
ユーザー事例
分光測色計と色彩管理ソフトウェアの活用で色データの「見える化」

より品質の高いクルマづくりと
働く人にもやさしい環境づくりを追求
トヨタ車体株式会社様では、トヨタ自動車株式会社より、ミニバン(アルファード/ヴェルファイア、ノア/ヴォクシーなど)やSUV(ランドクルーザー300、70、LX600)、商用車(ハイエースなど)の企画・開発・生産を委託されており、今回は富士松工場で自動車の内装部品の色差管理をされている、塗装部 技術員室 成形グループの井口様に分光測色計CM-17d導入の背景やその後の変化についてお話を伺いました。
ー はじめに、現在の色差管理について教えてください。
色彩色差計を使って、ノアやヴォクシー、ランドクルーザーのインストルメントパネル(以下インパネ)やトリムといった自動車内装の樹脂部品の色差管理をしています。
検査するタイミングは、部品にもよりますが、例えばランドクルーザー70のインパネの場合はロット生産時の初物と終物の抜き取りで実施しています。
色の管理方法は、材料技術部門で作成した基準となる承認板(マスタープレート)を基準として、量産品との色差を検査しています。車格によって管理基準は異なりますが、この承認板を基準として、L*a*b*それぞれに上限下限を決めて管理をしています。
ー 検査していく過程で色ズレは発生するものなのでしょうか?
頻繁にはありませんが、例えば、ライン立ち上げ時に透明な材料に対して着色剤を3%の比率で設定したとしても、時間経過とともに輸送経路のフィルターに埃などが付着して詰まり、比率が3%から少なくなってしまい、L*値が高くなってくることがあります。現在、そういった際は材料の輸送設定を調整したり、フィルターの清掃をおこなったりなどの対応をしています。

ー 色彩色差計を活用されていて、どのような課題を感じていましたか?
色彩色差計CR-400を使用していましたが、器差があることに課題を感じていました。
明るい色だとそれほど差はありませんでしたが、特に黒系色・L*値の測定精度についてはばらつきが気になっていました。
それと測定作業面においては、CR-400だとDP-400(データプロセッサー)を首から掛けた状態で測定をし、DP-400からプリントアウトした紙を専用のチェックシートに転記するフローになっていたので、オペレーターの作業負荷と測定データの紙管理の効率化が課題になっていました。
測定頻度が多いので、電池交換を頻繁にしなければならない作業の煩雑さやコスト削減も改善したいと考えていました。

ー 課題を解決するために、製品を検討・選定したポイントを教えてください。
器差を少なくするためには、色彩色差計よりも精度の高い「分光測色計」に置き換える必要がありました。分光測色計といってもいくつかラインアップがありましたが、私たちの工場で取り扱う測定物は、曲面や奥まった箇所など複雑な形状も多いので、縦型タイプである分光測色計CM-17dが最適であるという結論になりました。
CM-17dはバッテリー式なので、頻繁に電池交換をしなくても良いというのも選定ポイントの1つです。
あとは、色彩管理ソフトウェア SpectraMagic NX2をCM-17dと合わせて活用することで、測定データ管理を紙管理からデータ管理にシフトできることも、業務のDX化に進むための大事な要素でした。

ー 実際に分光測色計CM-17dを導入して、課題改善の効果は感じられていますか?
CM-17dを導入したことで、器差が少なくなり、特に黒系色・L*値の測定精度が向上したと感じます。使いやすさの面でも、CR-400よりヘッド部分がやや重くはなりましたが、握りやすくフィット感があり、画面はフルカラーで文字も大きくなり見やすくなりました。老若男女問わず、あらゆる作業者にとって優しい検査工程になっていると思います。
あとは、CM-17dには標準付属でクレードル(※)があるので、普段はクレードルに入れて保管しながら充電もでき、電池交換の作業が減りました。
これは想定外の副産物ですが、弊社ではCR-400を使用する時、作業要領で白色校正をするルールになっていましたが、オペレーターの作業工程中で稀に抜けてしまうことがあったんです。それがCM-17dでは電源を起動すると最初に白色校正のメッセージが画面に出てくるので、抜けがなくなるという改善につながりました。
それと1日で膨大な量が出ていたチェックシートがデータとして残せることで紙を減らせるだけでなく、色データの「見える化」ができました。
データを活用して解析ができたり、データがソフトウェアに入るとグラフで表示されるので管理がしやすくなったり、数値に異常(変化)があった場合も、対応するまでの時間短縮にもなっています。
※クレードル:充電とゼロ校正ボックスの機能を搭載したCM-17d標準付属品

ー 今後、弊社に期待していることは何ですか?
今回は、色彩管理ソフトウェア SpectraMagic NX2を通して、データを保存することまで進めることはできましたが、本来のフローでは、作業者が測定したデータを現場の上長が承認するステップが必要になります。
現状のNX2ではそれに相当する機能がないので、次のさらなる改善としては、上長がチェック(承認する)して、OKであればデータを転送して保存できるようになることを期待しています。
ー 1つずつ課題をクリアにしていき、次のステージに進むために、常に改善を追求する信念を持たれていることに感銘を受けました。
今後も有効にご活用頂けるよう、微力ながらサポートしてまいります。
ご紹介の企業様
社名:トヨタ車体株式会社
本社:愛知県刈谷市
設立:1945年8月
主な事業内容:トヨタ車の企画・開発・生産
URL:https://www.toyota-body.co.jp/

製品情報
分光測色計 CM-17d
CM-17dは小型・曲面サンプルの測定に発揮する縦型ポータブルタイプの分光測色計です。樹脂部品、自動車内装部品、塗料、医薬/化粧品、食品などの色管理の用途にご活用いただけます。
