2018年6月29日に成立した働き方改革関連法の主な内容は、残業削減と同一労働同一賃金です。特に残業に関しては厳しくなり、今回の法改正で上限を超えた場合に罰則が適用されることとなり、大企業は2019年4月から中小企業は2020年から実施されます。
多くの企業にとって、待ったなしで残業対策を行わなければならないことは、頭の痛い問題でしょう。そこで、今回その対策に活用できる補助金、助成金についてご紹介します。
なお、補助金は主に経済産業省が管轄で審査に通過しなければいけませんが、厚生労働省の管轄の助成金は、支給要件を満たしていれば受け取ることができます。
残業を削減したいが、人手不足から無理だとあきらめている企業も多いのが現状です。人手が足りないのであればITを上手に活用するしかありません。そしてこの活用に経済産業省の「IT導入補助金」が利用できるのです。
「IT導入補助金」は中小企業・小規模事業者における生産性の向上、業務の効率化等にソフトウェア、サービス等(「ITツール」と言います)を導入する際に、経費の一部を国から補助してもらう制度です。
事前にIT導入支援事業者によって登録されたITツールの中から、自社に合ったツールを選択すると、IT支援事業者が申請や報告等のさまざまな手続きを代行してくれます。このIT導入支援事業者はこの事業に登録された専門事業者ですので安心です。
補助金は実際にかかった対象経費の1/2以内で、補助金上限額は50万円、下限額は15万円です。
対象経費としてはソフトウェア、クラウド利用費等サービス導入関連経費であり、ハードウェアは対象外となります。例えば100万円のITツールを選んで導入した場合、50万円の補助金が受け取れます。
補助金は一般的に審査が厳しく二の足を踏むことも多いと思います。コニカミノルタジャパンでは補助金に関する不安を払拭できるよう、専門家(社労士)に補助金に関する相談ができるサービスを提供しています。詳しくはこちらの記事で紹介しておりますので、ご覧ください。
残業時間削減の対策を講じると貰える助成金があります。労働時間の設定改善を支援するための助成金で「時間外労働等改善助成金」の「時間外労働上限設定コース」です。
「時間外労働上限設定コース」は、時間外労働の上限設定を行うことを目的として、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器等の導入を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。
対象は、36協定を締結している中小企業事業主で時間外労働および休日労働を複数月行った労働者がいることです。支給対象となる取り組みは下記となります。
この10項目のうち1つ以上実施し、目標(平成30年度または平成31年度に、有効な36協定の延長する労働時間を短縮する)を達成した場合に助成金が支給されます。助成金額は、1企業当たり上限200万円で、対象となる経費の合計額の3/4です。
専門家のコンサルティングや労務管理用ソフトウェアの導入や更新が助成金を活用して行うことができるので、残業削減に大いに効果が期待できます。
補助金や助成金は、国が費用を負担していますが、自治体でも独自に助成金を支給しています。
例えば、東京都は「働き方改革宣言企業」制度を設けて「働き方改革宣言奨励金」や「働き方改革助成金」を設定しました。働き方改革宣言奨励金は、最大70万円、働き方改革助成金は最大40万円支給されます。
また、東京都には「テレワーク活用・働く女性応援助成金」もあります。男女とも勤務時間や勤務場所を固定しないで働けるテレワーク環境の整備を考えている企業に、費用の一部を支給する内容です。
上記は東京都の一例ですが、各自治体はそれぞれ働き方改革に関連して様々な事業を行っています。「働き方改革=ワーク・ライフ・バランス」ですのでどちらかのワードで検索をして最新の情報をチェックしてみてください。
働き方改革に関連する補助金・助成金は、まだまだあります。特に厚生労働省管轄の助成金は、補助金のようにさまざまな申請書類等の提出が事前に求められる煩雑さがなく、内容を支給要件に当てはまるように実施すれば、専門家の手を借りる必要もありません。
新年度である4月や5月からは新しい補助金や助成金の制度がスタートしますので、今年度は申請が間に合わなかった企業でも、トライすることができます。
ただし、補助金も助成金もお金が支給されるのは、事業が終了後(それも終了後数カ月かかります)です。そのために事前にお金は必要となりますので、資金繰りには十分注意をしてください。
文責:菅田 芳恵(社会保険労務士・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・産業カウンセラー)
グッドライフ設計塾 代表
証券会社、銀行、生保、コンサルティング会社勤務後、独立開業。49歳から2年間で社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格など7つの資格を取得。現在は13の資格を活かして、コンサルティングや研修、セミナーの講師、カウンセリング等幅広く行っている。最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性の活躍推進事業で活躍している。
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