CFOメッセージ
攻めと守りの両方を視野に入れ、
最適な財務基盤の構築を目指します。
常務執行役
畑野 誠司
攻めと守りの両方を視野に入れ、
最適な財務基盤の構築を目指します。
常務執行役
畑野 誠司
コニカミノルタが、高収益企業として中長期的に成長を遂げていくためには、新規事業の創出や成長事業の強化・拡大が不可欠です。当社ではM&Aをその実現のための有効な手段と位置づけており、前中期経営計画「TRANSFORM 2016」においても、業容転換を加速させるため各事業領域で数多くのM&Aを実施してきました。
M&Aの計画段階においては、当社の強みや技術力、保有資産などを最大限に活用してシナジー効果を発揮できる領域を対象に検討を進めています。また、PMI (Post Merger Integration=買収後の統合プロセス)をより円滑・確実に実行できるよう、事業の親和性はもとより、買収対象先の経営理念やビジョン、企業風土なども重視しながら、徹底した事前調査を実施しています。その上で、当社の事業戦略との整合性や、事業計画の蓋然性、投資額の妥当性、収益性、安全性、買収後の事業運営体制の確認など、多角的な検討を経て、M&Aを実施しています。
2017年7月に発表したアンブリー・ジェネティクス社の買収も、こうした判断基準のもとに実現した大型案件の一つです。プレシジョン・メディシン分野において、当社にない技術やノウハウを有する複数の会社を買収候補として入念な調査を実施した結果、当社戦略に最も合致した同社を選択しました。
M&Aなど投資プロジェクトにおいては、通常の経営執行機能に加えて、私が委員長を務める投資評価委員会や事業評価委員会で、個々のプロジェクトを多角的に検証しています。取得金額については、投資期間中のキャッシュ・フローから投資対象の現在価値を算出するNPV(Net Present Value)の指標を用いて評価し、取得金額が利益の何倍にあたるか、投資回収期間はどのくらいかなど、事業計画を複眼的に精査しています。そして買収・合併後も、徹底したPMIを実施してグループシナジーによるさらなる企業価値向上を目指します。
当社は2014年度の有価証券報告書から国際会計基準(IFRS)を採用していますが、減損テストを毎年1回必ず実施しています。2016年度の減損テストにおいても、減損対象会社がないことを監査法人から承認を得ています。
なお、2017年4月からスタートした新中期経営計画「SHINKA 2019」でも、今後の成長に向けて3年間で1,300億円の投融資枠を設け、新規事業領域に重点的に配分する予定です。
このように当社が積極的な成長投資を推進するなか、CFOである私が担う重要な役割は、信用格付けを維持しながら、財務リスクの最小化と資金効率の最大化の両方を実現することです。そのために、前中期経営計画の期間中に、グローバルキャッシュマネジメントシステムを構築しました。具体的には、トレジャリーマネジメントシステムを導入し、資金の可視化、資金予測精度の向上、関係会社間決済のキャッシュレス化、為替リスク管理集約化を進めるなど、高度なグローバル財務管理基盤を構築しました。この当社のキャッシュマネジメントは、他社の財務部門や金融機関からも高い評価をいただいています。
一方、保有する資産のマネタイズも実施しています。2016年度は、知財権価値の最大化に取り組んだ結果、産業用光学システム分野での特許権実施許諾の対価として、第3四半期に78億円を計上することができました。2017年第1四半期には、CRE(企業不動産戦略)の一環として、当社が国内で保有する不動産の一部をセール&リースバック方式でキャッシュ化し、40億円を調達しました。これは近年、事業のグローバル展開を視野に入れて検討を進めてきたファシリティ(土地・建物)活用の最適化による成果の一つです。
今後もこうした施策も実行しながら、財務規律を保ち、自己資本比率については50%以上を維持、ネットD/Eレシオは中期的に0.1を目指します。
新中期経営計画では、2019年度のROE9.5%を目指しています。事業部門の高付加価値化を進め、「稼ぐ力」を高めて参りますが、私はCFOとして大きく4つの施策を実行していきます。
まず、バランスシート管理の徹底です。当社は、事業によって売掛金や在庫の規模、回収期間などが大きく異なるため、各事業のキャッシュ・コンバージョン・サイクルをきめ細かくチェックするなど、それぞれの事業に最適なバランスシート管理を実施してきました。2018年度からは、より一層の資本効率の向上・現場実行力の強化を目指し、基盤事業を中心にビジネスユニット別の「ROIC(投下資本利益率)管理」を導入する予定です。現場の自主的改善活動を促すとともに、営業利益率とバランスシートの双方を指標とすることによって、成長と効率性のバランスの取れた“収益成長戦略”を推進していきます。
2つ目の施策として、ITやAIを活用した働き方改革を進めて業務の生産性を高めます。例えば、財務部門においても、RPA(Robotic Process Automation)を活用した業務の効率化を検討しています。
3つ目が、為替変動への対応力強化です。現在の当社業績への為替影響は、対ドルではほぼ影響はありませんが、ユーロを含む欧州通貨に対しては1円の円高で12億円の営業利益の減少が生じるため、近年は円高によるマイナス影響を受けてきました。そこで新中期経営計画期間では、ユーロ建て調達の拡大や、欧州で買収した企業の製品・サービスを他の地域で展開するなどの施策を推進し、ユーロを含む欧州通貨に対する為替感応度を改善していく計画です。
そして最後に、2016年度に実施した「グループ税務方針」の策定です。これは、OECDとG20が奨励するBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)に対する国際間の税制度改革に沿ったもので、この税務方針を対外的に公開することで、国内外の税務当局と良好な関係を築くとともに、税務ルールの順守と透明性の確保に積極的に取り組んでいます。また、これをグループ税務ガバナンス強化の機会と捉え、世界のグループ子会社から、税情報をITシステムを通じて円滑に収集し、二重課税のリスク低減を実施するなど、税の最適化を図っています。