか確認できることで印刷時のトラブルをなくすことができ、以前の課題でもあった紙の廃棄もなくなりました」(松本氏)

Variable Studioの導入で変化があったのは印刷現場だけではない。データの作成が簡単になったことで余裕が生まれ、10年以上もお客様側から寄せられていた要望に応えることができたと吉田氏は話す。

「以前のソフトウェアは仕様上、4丁付でしか印刷ができず、管理番号ごとに仕分けする手間が発生していました。しかしVariable Studioの導入で1丁付で印刷し、伝票にはあらかじめ管理番号ごとに対応するエクセルデータを作りナンバリングを印刷できるようになったのです。これによってお客様側の負担は大きく減り、とても感謝いただけました」(吉田氏)

クオリティー向上のため、新しい印刷機AccurioPress C4080を導入。今後もバリアブル印刷に取り組む意義とは

Variable Studioの導入が無事に完了し、さらなるクオリティー向上のために印刷機のリニューアルも実施されAccurioPress C4080を新たに採用いただいている。

「以前のカラー機では、私のイメージ通りの印刷ができないケースが多々ありました。例えば封筒といった厚紙の印刷ができなかったり、色や印刷箇所が不安定だったりと、他社に外注しようかと検討するほどでした。
Variable Studioによるバリアブル印刷の体制が整ったことで引き続きコニカミノルタジャパンの担当の方にご相談し、ご紹介いただいたのがAccurioPress C4080です。まだ導入したばかりですが、新商品の企画やデザインを含め、今後の印刷が楽しみですね」(吉田氏)

取材の最後に、今回の取り組みを振り返って感じられたVariable Studioの価値とバリアブル印刷に関する展望をお聞きしました。

株式会社ヒィズ大阪 吉田 節子さん AccurioPress C4080

バリアブル印刷については多くの方にアドバイスをいただきましたが、今は請け負う印刷会社さんが大阪では少なくなっているそうです。そのため、外注したくてもできずに困っているお客様は今後ますます増えていくものだと考えています。

だからこそ、私たちがVariable Studioでバリアブル印刷に取り組んでいくことには意義がありますし、少しでもお客様の課題解決のお力になれれば良いですね」(吉田氏)