オンプレからクラウドへの移行で、バリアブル印刷の
脱属人化を達成!老舗印刷会社によるVariable Studio活用術

望月印刷株式会社 古市氏、小須田氏
(望月印刷株式会社 写真左から 制作部 POD課 課長 古市 徹様、制作部 POD課 チーフリーダー 小須田 善人様)

企業プロフィール

企業名

望月印刷株式会社

所在地

東京都台東区浅草橋5-7-10

設立年月日

1905年

従業員数

100名

Webサイト

https://www.mochizuki-tokyo.co.jp/

迅速かつミスなく、お客さまのニーズに応えた情報加工サービスを提供する望月印刷

望月印刷株式会社 古市 徹氏

隅田川と神田川に挟まれ、江戸情緒が残る問屋街である台東区浅草橋に本社を置く望月印刷株式会社。明治38年に紙漉き、製袋業で創業し、2025年には創業120周年を迎える老舗の印刷会社だ。「お客さまのニーズに的確に応える」という信念を掲げる同社では、情報加工のプロフェッショナル集団として撮影からデザイン、印刷、デジタルツールの提供まで一気通貫で対応している。

「弊社の特徴を一言で表すと、お客さまからご相談いただくさまざまなニーズにお応えできる印刷会社です。そのために高度な印刷に対応した設備や技術に投資し、迅速かつミスなく納品するための体制を構築しています。

私たちPOD課では、お客さまのご要望に幅広くお応えできる優れた性能を持つ印刷機を備え、スピードと正確性を強みに事業を展開しています」(古市氏)

同社がバリアブル印刷で手掛けている案件は、可変すべき箇所が多くて複雑な調査票関連、DMや年賀状などの宛名印刷、顔写真を含む会員証、ナンバリング印刷と、大きく4つの種類に分けられる。POD課が手掛ける総印刷数のうち約2割ではあるものの、年間で50万枚以上を納品しているという。POD課で主に画像処理やデザイン制作などを担当する小須田氏に、同社のバリアブル印刷の特徴を伺った。

案件ごとにデザインやレイアウトからしっかりカスタマイズしていることが私たちのバリアブル印刷の特徴で、他の社員からは『可変印刷の域を越えてないか?』と指摘されるほど、オーダーメイドにこだわっています。もちろん、ミスなく納品することも注力しているポイントです。

私たちがバリアブル印刷を手掛けるようになったのは2008年にPOD室を立ち上げた当初からで、おかげさまで年々ご依頼いただく件数は右肩上がりで増加しています。弊社の営業を通して、全国各地の官公庁、企業から日々ご依頼いただけるサービスにまで成長しました」(小須田氏)

オンプレミス型のソフトウェアによってバリアブル印刷が属人化。サポート終了を機に乗り換え

Variable Studioを導入する以前のPOD課では、バリアブル印刷における業務の属人化が大きな課題になっていた。同社ではバリアブル印刷にあたっては他社製の可変印刷ソフトウェアを使用していたのだが、登録しているPCのみしか使用できず、Windows OSでしか動作しない仕様だった。そのため、主にデザイン制作を担当する小須田氏が使用するMac OSのPCではバリアブル印刷に関する業務ができないため、わざわざ古市氏のデスクトップPCで作業する必要があったのだという。バリアブル印刷で感じていた課題について、古市氏に当時を振り返っていただいた。

「Variable Studioを導入する以前に使用していた他社製の可変印刷ソフトウェアは、16年前にオンデマンド印刷機を購入した時期に導入しました。事業者向けの仕様で実際に使ってみないと理解できないソフトウェアではあったのですが、しっかりしたマニュアルもあり、困りごとがあればサポートも受けられました。

しかし、何度もバリアブル印刷を脱属人化するために他の社員へも展開しようとしたもののうまくいかず、私が現場にいないと作業が進まないという状況が何年も続いていました」(古市氏)

