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2021年3月16日

オフセット印刷とデジタル印刷を併用したハイブリッド運用

スマートフォンやタブレット端末の普及による出版物減少などの背景もあり、印刷会社は小ロット・短納期や印刷物の多様化などに対応する必要が出てきました。デジタル化が進むなか、バリアブル印刷によるパーソナライズドDMを活用したり、小ロット印刷により顧客接点を増やすなど、差別化を図って業績を上げる会社も出てきています。現在、デジタル印刷機の導入を検討中の方もいるのではないでしょうか。

しかし、オフセット印刷とデジタル印刷が並存する現状においては、どこからデジタル化に着手すればよいのか判断が難しい面があります。また、印刷品質や後加工のしやすさなどから、単純にオフセット印刷から置き換えられないケースも多いです。

そこでこの記事では、デジタル印刷機やオフセット印刷機のメリット、両機の併用によるハイブリッド運用のポイントについてご紹介します。

国内印刷市場の状況

矢野経済研究所の調査によると、国内の一般印刷市場規模の推移はなだらかな減少を続けています。2020年の市場規模も前年比92.9%を見込んでおり、依然として印刷量全体で縮小傾向です。

2020年~2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響によってより厳しい結果となるかもしれません。1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月~5月では、大手印刷会社における単月売上高は30%~50%減となりました。2回目の緊急事態宣言の影響、そして今後のコロナ禍の推移によっては、市場予測が変わる可能性があります。

こうした縮小傾向のなか、デジタル印刷の市場規模がここ数年微増を続けていることは注目に値するでしょう。矢野経済研究所の分析では、とりわけPOD(プリントオンデマンド)市場が前年度よりも高い成長率を達成していることが、注目トピックとして述べられています。

一部の印刷企業においては、ユーザーごとに個別化した情報を掲載したパーソナライズドDMによって実績を上げる事例も出てきました。その背景としては、デジタルマーケティングの進化が挙げられます。ECサイトなどで運用しているレコメンドエンジン(特定のルールでユーザーにおすすめの商品やコンテンツを提示するシステム)を紙のDMに転用することは比較的容易です。手に取って閲覧できる紙媒体の良さがここに来て改めて見直され、需要の増加が見込まれています。

企業全体の売上げに占めるデジタル印刷の割合はどのように推移しているのでしょうか。

一般社団法人 日本印刷産業連合会の「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査報告書(2019年度 詳細版)」によると、デジタル印刷関連の売上高が全体の「5%~10%以下」と回答した企業が最も多く、21.8%となりました。これは前年の2018年度における9.0%と比較して倍以上の増加です。

近年では技術の進歩もあり、中小ロットは高速デジタル機で対応する流れが進みました。

オフセット印刷などの従来方式よりもデジタル印刷のほうが有利と多くの企業が評価しているのは、「オペレータを確保しやすい」ということです。自動化や省人化を実現しやすいという声も多く、労働力不足の課題を抱える企業などのニーズを満たしていることがうかがえます。「コストダウンできる」「収益性が高い(高付加価値)」という回答も前年から大幅に増加しており、収益面においても業界の認知が進んでいます。

コニカミノルタのデジタル高速機でご提案できること

コロナ禍において印刷業界を取り巻く環境も大きく変化しています。事業継続・拡大のためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)や現場における働き方改革を加速することがとても重要です。

コニカミノルタはオフセットとデジタルの併用を前提とした最適な運用や、更なるデジタル化によるビジネス拡大などをサポートしております。

ここからは、コニカミノルタのデジタル高速機でご提案できることについて、

  • 効率化
  • コスト削減
  • ビジネス拡大

の3つの観点で簡潔にご紹介いたします。詳細についてご興味がある方は、ぜひ、こちらからお問い合わせください。

効率化

オフセット印刷においては刷版や版替えの工数がかかります。一方、デジタル印刷機においてはRIP、色校後にそのまま印刷を開始できる点がメリットです。また、オフセット印刷では必要となる後加工・出荷・両面印刷などの乾燥時間も、デジタル印刷機であれば必要ありません。

コニカミノルタのAccurioPress C14000シリーズは、デジタル制御による機器調整の簡略化を実現。紙面検査やインライン処理、AIによる用紙設定の候補判定などが行えます。これらの最新テクノロジーは自動品質最適化ユニット「インテリジェントクオリティーオプティマイザー(IQ-501)」に搭載されており、1名で2台以上の同時オペレーションを実現します。繁忙期やテレワークに対応した新たな人員体制での業務などで柔軟に対応可能です。

