コニカミノルタホールディングス株式会社
コニカミノルタテクノロジーセンター(株)イメージング文化研究所では、人の価値観やライフスタイルの視点から将来のデジタルイメージングの方向性を研究しています。
2005年には、デジタル時代のメディア利用行動に影響を与える社会文化や国民的メンタリティ、コミュニケーション・スタイル、メディア・システムの整備の影響等について研究するため、部分的にデジタル文化の浸透が先行している韓国を比較対象とし、東京大学大学院情報学環、橋元研究室との共同研究プロジェクトとして日本と韓国の家庭訪問調査を実施しました。日本10家庭、韓国8家庭、計18家庭のインタビューを通して日本と韓国のメディア利用行動の相違点とその文化的・社会的要因、日本と韓国共通で観察された、デジタル化に伴う社会現象などを報告書にまとめました。
日本・韓国とも、テレビはリビングの中央に位置する、生活の中心的メディアであった。しかし現実には生活時間のずれ、嗜好のばらつきなどが原因で「団らんの絆」ではなくなりつつある。
また、テレビは基本的に受動的なメディアであり、背景映像的な役割を担っている家庭も多かった。ここが、ネットサーフィンにも主体性・能動性を求められるインターネットとの大きな違いである。
韓国では自宅でもインターネット利用が盛んであり、日本ではさほど盛んでないことが明らかになった。韓国のネット利用で日本との最も大きな違いは、紹介があれば誰でも参加できるコミューニティサイトSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発展である。日本でもmixi(ミクシィ)が公称参加者数100万人を謳っているが、今回の調査でSNSに参加しているという人はいなかった。一方、韓国ではSNSの最大手Cyworld(サイワールド)の参加者は1200万人を超え、ネット利用者の三人に一人以上が参加している状況である。
韓国ではかなり以前から学校教育で積極的にネット利用が取り入れられているため、若年層のメディアリテラシーが高く、小中高生向けSNSもかなり活発に利用されていた。
韓国でSNSがここまで広く受け入れられた背景には、もともと人脈の活用(コネの利用)が活発な風土・価値観も影響しているようである。
今や日本、韓国ともコミュニケーションの中心は完全に携帯電話であることが明らかになった。友人とのやりとりについては、日本では、パソコンのEメールはやや遠い人、たまにしかあわない人、携帯メールは日常的によく会う友人と、両者を親疎によって使い分けする傾向が見られた。一方韓国では、携帯メール、携帯音声通話、パソコンのEメール、インスタント・メッセンジャーなどをまんべんなく利用する傾向が見られた。
家庭でのやりとりでは、日本、韓国とも(とくに日本)、母親が携帯を通してコミュニケーションの中核になっていることが明らかとなった。夫婦間はもちろん、娘、息子との連絡を頻繁に行っているのは母親であり、その手段の多くは携帯メールである。
デジタルカメラの利用自体も韓国の方が活発である。その大きな理由は、SNS(ほとんどCyworld)の隆盛である。今回訪問したほとんどの家庭で、若年層はCyworldに登録しており、頻繁に自分ないし家族を紹介する写真をアップしている。写真を見た親族・友人からのコメントが、写真をアップするモチベーションにつながっており、Cyworldの存在が、デジタル写真撮影やパソコン編集などのメディアリテラシー向上の契機にもなっている。実際、いくつかの家庭で韓国の小中高校生が画像処理ソフトを使って写真を加工しており、友人と、芸能人や仲間の写真をネット上で交換している。
韓国では就業男性でも日に1度は自宅でネットを利用する人も多いが、日本の場合、世帯主の夫の在宅時間が短く、平日、自宅ではインターネットにアクセスする余裕がほとんどない。長い労働時間と通勤時間、就業時間後のつきあい等、日本の社会構造が変化しない限り日本と韓国のネット利用格差は拡大する可能性がある。
他にも既存メディアである新聞の位置づけや、住宅空間におけるメディアの配置とメディア利用の関係などに関しても調査を行いました。
韓国におけるメディア環境
韓国の家族文化