コニカミノルタ

濃度計のツボ

蛍光分光濃度計

02印刷の数値管理

CMYK濃度と特色濃度による管理手法

印刷のコントロールや印刷物の評価を行うために、いくつかの濃度管理指標があります。
ここでは「CMYK濃度」と「特色濃度」について解説します。

CMYK濃度

実際に人の目に見える濃度で管理する最も標準的な印刷物管理手法。
光の反射率から計算する数値によってCMYKのベタを測定するのが基本です。

[計算方法]
反射濃度 D=-Log10R (R:反射率)
濃度差(Delta Density)ΔD=Dsample – Dstandard

基準濃度をD=1.50、許容範囲をΔD≤±0.04等の形で管理数値を決めます。

印刷機のコントロールはインキ膜厚で行います。一般的な膜厚は0.7から1.0ミクロンで、厚過ぎるとトラブルが起きやすくなります。
印刷中の膜厚測定は困難なため、通常は膜厚と相関関係がある濃度でコントロールします。

特色濃度

特色は、C、M、Yの各成分以外の部分に最大吸収波長があります。特色を通常の濃度測定で行うと、C、M、Yの各成分濃度値しか出てこないため、その特色固有の最高濃度を把握できません。
特色濃度測定は、測定開始時にスペクトルの中で最大吸収波長を中心にして正規分布するフィルタのスペクトルデータを作成。特色のスペクトルデータとこのフィルタのスペクトルデータから濃度を計算します。従って、特色の最高濃度値になり、各特色に応じた濃度を管理できます。

「FD-7/5」の特色濃度モード

測定した特色の最高濃度になる最大吸収波長から正規分布したフィルタのスペクトルデータを自動で作成し、このスペクトルデータをフィルタとした濃度値を計算します。特色濃度モ-ドには測定値から都度フィルタを作成するAutoモードと、フィルタのピーク波長をマニュアルで指定するmanualモードがあります。

網点面積率

網点面積率は、画像の中の網点部分が占める面積の割合を百分率で表したものです。ベタ部と網点部を測定し、各々の濃度から計算します。用紙の特性を組み入れる係数が入ったユール・ニールセン式もありますが、一般にはよりシンプルなマーレイ・デービス式が多用されています。

PS版上の網点面積率を測定する2つの方式

①濃度から計算する方式
基準に対する相対管理用に使われます。

②CCDカメラで撮影する方式
精度が高く、一般に印刷機の初期調整に使われます。

PS版上の網点を測定する場合によく使われる専用の網点面積率計の多くは、CCDカメラで撮影した画像中の網点の面積から計算します。CCDカメラを使う方式は、濃度から計算する方式に比べて精度が高く、微妙な調整を要する印刷機の調整用として多く使われています。

調子再現

最も色の薄いところから最も色の濃いところまでどれだけ滑らかに再現しているかを表す用語で、階調再現ともいいます。途中で不連続に濃さが変わる箇所がある場合、トーンジャンプといって段ができるので好ましくありません。カーブで表した場合、滑らかに変化する必要があります。

網階調再現

原稿の網%に対して実際に印刷されている網%で表します。通常、次に説明するドットゲインがあるため、真ん中がふくらんだ形状になります。各網%が滑らかにつながっているかどうかの指標で、グラデーションの図形でトーンジャンプの有無をチェックします。

ドットゲイン

ドットゲインとは、データより網点が太ることを指しています。印刷機上でインキがつぶれて網点が太る物理的ドットゲインと、目視または測定時に用紙中で光が散乱して生じる光学的ドットゲインがあります。通常、50%部分のドットゲインで表現することが多く、一般には10から20%太ります。

ISOでは、ドットゲインを指す用語として「Tone Value Increase(TVI)」を使います。
物理的ドットゲインと光学的ドットゲインの両方を含んだ数値となります。
また、JapanColor2011の基準値は、14±3%以内となっています。

ドットゲインカーブ

良い印刷かどうか調べる際の指標のひとつとしてドットゲインカーブを作成します。
0から100%まで10%程度の刻みで各%毎のドットゲインを計算し 、図のようなカーブを作成します。
理想は左右対称のきれいな形になることですが、実際はさまざまな要因で、ある程度の凸凹ができたり、ライト側が少し上がったりすることがあります。

トラッピング

トラッピングは、色の上に別の色を刷り重ねる際、後の色がどれだけ乗るかを表す指標です。刷り順は通常「K→C→M→Y」で、1色のみを刷る場合に比べ、他のインキの上に刷る場合、上に乗るインキは通常60から80%程度に減ります。
トラッピング率として「%」の数字で表しますが、大きいほど良い印刷です。算出にはプルーナーの式もありますが、一般にはプルーセルの式が使われます。

蛍光分光濃度計「FD-7/FD-5」は、簡単にブルーナーの計算式に切り替えることができます。

相対コントラスト(K値)

シャドウの階調がどこまで再現できているか見るための指標です。100%ベタと75%または80%の濃度差がどれだけあるかで表現し、100%ベタの濃度をD(100)、75%の濃度をD(75)とした場合、次の式で表されます。
グラフ中の赤線のようにベタ濃度が低下すると数値が低くなります。
一般には0.3から0.5程度になり、高いほどシャドウの再現がよいことを表します。

グレイバランス

CMY3色を等量混ぜると何色になるでしょうか?理論的には黒ですが、実際は下のCMY色材の分光曲線に見られるように、理想的な形をしていないので黒にはなりません。

3色の各ベタ濃度を測定すると、どの色材も下表のように主成分以外の成分があります。
3色を重ねた合計濃度は、シアン濃度がマゼンタ、イエローに比べ低くなり、3色等量の混合は赤黒になります。これが、グレイを再現する場合、C50%、MとY40%などのようにシアンを多くしなければならない理由です。

印刷のTVI(ドットゲイン)管理

従来から、印刷を管理する指標はベタ濃度とTVI(ドットゲイン)でした。
ISO(国際規格協会)では、さらに中間のグレイバランスを数値で管理するために「ミッドトーンスプレッド」という指標を定義。一見難しそうな式ですが、50%のCMY各色の中で、TVI(ドットゲイン)が最大のものと最小のものの差を表しています。
TVI(ドットゲイン)がCMYの中間で基準とどの位外れているかを見ることにより、1つの数値でグレイバランスの崩れを確認できる指標となっています。

S = max.[(Ac-Ac0),(Am-Am0),(Ay-Ay0)]-min.[(Ac-Ac0),(Am-Am0),(Ay-Ay0)]
Ac シアンのある階調部における網点面積率の実測値
Ac0 シアンのある階調部における網点面積率の基準値
Am マゼンタのある階調部における網点面積率の実測値
Am0 マゼンタのある階調部における網点面積率の基準値
Ay イエローのある階調部における網点面積率の実測値
Ay0 イエローのある階調部における網点面積率の基準値
max. [A,B,C] A,B,Cの中の最大値
min.[A,B,C] A,B,Cの中の最小値

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