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色色雑学

02測色計で色を数値化

新しい色差式(CIE DE2000)について。

測色計によって色を数値化することにより、色や色の違い(色差)を正確に伝え合うことができるようになりました。ところが、実際の色管理の現場では、目視検査の結果と測色計による測定結果が合わないことが、起こっています。それはなぜでしょうか。
またそれを解決する方法はないのでしょうか。
実は、解決策はあります。それがこれからお話しする新色差式「CIE DE2000」です。

CIE LAB(L*a*b*色空間)の問題点

CIE LAB(L*a*b*色空間)は、色を、明度L*とクロマネティクス指数a*b*からなる均等色空間上の座標で表したものです。人の目の色覚を元に計算式が定義されましたが、色によっては、色差ΔE*abと人の目による評価が異なるという問題がありました。
これは、人の目の色識別域の形状が、CIE LABで定義されている色差範囲ΔE*abΔa*b*の形状と、大きく異なっているために起こります。

図16

人の目の色識別域

人の目には、ある色を基準にしたとき、色が異なるにも関わらずその色の違いを識別できない範囲が存在します。これを、色識別域と呼んでいます。

図17は、CIE LAB色空間を表すa*b*色度図の一部を図式化したものです。色度図上に描かれた白い楕円は、各彩度および色相における、人の目の色識別域を表しています。つまり、この白い楕円の範囲に含まれる色は、人の目では色に違いがあっても識別できません。

この白い楕円に注目してみると、CIE LAB(L*a*b*色空間)の色空間(色度図)上では、人の目が色の違いを識別する能力に、次の4つの特長があることがわかります。

  • ※人の目の色識別域の白い楕円形状を含む図17は、2001年10月に刊行されたCOLOR research and application誌、No.5(Volume 26)のP341に掲載されている、M.R.Luo、G. Cui、B.Riggらの研究に基づく論文「The Development of the CIE 2000 Colour-Difference Formula: CIE DE2000」 より、同誌および同氏らの協力・了解を得て図1を抜粋し、模式的に表示・掲載しています。
    なお、同誌P341、図1の著作権および版権は、John Wiley & Sons, Inc. に帰属します。
図17

1)彩度の高い色では色の違いに対する感度が低く、色の違いを識別しにくくなる(彩度依存性が高い)

全体的に、彩度が低い色では真円に近い形状ですが、彩度が高くなるごとに、色相方向に狭く彩度方向に広く延びた楕円形状となります。つまり、彩度が高いと、少々色差が大きくても、人の目には区別ができません。

図18

2)色相方向の色の違いに対する感度が、色相によって異なる

図19の白円AとBを見てください。色相角120度付近(黄緑色)のAと色相角180度付近(緑色)のBとでは、彩度は同じくらいの色でも、色相方向の幅がAでは広くBでは狭くなり、より細長い楕円になっていることが分かります。つまり、AよりBのほうが、色相の違いによる色の違いに敏感になります。

図19

3)明度方向の色の違いに対する感度が、明度によって異なる

明度50の辺りが一番感度が高く、明度が低くても高くても感度が低くなると言われています。

4)青色では、色識別域の方向がゆがむ

図20の青色付近の白円は、図の中心から彩度方向へ延ばしたラインに対して傾きを生じ、彩度方向を長軸とする楕円形状になっていないことがお分かりいただけると思います。

図20

実はこれらの特徴が、測色計による色差判定と人の目による評価に違いを生じさせる原因となっています。CIE LAB(L*a*b*色空間)での色差判定に一般的に用いられる色差ΔE*abは、図21ので示しているように、どの彩度、色相においても同様に真円で示されます。また、こちらもよく用いられるクロマネティクス指数差Δa*b*も、図21ので示されるように方形状をしており、人の目による色識別域の形状(白い楕円形状)と大きく異なっていることが分かります。これらの形状の違いが、計算結果に基づく色差判定結果と人の目による評価との違いとなって表れるのです。

図21

色差式「CIE DE2000」の特長

人の目の色識別域との形状、大きさの違いにより生じる目視評価との違い、この問題点の解決策として登場したのがCIE DE2000色差式です。

CIE DE2000色差式では、人の目の色識別域の幅が均等になる表色系の構築を目指すという試みではなく、計算に基づく色差が、CIE LAB(L*a*b*色空間)の色空間上での人の目の色識別域に近似するように計算式を定義しています。具体的には、明度差ΔL*、彩度差ΔC*、色相差ΔH*をもとに、重価係数SLSCShで重み付けを行います。重価係数SLSCShは、明度L*、彩度C*および色相角hの影響が加味されており、CIE LAB(L*a*b*色空間)の色空間上での人の目の色識別域の特長、1)彩度依存性、2)色相依存性、および、3)明度依存性を考慮した計算式となっています。

図22

CIE LAB(L*a*b*色空間)での色差ΔE*ab、クロマネティクス指数差Δa*b*が表す色差評価範囲が、L*a*b*色空間上で真円もしくは方形状であったのに対し、CIE DE2000色差式での色差ΔE00は、彩度方向を長軸とする楕円形状となり、人の目の色識別域の形状に近似しているのが特長です。彩度が低いほど重価係数SLSCShがそれぞれ1に近づき、色識別域を表す楕円が真円に近くなります。
逆に彩度が高くなると重価係数SLSCShのうちSCの値がほかのSLShに比べて大きくなり、彩度方向に色識別域がのびた(感度が低い)楕円形状となります。
更にCIE DE2000色差式では、色相角に対する影響にも配慮されており、CIE LAB(L*a*b*色空間)の色空間上での人の目の色識別域の特長の一つ、4)色相角270度付近(青色)での色識別域のゆがみ(彩度方向からのずれ)にも対応しています。

なお計算式にはパラメトリック係数と呼ばれる定数kLkCkhが含まれています。使用者側でこの値を自由に設定することにより、様々な測定物の色管理に対応できる柔軟性も持ち合わせています。

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  • 01

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  • 02

    測色計で色を数値化

  • 03

    測色計の基礎知識

  • 04

    測色計を選ぶための基礎知識と測定事例

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02測色計で色を数値化

03測色計の基礎知識

04測色計を選ぶための基礎知識と測定事例

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