中期の単月売上目標を1年早く達成し、DXにも成果が!老舗印刷会社が手掛けた印刷通販サイト
企業プロフィール
企業名
:
株式会社やまとカーボン社
所在地
(本社)
:
京都府 京都市南区上鳥羽塔の森柴東町4-9
設立年月日
:
1965年1月
従業員数
:
35名(2022年6月時点)
老舗の印刷会社が大事にする開拓者精神。伝票印刷専門の通販サイトを立ち上げた背景とは
社名の由来となっているカーボン印刷をはじめ、ナンバリング印刷・伝票印刷のスペシャリスト、そしてお客様とあゆみ続けるビジネスパートナーとして事業を展開する株式会社やまとカーボン社。創業以来、ビジネスフォーム(事務用帳票)と複写帳票の製造を通じてお客様のニーズに応えてきた、京都の地に本社を構える老舗の印刷会社だ。
高品質・短納期であるだけでなく、クロスメディア商品への取り組みや最先端の技術を積極的に導入するなど、開拓者精神を常に持ち続けていることが同社の強みだと、代表取締役社長の瀧本真也氏は強調する。同社のチャレンジを恐れない社風と、新規事業である伝票印刷専門通販サイト「伝票百貨店」を立ち上げた背景について、お話を伺った。
「一般的な中小企業では、社長が決断して命令し、社員が新規事業を組み上げていく形が一般的だと思います。しかし弊社では、社員が新しい事業を自発的に始めることを奨励しており、『伝票百貨店』は黒田の発案から始まりました。
『伝票百貨店』の新規事業が発案された背景には、デジタル化の波によって伝票の発注が年々減っていることへの危機感があります。
そこで既存のお客様に加え、5〜10冊規模の小ロットで伝票を注文したいというニーズをお持ちである、個人のエンドユーザー様を対象にした印刷通販サイトを始めることになりました」(瀧本真也氏)
お客様の小ロット発注のニーズにお応えするため、再び通販サービスに取り組む
同社が印刷通販サイトの事業に進出したのは、実は今回が初めてではない。「伝票百貨店」の前身とも呼べる通販サイトが、ヤフーショッピング内に出店された「きばる」だ。瀧本真也氏に当時を振り返っていただいた。
「『きばる』は下請け専門として活動していた当社が苦手としていたBtoCのノウハウの構築や、社員の自発性、創造力を育む一環として展開したものでした。
BtoCへの展開だと昨今の情勢上、ECとの連動は不可欠なため、出展する際にECサービスを比較検討しています。その結果、Yahoo!ショッピングにたどり着きました。当初から採算性はあまり重視せず、今後の展開のための実験場でした」(瀧本真也氏)
複写技術を活用したオリジナルメモや、京都の文化を取り入れた千社札シールなど、社内から募った独創的なアイデアから生まれた商品を販売していたのだが、期待通りには成長しなかったという。
その後、「きばる」での経験を活かす形で、新たな印刷通販サイトの立ち上げが提案された。その提案を行ったのが黒田氏だ。黒田氏は印刷サイトの企画から立ち上げ、サービス運用まで携わっており、小ロット、低予算のお客様からのニーズにお応えする印刷通販サイトにするため、できるだけ工数を割かずにオンデマンドで受注・印刷・納品までできる体制の構築に取り組んだという。
「町の車屋さんや建築関係の中小企業など、紙の伝票が小ロットで必要なエンドユーザーのお客様は確実に存在します。そして、自らの印刷機を使って伝票の通販サービスを手掛けられている他の印刷会社さんも、同じく存在しています。
しかし、お客様のニーズに対して、他社がやられている伝票の通販サービスは、どうしても価格が高くなっているように感じていました。エンドユーザーであるお客様でも気軽に買える通販こそが必要なのではないかと感じたのです。
そこで弊社では、オンデマンドで印刷できるからこそ実現できる、低価格の伝票印刷専門の通販サイトを立ち上げることになりました。そのためには、お客様から手軽に発注をいただけるような印刷通販サイトを構築する必要があったのです」(黒田氏)
in2site導入の決め手は、通販サイトデザインの柔軟性と、サイトのレスポンシブ対応
in2siteの導入を決定する以前は、同社とは別の印刷会社が開発・販売していた通販サイトの導入を検討していたという。思い描いていた通りの通販サイトではあったものの、デザインの自由度が高くなく、自社で変更できる要素は限られていた。加えて、入稿するデザインテンプレートのひな型を選べなかったり、名入れや住所の入力ができなかったりと、機能面でも希望通りの条件ではなかったことも懸念点だった。通販サイトの構築方法について、検討を進める中で出会ったin2siteとの出会いと、評価されたポイントについて黒田氏に伺った。
「その頃に展示会でin2siteと出会い、その場で機能についてご担当者にお伺いさせていただきました。WordPressを使用するためデザインの自由度が高く、スマートフォン向けのレスポンシブデザインにも対応している点が高評価だったことを覚えています。また、WordPressに対応していれば、自分自身でノウハウを調べて対応することもできます。こうした機能面を検討した結果、in2siteの導入で社内に提案しました」(黒田氏)
黒田氏の社内提案を受け、瀧本真也氏はどのように判断したのだろうか。瀧本氏が当時の状況を振り返る。
