BICインタビュー

お客様志向で新しいビジネスの創出を目指す
ビジネスイノベーションセンター

BIC-EU
Director

デニス・カリー

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執行役
事業開発本部長

市村 雄二

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BIC-US
Vice President

エクタ・サハシ

コニカミノルタは、日本、アジア・パシフィック、中国、欧州、北米の世界5極体制でビジネスイノベーションセンター(BIC)を運営しています。BICの使命は、革新的な発想と高度な技術を組み合わせ、将来を見据えた新たなビジネスの可能性に挑戦することです。
BICの活動状況について、統括責任者の市村と、ロンドンを拠点とするBIC-EUを統括するデニス・カリー、シリコンバレーを拠点とするBIC-USを統括するエクタ・サハシの3名にインタビューしました。

執行役 事業開発本部長
市村 雄二

Profile

大手ITサービス企業で、北米におけるM&Aや、事業会社の統廃合・スタートアップなどに携わる。コニカミノルタでは、ICTサービスの分野で買収した海外子会社と既存子会社のビジネス統合などに携わり、現在は事業開発本部長として次の柱となる事業構築を担う。

BIC-US Vice President
エクタ・サハシ

Profile

GE、eBay、Vodafoneなどを経て、シリコンバレーの複数のスタートアップでリーダーシップを発揮するなど、企業の改革や新規ビジネスの推進に豊富な経験を持つ。

BIC-EU Director
デニス・カリー

Profile

NATO(北大西洋条約機構)のCTOや、Hewlett-Packard社傘下のEDS(Electronic Data Systems)社で顧客戦略のグローバルディレクターを歴任するなど、イノベーション部門の立ち上げに豊富な経験を持つ。

Q1
どのような基準で世界各地のBICの幹部を選びましたか?

コニカミノルタにない経験やノウハウを求めて、異業種から一流のイノベーターを招聘しました。

市村
BICの最大の使命は、今までにない革新的なビジネスを創出することです。この使命を果たすために、各BICの幹部には、さまざまな業界でビジネス・インキュベーションの経験を豊富に持つ、まさに“イノベーター”と呼べる人財を結集しました。また、BICを世界5極体制にした狙いは、世界の主要マーケットに根ざしたイノベーションを創出することにあり、各地の状況に詳しい人財を採用することも重要な方針の一つでした。
例えば北米では、シリコンバレーのIT企業やベンチャー企業でのビジネス経験を持ち、人脈も豊富なサハシさんを招聘しました。サハシさんは、当社が求めるお客様視点のソリューションや技術について豊富な経験を持っています。
サハシ
私はシリコンバレーでの経験を活かして、マーケットがどこに向かっているのかを分析し、どの技術をどう活用すべきかという視点で、お客様に新たな価値をもたらすベスト・プラクティスを創造していきたいと考えています。
市村
欧州は、環境問題など社会課題に関する対応や、さまざまな分野での国際標準規格づくりで世界をリードしています。現地の大企業や国際機関での経験を持つカリーさんであれば、そうした視点、ノウハウを当社に加えてくれると期待しました。
カリー
私はこれまで、さまざまな情報の中から市場に大きな影響を及ぼす事象を見出し、新たなビジネススキームを通じてお客様に価値を提供することに取り組んできました。BICでも、こうした経験が活かせると考えています。
市村
アジア・パシフィックの拠点であるシンガポールでは、経済成長に向けて規制が頻繁に変わるため、政府とのつながりを持ち、アジアの社会経済をよく知る人財を招きました。また中国では、現地における新興ビジネスに精通していることに加え、潜在市場を発掘し、当社のビジネスと結び付けられる人財を選びました。そして日本では、インキュベーションや起業の経験が豊富な人財を求めて、これまでに2つの会社を立ち上げ、成功させた実績を持つ人財を招聘しています。
このように、地域特性に応じた人選をしたことで、BICのグローバル体制は現在、非常に良いバランスにあります。そして今後も、お客様や市場の動向に応じて、ポートフォリオを調整しながら、最適化していきます。
サハシ
コニカミノルタの歴史に新たなページを刻む業容転換に携わることになり、私は大きな使命感に駆られています。会社が一丸となって変革に挑み、世界に大きなインパクトをもたらそうという、とてもエキサイティングな仕事だと感じています。
カリー
私もコニカミノルタが自らの改革にとどまらず、お客様のためにより大きな変革を成し遂げようとしていることに強い感銘を受けています。今後展開していく新たな事業が、お客様に大きな影響を与え、コニカミノルタの業容転換が成功を収めること、つまり、お客様に最大限の価値を提供し続ける企業となることが、私の最終的な目標です。
市村
BICの事業創造のモデルは、お客様のイノベーションを支援しながら自らも新規ビジネスを確立していくというものです。また、コニカミノルタは日本企業ですが、売上高の80%を日本以外が占め、世界中にお客様がいます。多くの企業がシリコンバレーにイノベーションセンターを置くなかで、当社がBICを世界5極で運営しているのは、「お客様起点のイノベーション」という独自の方針を実践していくためです。

Q2
BICは、どのようなメンバーで構成されていますか?

