株式会社小学館 様 /
日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社 様
小学館様が美術書印刷に選んだ新デジタルクオリティー
※運慶大全:B4判/上製/総ページ数392ページ/函ケース入り カラー282ページ+両観音16ページ モノクロ92ページ/別丁扉2ページ 山本勉(清泉女子大学教授)監修 定価60,000円+税
日本写真印刷コミュニケーションズ様とのコラボで、オフセット印刷を超えたリアルな画像を再現
日本を代表する出版社である株式会社小学館様。児童書・図鑑をはじめ、文芸書・文庫・新書などの一般書、美術工芸書等幅広い分野の書籍を多数出版しています。2017年に行われた運慶展に合わせて刊行された作品集、運慶大全もその一つ。この作品集の印刷は、美術印刷分野で評価の高い日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社様が担当。コニカミノルタのUVインクジェット印刷機「AccurioJet KM-1」を使用したNissha Digital Printing (NDP) によって印刷されました。リアルな画像クオリティーが大反響を呼び、現在も版を重ねるこの書籍が生まれた経緯と成果を伺いました。
導入の背景
ここ数年で高まるデジタル印刷の可能性
小学館
制作局 シニアマネージャー
速水 健司 様
日本三大出版社の一つとして、幼児・児童向けの学習雑誌をはじめ、幼児誌から一般誌まで幅広い世代を対象にした雑誌を出版している小学館様。絵本・図鑑・辞典・文芸書などの書籍のほか、アート分野にも強く、美術・工芸系のさまざまな作品集や全集も出版されています。
「近年、出版不況や活字離れが社会現象となっていますが、その中でも美術書は比較的安定しているのです」とおっしゃるのは小学館 制作局 シニアマネージャーの速水健司様。美術書というジャンルはコアなファンや固定客が多いため、コミックスや雑誌に比べて売れ行きの変動が少ないのが特徴です。「しかし美術書は、本のサイズが大きく、しかも価格が高価で、一度に大量に売れるという性格のものでもありません」とのこと。
一方、出版の減少やデジタル社会の進展などを受けて、近年デジタル印刷が注目されてきました。「私も随分前から意識にはあったのですが、美術書で使用するには印刷再現クオリティーがネックになっていました」と速水様。
「当社でも、これまでは複製画や掛け軸などでしか活用していなかったデジタル印刷の技術を、書籍でも使おうという機運が高まり体制が整ってきました」。これは日本写真印刷コミュニケーションズ様です。
小学館様が、運慶の作品集をデジタル印刷で
2017年秋、東京上野の国立博物館で、天才仏師運慶の展覧会が開催されることが決まり、この展覧会に合わせて小学館様から作品集を出そうということになりました。「運慶展には公式カタログがあるのですが、それより内容を充実させた小学館らしいクオリティーの高いものを作りたかったのです」と速水様。運慶の生涯作品をすべて掲載した本格的な作品集を出版したい。それは、大判で、高価、重量感があるものになります。「この本の企画が立ち上がったとき、私の方からデジタル印刷を採用しないかと、社内に働きかけました」。
その背景には、日本写真印刷コミュニケーションズ様と協力し、絶版になった書籍や文化財・美術品をデジタルアーカイブ化し、デジタルプリンターで出力する現在進行中のプロジェクトの存在がありました。「作成した復刻本の仕上がりをみて、これなら新刊の美術ジャンルにも使えるのでは? と考えたのです」。速水様は、運慶大全の意図をさっそく日本写真印刷コミュニケーションズ様に相談。そして提案されたのがコニカミノルタの「AccurioJet KM-1」を使用したNissha Digital Printing (NDP) による印刷でした。
導入の効果
コニカミノルタの「AccurioJet KM-1」で、運慶大全を作成
「AccurioJet KM-1」を導入後、コニカミノルタとともに出力クオリティーをブラッシュアップしてきた日本写真印刷コミュニケーションズ様。「速水さんから、運慶大全の話を聞いたとき、ついに『AccurioJet KM-1』のデビューのときが来たと思いました。我々の実績とノウハウに、この機械の性能を組み合わせて世に問えば、かなりエポックメーキングなことになるだろうと確信していました」と日本写真印刷コミュニケーションズ様。
また速水様も、「小学館が美術書で使う以上、オフセット印刷に近づく、というこれまでのデジタル印刷の考え方では満足できません。オフセットを凌駕しなければいけないと思っていました」。こうして業界でも初めてとなるデジタル印刷による美術書の印刷が実現。その仕上がりは、これまでのデジタル印刷の認識を一新する圧倒的なクオリティーでした。
オフセット印刷を遥かに超えるクオリティー、安定性を実証
「今回はデジタルファースト。オフセットの原本が存在しない印刷です。デジタル印刷のクオリティーを最大限に引き出すことを念頭に印刷しました」と日本写真印刷コミュニケーションズ様。「あまりの高画質に、これを従来のやりかたで印刷したらどうなるのかと、試しにオフセットでも印刷して比較してみました」と速水様。すると三つの点で、「AccurioJet KM-1」の優位点が明らかになりました。
まず一つ目が、金、銀など金属的な色調の再現。「従来のオフセット印刷では、金色が黄色に近い色調になってしまいます。『AccurioJet KM-1』では、仏像に施されている金箔を本来の金属的な色合いで再現しています」(速水様)。
二つ目が、オレンジや紫などの中間色の再現。「オフセット印刷は、にごりの出やすい中間色が苦手とされています。今回は、朱色などの特殊な顔料が使われている像の深い色合いもリアルに再現できました」(速水様)。
そして三つ目が、奥行き感の再現です。「オフセット印刷では立体感を出すことに苦労してきましたが、『AccurioJet KM-1』ではディテールまでしっかり表現して、奥行き感・立体感を再現できています」(速水様)。