「会長の瀧本が求める“新しいチャレンジ”という大きな波に、やまとカーボン社という船は積極的に挑戦していかねばと感じていました。黒田の並々ならぬ熱意もあり、まずは3年様子を見るという条件でin2siteを導入しての通販サイト構築に着手することを決断しました」(瀧本真也氏)
いかにオンライン発注のハードルを下げるか。分かりやすいサイトを構築した工夫とは
in2siteの導入にあたって特にこだわったポイントは、小規模事業者の伝票発注に最適な見積もりを計算するシステムの構築だ。伝票の場合、画一的な規格サイズがほとんど存在せず、お客様によって求めるサイズやデザイン、発注数がバラバラであることがシステムを構築していく上で難しいポイントであったという。
「サイト構築を進める中で、サイズや冊数によって、非常に多くの条件分岐が必要であることが分かりました。サイトから発注いただく案件ごとに、『伝票百貨店』の担当者がその都度判断するという方法もありましたが、それでは非効率的すぎて収益には繋がりません。
システム構築と見積もりの条件分岐の設定は大変だったものの、事業の将来を考えて取り組んでいきました」(黒田氏)
サイトを構築するにあたって最も工夫されたポイントが、お客様にとって分かりやすいサイトにすることで発注のハードルを下げることだった。
例えば、サイトに掲載している伝票のひな型の種類は、必要最小限に留められている。何十種類ものひな型を公開している他社サイトもあるが、それでは伝票の発注に慣れていないお客様は迷って選ぶことができない。
他にも、印刷業界で使用される業界用語がサイト内に使われていないことも、お客様にとっての分かりやすさを重視した工夫の一つだ。
中期目標に掲げていた単月売上の達成を1年も早く実現!営業DXの文脈でも確かな成果が
「伝票百貨店」のリリースから現在まで、415件の新規お客様登録数を獲得することができた。そのうち、およそ8割のお客様から発注が発生し、5割弱のお客様は2回以上継続しての発注に繋がっているという。もともとはエンドユーザー向けのサービスと位置づけていたが、他社の印刷会社からの発注も少なくない。また、全国の企業や個人事業のお客様からの発注が入っていることも、通販サイトならではの特長だ。
in2siteによって構築された「伝票百貨店」は、立ち上げから3年間でどのような成果が得られたのだろうか。引き続き黒田氏にお話しいただいた。
「立ち上げ当初より会長からは、単月目標の売上達成を3年以内に実現するように、との中期的な目標設定がありました。ただ正直なところ、最初の1年はほぼ注文がないかもしれないという不安があったのです。
しかしリスティング広告も少しずつ効果が出始め、想像していたよりも注文が入り、単月目標の売上達成は2年以内に実現することができました」(黒田氏)
こうした「伝票百貨店」の成果は、役員会でも高く評価していると瀧本真也氏は笑顔で話す。特に社内のDX化に課題を感じていた同社にとって、in2siteが発火点となり営業におけるDXが進んだことが評価できるポイントだという。
「売上だけでなく、営業DXの文脈でも効果がある施策でした。印刷サービスの新規案件は、小ロット10冊の発注でも、大ロット10万冊の発注でも、営業担当者のオペレーションに掛かる時間と手間はほぼ一緒であり、冊数とは比例しないのです。ですので、これまで弊社の営業社員はたとえ収益があまり見込めない案件であっても、必要以上に工数を割いてしまっていました。
今回の新規事業のおかげで、小ロットの案件は『伝票百貨店』にご案内できるようになったことで、営業リソースの効率化と最適化を実現することができたのです。
本当にこの3年間で、よくぞここまで形にできたなと思います」(瀧本真也氏)
in2siteは業務そのものを支える、なくてはならない存在
同社の開拓者精神と印刷業界の市場縮小を背景に、in2siteの導入と同時に進められた印刷通販サイト「伝票百貨店」による新規事業。2022年でリリースから3年を迎えた今、今後の事業展望について語っていただいた。
「黒田ともう1名、合計2名で稼働するという現状で回せる受注規模に至ったと思いますので、今後新たな展開を考えるのであれば製造ラインを確保したり、新しいサポートスタッフを配置したりといった環境整備が必要になります
そして受注を増やしていくことはもちろん、伝票のニーズはあるがネットでの注文方法がわからない、特に個人規模で商売をされているお客様により一層気軽にご注文いただけるサイトを目指していきたいです。
『多品種・小ロット』という今の時代のお客様ニーズに対して、印刷通販サイト『伝票百貨店』は私たちがご提案できる“答え”だと思っています」(瀧本真也氏)
取材の最後に、今回の取り組みを振り返って感じられたin2siteの価値について、「伝票百貨店」の立役者である黒田様ご自身のお考えを伺った。
「今の私にとって、in2siteは業務そのものを支える、なくてはならない存在です。もともと通販サイトやITツールに対する知識を持っていなかったものの、今では自走して使いこなせています。
印刷通販サイトのテンプレートがあり、写真の入れ替えや文章の打ち直しで簡単にサイトを作れることがin2siteの魅力だと思いますので、これから印刷通販サイトを始めたい、始める予定だという印刷会社さんにこそ、おすすめできるのではないでしょうか」(黒田氏)
株式会社やまとカーボン社の印刷通販サイト “伝票百貨店” はこちら