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色色雑学

04測色計を選ぶための基礎知識と測定事例

仕様表から読み取れる大切なこと。-3

測定波長間隔 ・半値幅

測定波長間隔とは、分光タイプの測色計がどれだけ細かい波長間隔で測定可能かを示す値です。間隔を狭くするほどに詳細な分光データが得られます。しかし、測定波長間隔は狭ければ狭いほど良いというわけではありません。測色計で扱うような試料の色、つまり物体色であれば、その分光特性はなだらかであることが多いため、測定波長間隔は10 nmで充分であり、それより細かく設定する必要はありません。

分光タイプの測色計は、単一波長ごとの光を観測するセンサーを有しますが、このセンサーの感度には図35に示すように波長方向(グラフの横軸方向)に広がりがあります。半値幅とは、センサーの感度がピーク値の半分となる波長の幅であり、センサーの感度が波長方向にどれだけ広がっているかを示す値です。感度がピーク値となる波長を中心に、半値幅の分だけ幅を持たせた波長域を、模式的にそのセンサーの守備域と捉えます。図35の場合、半値幅は10 nmであり、540 nmを分担するセンサーは535 nm~545 nmの波長域を観測すると捉えます。

図35 半値幅とは

センサーの半値幅が大きいと広い波長域を観測するため、得られる測定結果は鈍った波形になってしまいます。本来の分光特性を正確に測定するためには、半値幅を小さくする必要があります。つまり測色計における半値幅は“単色光を測る力”と言い換えることができます。
これを模式的に表したものが図36です。測定波長間隔が10 nm、半値幅が10 nmの測色計の540 nm、550 nmでの測定値は、それぞれ535 nm~545 nm、545 nm~555 nmの波長域を観測したものである一方、測定波長間隔が10 nm、半値幅が20 nmの測色計の540 nm、550 nmでの測定値は、それぞれ530 nm~550 nm、540 nm~560 nmの波長域を観測したものです。隣のセンサーの守備域まで一緒に測定していることになり、得られる測定結果が鈍った波形になることに繋がります。
なお、一般に、半値幅を狭めると測定精度が向上する一方で、センサーに届く光量が少なくなりS/N比の悪化を招くため、単純に半値幅を狭くすれば良いわけではありません。
測定波長間隔と半値幅がほぼ同じであることが適切だと言えます。

図36 半値幅と測定波長間隔との関係

繰返し性

同じ試料を同じ条件で繰り返し測った時のわずかな測定誤差のことです。この値が小さいほど、測定値の信頼性が高いことになります。もしこの値が大きければ、信頼できる測定値を得るために、何度も測定を繰り返し、平均値を求めることになります。

「長さ」のようなシンプルな物理量は、簡単な仕組みで測定できますので測定誤差は少ないですが、「色彩」は複雑な仕組みで測りますので誤差を生む要因がたくさん存在します。

そこで、カタログ等の「仕様値」には、さまざまな誤差要因を排除した測色計本来の測定誤差が掲載されています。まず白色校正を行った後、白色校正板を一定間隔で繰り返し測定し(例えば10秒間隔で30回測定)、測定値の標準偏差を求めます。測定の際に発生するさまざまな誤差要因を排除する為に、測色計に白色校正板をセットした後は、手を一切触れずに自動で測定を繰り返します。これが測色計本来の測定誤差ですが、回路の設計手法や光源の発熱などにより、機種間で優劣が生まれます。特に光源による発熱の影響が大きく、ハロゲンのような発熱量の大きな光源を使用する測色計は、一般的に繰返し性が不利になります。

一方、実際の試料を測定した場合の繰返し性には様々な誤差要因が加わりもっと大きな値になります。実用上問題となるのはこちらの繰返し性です。特に、場所ムラがある試料や立体的な試料で大きくなりますが、測色計の設計時の工夫によって誤差を小さくし、繰返し性を改善させることができます。

では、どのような誤差要因があり、設計時にどのように工夫されているのかを見てみましょう。

位置誤差

場所ムラがある試料では、測定場所が少しでも異なると測定値が変化し、繰返し性が悪くなります。
そこで、測定場所を確認しやすいデザインにすることで、できるだけ同じ場所を測定できるようにします。
また、場所ムラが特に大きな試料では、例えばCR-410のように大きな測定径を持つ測色計を使えば、繰り返し測る回数を減らすことができます。

高さ変動

立体的な試料では、測色計が真っ直ぐに当てられず傾いてしまうと、測定開口部と試料との距離が変化します(高さ変動)。距離が変化すると、照明・受光光学系がずれてしまい、測定値に誤差を生じます。
そこで、持ち易く、立体的な試料にもあてがい易いデザインにすることで、測色計の傾きを防止します。
また、測色計が重ければ、腕が疲れてぐらつき易くなります。
一方、照明・受光光学系の設計を工夫することにより、高さ変動の影響を受けにくくすることも重要です。

回転誤差

測色計によっては、図のように測色計をあてがう方向によって測定値が異なってしまう場合があります(回転誤差)。これは、光源の照明分布が均一でない測色計を使って、場所ムラがあるような試料を測定した場合に発生します。また、試料に反射した光をセンサーに導く光路が原因の場合もあります。
このような測色計で安定性良く測定するためには、測色計をあてがう方向を厳密に管理する必要がありますので、使いにくくなります。

さて、複数の機種の繰返し性を比較する場合、カタログに掲載されている「仕様値」だけで比較してはいけません。測色計メーカーによって「仕様値」の考え方が異なり、実力と同じくらいの場合もあれば、実力よりはるかに大きな値を「仕様値」にしている場合もあります。デモ器などを借用し、ご自分の手で各機種の実力を試されることをおすすめします。

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