変革への強い熱意を持ち、創造性や起業家精神にあふれた人財で構成されています。

サハシ
私はまず、イノベーションへの熱意を持ち、業容転換を目指す当社に刺激をもたらす人財を探しました。また、“創造的破壊”を実践するため、大企業の新規事業開発部門で多くの課題を経験した人財など、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーを集めました。彼らが持つ多様なアイデアから、当社にとって有意義なものを抽出し、業容転換を前進させたいと考えています。
カリー
私は、クリエイティブで起業家精神に溢れる人財、イノベーティブな人財を集めるように努めました。ビジネスチャンスに対して即座にアプローチできる柔軟なメンバー構成を目指したのです。
サハシ
BIC-USでは、“イノベーションの発信地”であるシリコンバレーという地の利を活かして、社員の知見だけでなく、外部のネットワークも活用しています。例えば、投資家やスタートアップ企業などとエコシステムを形成し、プロジェクトに必要な人財を招聘したり、パートナー関係を築いています。ビジネスを展開していく上で、彼らとの協業は非常に効果的です。
カリー
BIC-EUの本部はロンドンにありますが、新事業に必要な業務を欧州全域のさまざまな拠点に分散することで、各拠点にいるさまざまな専門家の多様な観点・知見を活かしてプロジェクトを進めています。

Q3
現在、進めている代表的なプロジェクトを教えてください。

ロボット工学やAR(拡張現実)など、先端技術を駆使したアプリケーション開発を進めています。

カリー
BIC-EUでは、AR(Augmented Reality:拡張現実)アプリケーションの開発に注力しています。ARでは、現実世界の物事にコンピュータによる情報を付加することができます。このARをコンテンツ・マネジメントに応用し、文書をより直観的でインタラクティブに利用できるようにすることで、人々が必要な情報を素早く得て、より適切な意思決定ができるようになります。現在、オーストリアのWikitude社と連携して、ARを活用した自動車整備用マニュアルを開発中です。メンテナンス中の車にタブレットやスマートフォンをかざすと、画面にマニュアルが表示され、熟練整備士でなくても正確な作業が可能になるというものです。
BIC-EUが開発を進めるAR(拡張現実)アプリケーション。自動車整備の現場では、タブレットやスマートフォンにマニュアルを表示させることで、整備の品質向上に貢献
サハシ
BIC-USが力を入れているのは、サービスロボットです。一例として、サービススタッフの業務をロボットが支援するSavioke社製の「ホスピタリティロボット」があります。すでにシリコンバレーのいくつかのホテルに導入されています。私たちがロボットに着目した理由は、コニカミノルタのコアビジネスとの間に多くのシナジーを生み出せると考えたからです。ロボット産業の発展状況や、私たちの参入機会をしっかりと見極めるとともに、当社のバリューチェーンにどう貢献できるのかを確かめながら、将来に向けた戦略やロードマップを具体化していきます。

Q4
長期的な視点で開発しているプロジェクトには、どのようなものがありますか?

ヘルスケア分野や、未来の職場づくりのための研究を進めています。

カリー
BIC-EUは、1つの事業で得たノウハウを他の分野に展開することで、新たな価値を創出できると考えており、異分野でのプラットフォーム創出に目を向けています。例えば、コニカミノルタはヘルスケア分野のなかでもX線写真など医療用画像のデジタル処理に関して高い競争力を有しています。この技術・ノウハウを他の用途に展開していくことで、ヘルスケア分野における当社の競争力をさらに高めることができると考えています。なかでも注目しているのが“術中癌検出”への展開です。癌手術中に、執刀医が切除すべき部位や、すべての癌細胞が除去できたかどうかをタイムリーに検知するプラットフォームができれば、多くの人の健康に貢献できますし、社会的にも大きなインパクトをもたらします。とても意義深いチャレンジだと思います。
サハシ
BIC-USも、ヘルスケア分野には注力しています。また、 “スマート・ワークプレイス”と呼ばれる未来の職場のあり方に関する研究にも取り組んでいます。近年、デジタルネイティブ世代が職場に加わりつつあり、仕事の進め方や、同僚との連携方法についての意識が大きく変化してきています。私たちは今、彼らにとっては当たり前のオンデマンドな職場を実現するために、複数のプロジェクトに着手しています。未来のオフィスにおいて、スマート・テクノロジーを活用し、理想的な働き方を実現する取り組みです。こうした働き方の革新によって、これまでできなかった価値創造も可能になります。この分野では、Konica Minolta Business Solutions U.S.A.社のCEOであるリチャード・テイラーとも緊密に連携しています。
カリー
“スマート・ワークプレイス”に代表されるオフィスの機能拡張は、コニカミノルタの将来の鍵を握る分野になるはずです。BIC-EUも、同様のテーマに着目しており、BIC-USと協業しています。加えて、私が注目しているのは、仕事中に限らず、移動時間や自宅での時間など、1日のあらゆるタイミングで適切な意思決定をサポートできるような仕組みづくりです。スマートデータや、解析技術、AIを駆使して、人の意思決定をサポートするサービスは、今後、我々が推進していく事業の主要分野の一つになると考えています。
市村
社会は今、デジタル化が進み、プラットフォームやシステムの面から非常に複雑化し、かつ変化が激しくなっています。その中でコニカミノルタを技術・製品志向の企業からお客様志向の企業へと転換していくためには、新しい技術の獲得そのものよりも、その技術を活用して、いかに顧客価値に主眼を置いた新しいビジネスを創出していくかが重要です。そうした認識を各地のBICと共有し、連携しながら実践していきます。