「いままでオフセット印刷では、出せなかった色域が『AccurioJet KM-1』で上乗せされて再現できたということだと思います」(日本写真印刷コミュニケーションズ様)
さらに、色合いの安定性という点でもデジタル印刷は大きな優位点があります。「オフセット印刷では、校正刷りと本刷りで使用する印刷環境が異なるため、校正紙と本刷りの色合いに差異が生じる場合があるのです」(速水様)。このため印刷に立ち会い、色合いのズレを修正することが出版社の担当者の重要な役目になります。納得できる刷り上がりになるまで、まる一日かかることも。しかしデジタル印刷では、校正刷りも本刷りも同じ印刷機です。「校正段階にしっかり確認していて量産にかかっても色合いがブレないとわかっていたので、今回私は立ち会いに行きませんでした。これも従来の常識ではありえないことですね」と速水様。
また日本写真印刷コミュニケーションズ様も、「現在、6刷りまで版を重ねているのですが、通常はそこまでいくと最初の刷りと色を揃えるのが至難の技なんです。以前は色調整のために多くの時間とヤレ紙を使っていたのですが、今回はそれらのムダやストレスなく進めることができました。重版を依頼する速水さんの声もだんだん明るくなっていくのがよくわかりました」とのこと。
出版の成功とともに小学館様への問い合わせが続々
運慶大全は、累計で1,050部※を発行。このジャンル、この価格帯では破格の部数です。デジタル印刷は小ロットで印刷できるため、100部、50部で重版が可能。現在も版を重ねています。ほぼ受注生産に近いカタチになるため、売損じがほとんどなく「少数のお客様のニーズに応えながら、採算を確保することができています」(速水様)。※2018年3月現在
お客様の評判もさることながら、小学館様内からも、“これまでのデジタルへの認識が大きく変わった” “これはこれからもどんどん活用していくべき”などの声が出て、第2弾、第3弾の企画がすでに立ち上がっています。
運慶大全の成功は、出版業界にも大きな反響を呼び、速水様のもとには数多くの問い合わせが来ています。「小学館としても、デジタル印刷の重要な企画を世に送り出したパイオニアとして、業界内外に多くの話題を提供できたのではないでしょうか」と速水様。「小学館様とともに、デジタル印刷の新たな可能性を世に問うことができたと思います。我々にとっても、歴史を刻む1冊を生み出せたと自負しています」と日本写真印刷コミュニケーションズ様。
「AccurioJet KM-1」による印刷は、微妙な陰影までしっかりと表現し、仏像の立体感を再現しています。また、オフセット印刷が苦手としている金箔の色や、朱色なども本来の色合いで鮮やかに再現します。
今後の展開
デジタル印刷の可能性を他の出版ジャンルでも
「デジタル印刷が今後、ますます増えていくことは間違いないと思います」と速水様。必要なときに、必要なものを、必要な分だけ印刷したいという時代のニーズに、デジタル印刷機は欠かせないツールです。「そこで出版する側として大切なのは、何の目的で、何のためにデジタル印刷を活用するのかを明確にすることです」(速水様)。「コストなのか、品質なのか、スピードなのか、訴求点をはっきりさせて、お客様のニーズに合わせた提供をすることが重要です」(日本写真印刷コミュニケーションズ様)。そのためには、作る側がデジタル印刷に対して、しっかりした知見と指針、考え方を持つことが必要とのことです。
「これからは、美術書はもちろん、他のジャンルにも汎用性を広げて、5年のスパンで、今度はデジタル印刷全体の普及を考えていきたいと思います」と速水様。「AccurioJet KM-1」による運慶大全の印刷をベースに、デジタル印刷のさらなる浸透・普及を目指す小学館様と日本写真印刷コミュニケーションズ様にインタビューしました。
お客様プロフィール
株式会社小学館
住所 | 東京都千代田区一ツ橋2-3-1 |
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設立年 | 1922年8月 |
従業員数 | 711名(2018年3月現在) |
事業内容 | 雑誌、コミックス、書籍、デジタルメディア、配信事業等 |
ホームページ | |
概要 | 1922年に創業し、小学生を対象とした学年別学習雑誌を発行する教育専門出版社としてスタート。現在、雑誌部門では児童学習誌・コミック誌・ライフスタイル誌・週刊誌・ファッション誌・教育誌など年間50 誌あまりを、書籍部門では絵本・図鑑・辞書・百科事典・文芸単行本・文庫・新書など、年間700タイトル以上の新刊を発行する総合出版社として活動している。 |
取材 | 2018年3月 |
日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社
住所 | 東京支社/東京都品川区大崎2-11-1 大崎ウィズタワー22階 |
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設立年 | 2015年4月 |
従業員数 | 173名 グループ303名(2016年4月現在) |
事業内容 | 出版印刷および商業印刷などの製品、ならびにサービスの企画、開発、生産ならびに販売 |
ホームページ | |
概要 | マーケティング×IT×ものづくりの強みを掛け合わせて、お客様企業のマーケティング戦略や広告宣伝、販売促進におけるコミュニケーション戦略全般をサポートする。商業・出版印刷物、クリエイティブデザイン、セールスプロモーション施策、Webソリューション、文化財のデジタルアーカイブなど、さまざまな製品・サービスの提供をトータルに行うことで、お客様価値を創出する。 |
取材 | 2018年3月 |
記載されている情報は取材時のものであり、閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
- 当事例内の所属部署名、役職は取材当時にて記載したものです。
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