コスト削減

デジタル印刷における大きなメリットは、製版関連や印刷物の検品などに関わる人員が少ないことです。また、さまざまな自動化技術により熟練のオペレータが必要となるケースが少ないこともポイントです。教育コストも減らしながら、品質・オペレーションの平準化も図りやすくなるでしょう。高単価の熟練オペレータから新人・パートに業務をシフトさせることで、人件費削減を行っている事例もあります。

また、オンデマンド対応により在庫廃棄ロスや倉庫保管費用を削減できるのに加えて、ヤレが少ないことから、小ロットの受注でも利益を見込めます。さまざまな自動化技術により、オフセット印刷に比べて人的ミスからのロスが発生しにくいこともデジタル印刷の特徴です。

このように、デジタル印刷機の導入によって、中間材料費(版代、処理液、廃液費など)、電気代、水道代、設置スペース費用などの総合的な経費削減が見込めます。設備導入のための工事費用も、オフセット印刷機と比較すれば低く抑えられます。コロナ禍による不透明な状況のなかで大きな設備投資リスクを避けたい場合にも、デジタル印刷機は適しているといえるでしょう。

ビジネス拡大

オンデマンドによる超短納期対応、クロスメディア戦略を行う企業向けのパーソナライズドDMの提案など、デジタル印刷によって自社ブランドの訴求力やサービスの質を向上できます。幅広く柔軟な提案力、他社にはない付加価値をアピールすることによって、受注拡大につなげられるでしょう。

近年では、PODによるネット印刷によって、従来アプローチできなかった顧客層ともダイレクトにつながる環境が整っています。フロント(受注)システムの導入や連携も比較的容易なので、短期間で受注機会の増大が図れるのはデジタル印刷ならではです。

コニカミノルタでは長年印刷業界に携わってきたノウハウを活かして、印刷会社のハードルを取り除く総合的なサービスも提供しています。たとえば、お客様による入稿から印刷管理システムへの自動展開などをシームレスに連携できるシステム導入を支援いたします。

近年はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)対応という観点から、製版工程によって生じる廃液などが問題視されるようになりました。環境保全という意味でも、事業の一定割合をデジタル印刷に移行していくことは、時流に沿った取り組みといえるでしょう。

オフセット印刷のメリット

オフセット印刷は依然として多くの印刷会社の中核設備となっています。その大きな理由としては、生産性、メディア対応、ランニングコスト、オフセットならではの色・網点再現、後加工適正などが挙げられます。

生産性に関しては、一般的なデジタル印刷機の生産性が時間当たり3,000枚~5,000枚程度であるのに対し、菊全版印刷機では時間当たり1万枚~2万枚となります。面付枚数を考慮すると10倍~20倍近い差があり、刷版・調整工程を考慮しても生産ロット数が多いジョブに関しては、依然オフセット機が適しているといえます。

紙の素材やサイズの選択肢が多いのもオフセット印刷の特徴です。紙にインクを浸透させるオフセット印刷は、紙に折れ目があるような場合でも割れ目が生じることなく刷れます。たとえば、ダンボールを始めとした厚紙への印刷では、ゴム製の凸版を用いたオフセット印刷が選ばれることが一般的です。サイズにおいてもデジタル印刷では通常A3までなのに対し、オフセット印刷ではさらに大型のサイズにも対応できます。

オフセットならではの色・網点再現については、デジタル機の進化・高画質化よりそん色がなくなったとの評価がある一方で、顧客への提案にあたり、従来のオフセット出力からの変化の説明に課題を感じるケースも聞かれます。

合紙、PP加工、ニス、抜き、頁物などの後加工の幅広さもオフセット印刷のメリットです。後加工によって差別化を図ることで安定的な受注を確保している印刷会社も少なくありません。

デジタル印刷機への置き換え目安について

オフセット印刷をデジタル印刷に置き換える際には、ロット数が重要になります。ロットサイズが小さいほど、

  • 刷版が不要
  • ヤレが少ない
  • 印刷機の調整が容易

などのデジタル印刷のメリットが大きくなります。

実際のビジネスにおいては、ロットサイズと月間PVの2軸で置き換えを検討することが妥当です。乾燥や刷版・調整等を含めた作業時間、オペレータ単価を含めたトータルコストを考慮すると、たとえば、コニカミノルタのAccurioPress C14000を用いた場合、平均ロットサイズ3,000枚まで(A3換算)までであれば(前に移動)、60万枚/月間PVまでの対応が可能であり、置き換えの一つの目安となります(※条件による)。

オフセット印刷とデジタル印刷を併用する「ハイブリッド運用」のポイントとは?

