濃度計のツボ
蛍光分光濃度計
09ペーパーインデックス
紙の光学的性質
- 1. 表面反射光の拡散性が高いですが、光沢もあります。
紙の表面は繊維の向きがランダムであり、一般的に反射光の拡散性が高いですが、表面加工によって表面が平滑になり光沢を有するものがあります。 - 2. 蛍光発色するものがあります。
白く見せるためや変退色を目立たなくさせるための蛍光増白材を含むものがあります。 - 3. 透過性があります。
反射色測定では紙を重ねて、または1枚を黒バックで測定するなど裏当て条件が必要です。
印刷に使用される紙は基本的に白いものが多いです。
印刷用紙の白さにも様々な種類があり、それにより同じインキでも発色が異なります。
以下に2種類の印刷用紙(A:黄色っぽい、B:青白っぽい)に同じ印刷をしたところ、見え方が異なります。
紙の分光反射率特性を蛍光分光濃度計「FD-7」で測定してみると上記のようなグラフ結果になりました。
サンプルAは低波長域から高波長域までほぼ均一に反射していますが、サンプルBは450nm付近の反射率が高くなっていることがわかります。
サンプルBは蛍光増白剤の影響を受けており、蛍光増白剤が多く使われると380nm付近の反射率が下がり、450nm付近の反射率が上がっています。この反射特性が紙の白さを決定しています。
蛍光分光濃度計「FD-7/5」に実装されたペーパーインデックス
紙の白さを表すペーパーインデックスとして様々な規格が制定されています。ここでは蛍光分光濃度計「FD-7/5」に実装されている以下4種類のペーパーインデックスについて解説いたします。
① 白色度WI(ASTM E313-96)
② ISO brightness(ISO2470-1)
③ D65 brightness(ISO2470-2)
④ 蛍光増白強度
①白色度WI(ASTM E313-96)
白色度WIは物体の「白さ」を表す度合です。完全拡散反射面(理想的な白色)を100とします。この理想的な白色から遠ざかるにしたがって、白色度の数値が低くなります。
Tintは「色合い」のことで、白からの違いの程度および向きを示します。Tintが正の値の場合は緑っぽく、負の値の場合は赤っぽいことを示します。
WI=Y+Wlx(xn-x)+Wly(yn-y)
Tint=Tx(xn-x)-Ty(yn-y)
xn、yn:完全拡散反射面のxy色度図における色度座標(次表の値を使用)
Y、x、y:試料のXYZ表色系におけるYの値およびxy色度図における色度座標
Wlx、Wly、Tx、Ty:観察視野および光源により変化する係数(次表の値を使用)
②ISO brightness (ISO2470-1)
ISO brightness は、物体の明るさを表す度合です。完全拡散反射面(理想的な白色)を100とします。この理想的な白色に比べて明るさが低くなるにしたがって、brightness数値が小さくなります。
F(λ):光源も含んだ装置の分光感度(重価係数/下表参照)
R(λ):試料の分光反射率
R0(λ):完全拡散面の分光反射率
ISO2470では以下のように定義されています。
照明受光光学系
拡散照明・垂直受光(正反射光を除く)
観察光源条件
イルミナントC
③D65 brightness (ISO2470-2)
D65 brightness は、ISO brightnessの観察光源条件をイルミナントCからイルミナントD65に変更した評価式です。イルミナントD65は、イルミナントCより紫外光量が多いため、紙に含まれる蛍光増白の影響が大きくなります。
④蛍光増白強度
蛍光分光濃度計「FD-7/5」ではD65 brightnessを使い、上記の蛍光増白強度の評価が可能です。
蛍光増白強度⊿B=B(D65)-B(UVcut)
B(D65):D65 brightness
B(UVcut):A光源の410nm以下をカットした照明におけるD65 brightness
前出の印刷用紙を蛍光分光濃度計「FD-7」でペーパーインデックス測定をしたところ、以下のような結果になりました。
サンプルA、Bを比較すると、いずれもサンプルBの方が高い値になっており、目視感と一致しています。
蛍光増白強度の値から、サンプルBには蛍光増白剤が多く使われていることがわかります。
濃度計のツボ コンテンツ
03印刷の基礎
04印刷標準化
05認証制度
06目視観察条件
07カラーマネジメント
08モニター
09ペーパーインデックス