望月印刷 小須田 善人氏

こうした状況に変化が訪れたのは、16年間使用してきた可変印刷ソフトウェアの運営会社より、2024年12月以降のサポートが終了し、今後のバージョンアップ、エディション変更も予定されていないと告知された2020年12月のこと。告知をきっかけに古市氏はソフトウェアの乗り換えを検討しはじめたという。

「以前使用していた他社製の可変印刷ソフトウェアは、PCにインストールして使用するオンプレミス型のツールであったため、サポート終了後も使用自体は可能です。ただ、もしソフトウェア内やPC側でエラーが起きてしまえば、インストールし直すことも、サポートに問い合わせて復旧方法を聞くこともできないため、その時点でバリアブル印刷の対応はできなくなります。実際、導入から時間が経つ古いPCのまま、ずっと使用せざるをえない状況でした。

そこから新しいソフトウェアを導入したとしても移行時期があるため、その期間は案件を受けることができませんし、それ以前に受けていた案件をお断りしなければならない可能性もあります。弊社側のシステムの都合でお客さまにご迷惑をおかけできませんので、これを機にこれまで抱えていた課題も解決できる代替のソフトウェアを探すことになりました」(古市氏)

脱属人化、BCP対策でクラウド型であることが条件に。Variable Studio導入の決め手とは

望月印刷株式会社 古市 徹氏

2021年より代替のソフトウェアを探す中で、主に印刷業界向けの展示会で情報収集を行い、そこで出会ったのがVariable Studioだった。Variable Studioを評価いただいたひとつ目の要素がクラウドベースのツールであったことだ。

「バリアブル印刷を脱属人化、つまり私以外の社員でも取り組めるようになるためには、複数端末からソフトウェアを使用できること、OSやバージョンによって端末を選ばないことは必須条件です。また、万が一災害などでPCが故障してしまってもデータはクラウド上で保管され無事ですので、BCPの観点からも有効です。

こうした背景からクラウドベースのソフトウェアであることは比較検討において最も重要であり、Variable Studioのトライアルを実施することになりました」(古市氏)

Variable Studioのトライアルでは、以前使用していた可変印刷ソフトウェアとの比較に加え、他社がリリースしているソフトウェアとも機能面で比較検討されている。トライアル時に重視された機能が、印刷前に使用フォントやカラーが適正であるか、データ上でエラーが発生していないかを確認するプリフライト機能だった。

「以前の可変印刷ソフトウェアの場合、データ上で文字化けしていたとしても検知することができず、PDFの印刷プレビューを作成した際に目視で確認するしかありませんでした。数百ページ程度ならPDF上の目視チェックでミスを防げるかもしれませんが、1,000ページ、10,000ページを超えることも案件によっては珍しくないため、現実的ではありません。

Variable Studioの場合、わざわざPDF化せずとも印刷前にデザインデータを確認することができ、さらに郵便番号や住所チェックなどの機能によって、誤字脱字やフォントによるエラーを事前に検出できます。さらに文字数の超過(オーバーフロー)やフォントのグリフ、画像設定ついてのエラーも検出できるのはかなり便利です。

その他にも動的補正機能や費用対効果を考慮して比較検討しました。他社製の可変印刷ソフトウェアは印刷会社よりもライトなユーザー層を想定しているようで、私たちの要求水準を満たせておらず、最終的にVariable Studioの導入を正式決定しました」(古市氏)

初回の活用で2万枚の印刷物を無事に納品。動的補正機能で、要望に合わせた可変印刷を

Variable Studioの導入にあたっては、これまでバリアブル印刷を担ってきた古市氏に加えて小須田氏もバリアブル印刷の業務を担当することになった。実際の業務は小須田氏のPC(Mac OS)へVariable Studioをアクセスを設定することから始められた。導入当初のエピソードを小須田氏にお話しいただいた。

1週間ほどVariable Studioを操作すれば、宛名部分を可変する一般的な年賀状のバリアブル印刷程度は簡単にできるようになります。実際、私が初めてVariable Studioを触ってから数ヶ月後には、お客さまに2万枚ほどの印刷物を納品できました。