デジタル印刷は少ロット・短納期の対応が可能でオペレーションも比較的容易です。また、高付加価値印刷・差別化によるビジネス拡大が図れます。一方、オフセット印刷には印刷品質や大ロット対応に優位性があります。

ここまで紹介してきたオフセット印刷とデジタル印刷のメリット・デメリットを中心にハイブリッド運用のポイントをまとめたのが以下の表です。

ロットサイズ(生産量)
ランニングコスト
A3ノビ換算で3,000枚通しまでであればデジタル印刷が適している。
それ以上の大量印刷にはオフセット印刷が適している。
納期対応 3日以内の短納期jobであればデジタル印刷が適している。
オフセット印刷は前工程として刷版・校正、印刷後の乾燥も必要であり、短納期対応には不向き。
メディア対応 パッケージ、ポスター等面付サイズが大きいもの、ダンボール等の厚紙、継ぎ目のあるメディアにはオフセット印刷が適している。
在庫 在庫回転率(低い)、管理(場所コスト、改版頻度)に課題がある場合はデジタル印刷が適している。
運用人員 熟練オペレータが確保できない場合、デジタル印刷が適している。
デジタル機であれば、多能工/兼務(他工程、デザイナー)、パート(アルバイト)、非熟練者(新人・中途採用)、これまで印刷作業に携わる事が少なかった方々(女性など)で対応が可能。
後加工 小ロット、簡易製本レベルであればデジタルインライン印刷が適している。
帳合い等にはスキルが必要、担保できない場合はデジタル印刷が適している。
合紙、PP加工、ニス、抜き、頁物などの幅広い後加工が必要な場合はオフセットが適している。
校正刷り ジョブ単価が低く、校正刷りに手間・コストをかけられない場合はデジタル印刷が適している。
色合わせ 校正刷りとの色精度を求めるのであればデジタル印刷が適している。
工程自動化 受注・プリプレス~印刷・後加工までの完全自動化をしたいときはデジタル印刷が適している。
営業対応 受注には、納品仕様やりとり、見積書作成等の工数が発生するため、小ロットジョブ対応にはデジタル機と合わせ、デジタル受注のためのW2P等のツール(印刷窓口・通販サイトなど)も合わせて活用することで、収益性がより高くなる。
ジョブタイプ 今後確実に増加するバリアブル印刷についてはデジタル印刷が適している。
SDGs デジタル機はグリーンプリンティング認証取得商品も多く、廃水がない、在庫・ヤレ削減による廃棄物削減など環境対応によるSDGs取り組みのアピールが可能。

印刷業者によって業務効率化やコスト削減、ビジネス拡大などの課題はさまざまです。しかし、いずれの目的でもオフセット印刷とデジタル印刷のそれぞれのメリットを活かして使い分けることが重要になります。

一方で、両方の機器の稼働率を高めることも重要です。そのためにはデジタル・オフセット機の印刷物を一元管理できるワークフローシステムの運用が欠かせません。たとえば、オフセット印刷機とデジタル印刷のどちらにも出力できるワークフローシステムがあれば、適材適所で機器や人員を振り分けられるでしょう。

AccurioPress C14000シリーズならハイボリューム領域までカバーできるので、従来実現できなかった柔軟な対応が可能です。

まとめ

国内印刷市場が縮小傾向にあるなかデジタル印刷機による印刷量は微増しています。デジタル印刷によるパーソナライズドDMなどのPODによって実績を上げる印刷企業も出てきました。デジタル印刷の活用で業務効率化、コスト削減、印刷物の多様化・差別化を実現することでビジネス拡大につなげられるでしょう。

しかし、単純なオフセット置き換えでは、中核事業に影響が出かねません。顧客満足度を向上させて事業の付加価値を高めるには、オフセット印刷とデジタル印刷のメリットを正しく理解して最適運用することが重要といえます。

コニカミノルタでは、オフセット印刷とデジタル印刷の共存・並存による最適な運用を提案いたします。また今後、お客様の導入事例・運用事例などを当コラムでご紹介し、より具体的なデジタル印刷機の活用方法をご案内していく予定です。デジタル印刷機の導入やハイブリッド運用についても、ぜひ、お気軽にお問合せください。

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