#1 日本のマクロトレンドから考察する2030年問題

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#1 日本のマクロトレンドから考察する2030年問題

「2030年問題」という言葉で表される日本国内の労働人口分布の大きな変化。これは不確実な将来予測とは一線を画し、確実に到来する未来です。今は実感が無いから、あるいは今すぐ打てる策が無いからと言っても、近いうちに目を背けられなくなるでしょう。
本コラムでは、2030年問題を迎える日本国内でどのような現実が待ち構えているかを考察するとともに、その現実のなかで企業が事業継続するための根本的対策をご提案していきます。

INDEX

かつてないペースで進む労働人口の減少

以下は、内閣府のデータに基づく日本の年齢区分別将来人口推計のグラフです。積み上げ棒全体の高さが日本人口の推移を表します。特に注目すべきは、中間の15~59歳の年齢層です。60歳以上の人口が今後30年間は維持もしくは微増が続くのに対し、2020年以降の59歳以下の人口は15年ごとに1,000万人という、前代未聞の勢いで減少していきます。
グラフを一見すると左に比べてかなり低くなった右側の棒の低さが気になりますが、そこに向けた傾きはもう始まっています。
「2030年問題」あるいは「2040年問題」というと、ちょっと先の話のように聞こえますが、急激な労働人口の減少はもう現在進行形の課題なのです。

年齢区分別将来人口推移

出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書」

その原因は言うまでもなく日本の出生数の低下です。ベビーブームが終わり、1975年に200万人を割り込んだ出生数は、1984年に150万人を割り込み、2016年に100万人を下回りました。その頃は、90万人を下回るのは2021年と予測されていましたが、実際には2年早く2019年に下回り、実際の2021年の出生数はすでに81万人台となっています。これにより労働人口減少は予測より早く深刻化することになります。

どのようなIT技術や画期的な政策が登場しても、出生数を直接的に向上させるソリューションはありません。仮に出生数が今後底をついて回復する傾向があったとしても、その子ども達が就労可能な年齢に達するまで、労働人口の減少は続くことになります。

人口減少と併せて考えておくべき直近の未来の問題

海外の継続的経済成長に対する日本の平均所得の停滞

以下は、厚生労働省が公開しているデータに基づく、1989年から2018年までの30年間にわたる日本国内の平均給与の推移を表したグラフです。リーマンショックでいったん落ち込み、直近では回復傾向にあるように見えますが、バブル経済が崩壊した1991年から停滞が続いており、日本国内の会社員の所得はまだ30年前のレベルに戻っていません。しかも当時と違って今は消費税が導入されていますし、様々な社会保障費を支払っていますので、日本の給与所得者の実質的な生活資金はかなり減っていることになります。

平均給与(実質)の推移

出典:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書 -令和時代の社会保障と働き方を考える-」

日本で暮らしていると、これが世界の先進国のなかでも特有の異常な事態であることを認識しにくいと思います。OECDによる世界各国の平均賃金グラフを見ると、G7のなかでは最低に位置し、OECD加盟国のなかで日本より賃金の低い国はもう南欧と東欧の国々しかない状況です。

OECD加盟国 平均賃金 (Average wage)

出典:OECD 主要統計「平均賃金 (Average wage)」(2022.11.現在)

日本の地位がここまで低くなったのは実は最近のことで、30年前の「年収400万円台前半」というのは、アメリカやドイツに次いで高い値でした。それが、当時200万円台だった韓国にも今では追い抜かれ、アメリカ人の平均年収がもう800万円に達するということを念頭に置くと、日本の停滞の深刻さが浮き彫りになります。

これにより、日本は世界各国から見て、相対的にどんどん物価の安い国になっています。海外から見た日本の品物は安価で買いやすく、逆に日本人にとって外国製品は高価で買いにくいものになっています。昨今の円安が、この状況に拍車をかける形となっています。

OECD加盟国 平均賃金の推移

資料:OECD 主要統計「平均賃金(Average wage)」を基に作成(2022.11.現在)

これは少子高齢化とは別要因ではあるものの、決して無視できない深刻な問題の一つです。

巨大プラットフォーマーの台頭によるビジネスモデルの変革

1990年代後半よりパソコン、インターネット、携帯電話が本格的な普及を始め、我々の暮らしはどんどん便利になっていきましたが、当時、多くの人々には、それらの新しいインフラは既存の社会に対する付加的な存在として認識されていたと思います。
しかし2000年代前半より巨大プラットフォーマーが台頭し始め、既存のビジネスを侵食し始めます。それらは需要と供給を直接、個別かつ同時・大量に結び付けるという手法で多くの流通・小売業のあり方を変え、既存事業を破壊していきました。映画、音楽、ゲームなどのエンターテインメントは電子化・クラウド化されて媒体を持たずに配信されるスタイルが主流となり、コンシューマー製品も新品・中古問わず膨大な品種のなかから自分が欲しいものを価格と納期で選択し、ボタン一つの購入作業で自宅に届くのが当たり前になりました。
インターネットの利便性の核心を突き、現在の流通業をいったん無視して究極的に便利な世界を想定し、それを実現させた、プラットフォーマーによる革新的なビジネスモデルがメジャーとなり、強大な勝者となった形です。

現在多くの国内企業は、それらプラットフォーマーの影響を少なからず受けていると思われます。勿論その影響はプラットフォーマーと競合することが全てではなく、例えば製品やライセンスを商品者に届ける流通網として、あるいは自社商品の広告宣伝を流すメディアとしてなど、何らかの形で共存しているケースもあるでしょう。巨大プラットフォーマーの登場から歳月が経ち、すでにかなりの影響を受けていますが、変化がこれで一段落したと見るのは早計でしょう。近い将来、AIはより発展すると共に、メタバースやWeb3.0の時代に本格突入し、世界はまた大きく変化するかも知れません。

プラットフォーマーの台頭も労働人口減少とは関係が無いように思えるかも知れませんが、彼らが短期間で爆発的な成長を遂げた要因が「少ない労力で多数の消費者に沢山の付加価値を生み出している」ことだとするならば、本テーマと大いに関係のある脅威であり、参考にすべき解決策のヒントでもあるのです。

まとめ

いかがでしたか? 2030年あるいはその先に向け、日本の労働人口がかつてないペースで減少していくという避けられない事実に加え、日本の平均賃金の停滞やプラットフォーマーの台頭など、世界のなかに置かれた今後の国内を考える上で大きな要素についても着目し、考察してみました。
次回は、これら大きな変化をもたらす環境を前提とした、近い将来の国内企業で起こり得る事柄について解説します。

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