その際に活躍した機能が、動的補正機能です。動的補正機能によって、宛先名簿といった元データをわざわざ修正することなく成形できる機能なのですが、この機能によって住所や氏名、バーコードの位置、そして宛先のパターンごとに分類する『◯(マル)』の位置を調整することができています。

望月印刷 小須田 善人氏

案件によっては、例えば『指定した箇所の値が①なら左に◯(マル)を、②なら右に◯(マル)をつける』といった、元データに対して複雑な条件設定をしているのですが、直感的、視覚的に分かりやすい画面のため、問題なく複数条件を設定できていることも高評価です。頭の中のイメージを、そのまま動的補正機能に落とし込めている感覚です」(小須田氏)

バリアブル印刷の脱属人化を達成!納品物のクオリティー向上や紙コストの軽減にも効果が

望月印刷株式会社 古市 徹氏

Variable Studioによって製作した印刷物をお客さまに納品しておよそ半年が経った現在、さらに脱属人化を進めていくため、マニュアルの作成にも取り組んでいるという。紙の資料にするのではなく、より操作方法が伝わりやすい動画を活用したマニュアルを作成されている。Variable Studioの立ち上げからデザインデータの作成、印刷までの操作手順をスクリーン収録で録画し、補足情報を入れている。

さっそくPOD課には若手社員が配属される予定で、バリアブル印刷についても古市氏から小須田氏へ、そして若手社員へ引き継がれていく予定だ。

ずっと課題に感じてきたバリアブル印刷業務の属人化は、Variable Studioを導入したことで解決することができました。Variable Studioを導入したことをきっかけに、小須田がバリアブル印刷の業務に携わる機会を得ることができました。過去データの都合から以前の可変印刷ソフトウェアを使用したバリアブル印刷案件は残っているものの、作業環境としてはいつでもVariable Studioへ移行できます。

また、プリフライト機能によって誤字脱字やフォントによるエラーを印刷前に予防できるようになったことで、お客さまへ納品する印刷物のクオリティー向上や、無駄な紙の消費を抑えられています」(古市氏)

Variable Studioはクラウド型のサービスのため、ひとつの案件の作業を小分けにできる点も高く評価しています。例えば、ベースとなるデータを先に作成しておき、残りの作業は後日に回したり、残りの処理を別の社員に引き継いだりと、クラウドならではの柔軟性は助かります。これによって、新人にはまず簡単な作業だけを任せ、自分はより難易度の高い業務に注力するといった、チーム内リソースの最適化が可能になりました」(小須田氏)

バリアブル印刷は、今後ますます付加価値と需要が高まっていく印刷技術

「プリフライト機能や動的補正機能など多くの便利な機能が実装されていると感じていますが、やはり16年間使用してきた可変印刷ソフトウェアと比べても、まだまだバグは多少なりともあります。フォントのズレや表示ミスのような細かいバグや、システム的な不具合など、長年バリアブル印刷を手掛けてきたからこそ気になる部分はありつつも、報告後すぐに修正が反映されるのは、常に最新版が提供されるクラウド型のツールならではの強みです。オンプレミス型のツールの場合、アップデート版のたびにインストールし直す必要がありますから。Variable Studioの今後のアップデートとサービスの発展を期待したいですね」(古市氏)

取材の最後に、同社における今後のバリアブル印刷の取り組みについて語っていただいた。

バリアブル印刷は、お客さまのさまざまなニーズに的確に応えていく上で、今後ますます付加価値が高まっていく、需要が高まっていく印刷技術だと私たちは考えています。

Variable Studioを操作する望月印刷株式会社様

一般的なオンデマンド印刷と比べ、バリアブル印刷の仕事にはお客さまのニーズに合わせたシステムやデザインを構築していく、まるでエンジニアリングのような技術が求められるのですが、この仕組みを作っていくような感覚に私も小須田もやりがいを感じています。今後もより多くの、より広くのお客さまのニーズに応えていくため、Variable Studioを活用してバリアブル印刷に取り組んでいきます」(古市氏)