こんにちは!ドキュメントチームのManiwaです。当社では、お客様のオフィス移転やレイアウト変更などの際、紙文書を削減やその後の文書管理ルールを構築するお手伝いをしています。その際のお客さまの目的は、「紙文書を減らして執務スペースを増やすこと」や「電子文書を中心とした働き方に変えて、効率よく業務を回すこと」など、業務効率化から得られる生産性の向上やコスト削減を目指すものがほとんどです。しかしながら、企業が利益追求だけではなく社会へ与える影響について責任を持つように、紙文書の削減や文書管理も目線を変えると社会に影響を与えています。今回はこれまでと少し違う形での文書管理のメリットについてまとめました。
目次
働きやすい環境の整備で労働者の安全と健康維持を
大量に保管されていた紙文書を削減することで、それまで文書の保管に利用していたスペースを有効活用することができます。例えば、これまで窮屈だった執務スペースやミーティングスペースの拡張をしたり、社員の憩いの場としてカフェスペースとして活用したりと、空いたスペースを社員にとって働きやすい環境に変えることができます。良好な職場環境は、人財確保や労働生産性向上の面で有効な施策となることはもちろん、労働者の安全と健康を確保する上でも重要な施策といえます。
適切な文書管理がスピーディーな意思決定につながる
紙文書削減後は不要な文書がなくなり必要な文書だけが残ります。さらに適切な文書管理のルールや仕組みを導入すると、必要な時に必要な文書を探しやすくなります。ステークホルダーから情報を求められた際にも速やかに説明責任を果たし、正しい情報をもとに適切な意思決定を行うことができます。
企業の歴史の整理が社会発展の一助に
紙文書削減活動の一環として社史などの整理を行うことが多くあります。社史は企業としての経済活動の記録と考えられます。「企業は社会の公器である」(松下幸之助 著「実践経営哲学」)との言葉があることから、企業の記録は社会の記録ともいえるでしょう。
自社の歴史をもとに博物館や資料館などを設立し、一般公開している企業も多くありますよね。どのような業界であっても、これまでの企業の歴史を伝えることは単なる学びだけにとどまらず、次世代での経済発展の一助ともなり得るでしょう。紙文書削減の一環としての社史整理は、社会の文化的価値の向上に貢献するともいえます。
重要な文書情報の管理がいざという時の事業継続のカギ
重要な文書を適切に管理することは、企業の事業継続にとっても大きな意味を持ちます。内閣府が発表した「事業継続ガイドライン」には、組織にとって事業継続のために必要な唯一無二の重要文書情報(バイタルレコード)維持の重要性について記載があります。このガイドラインでは、バイタルレコードは必ず原本の写しをとり、原本と同時被災しないように別々の場所で保有する必要性を訴えています。紙文書削減の場面でも、削減の手段のひとつとして電子化をご案内しますが、その延長線上にはBCM(Business Continuity Management)の考えがあります。法的要請とは別に、社会的役割を担う企業におけるバイタルレコードはそのまま社会の重要情報となります。
例えば、あるメーカーが被災したとしましょう。製品製造に必要な情報を消失してしまうと、製品を供給できなくなります。その影響は被災したメーカーのみならず、場合によってはサプライチェーン全てに及ぶでしょう。ひいては消費者に商品を供給できなくなるかもしれません。もしもその商品が消費者の生活にとって重要で代替の無いものであったら、社会に与える影響も大きいものになるでしょう。「たかが文書」と思われるかもしれませんが、文書の被災は企業にとって多大な損失となり、経営が危ぶまれる状況にまで陥ってしまうこともあるかもしれません。私が以前お手伝いした企業では、あるバイタルレコードを紙文書と電子文書、マイクロフィルムの3つの媒体で遠隔地に分散保管し、災害時にすぐに活用できるリハーサルも行って事業継続をマネジメントしていました。少しでも被害を少なくするためにも、もしものときに備えて、紙文書の運用ルールを考えておくのはとても大事なことです。
文書管理による知の共有が技術継承につながる
2018年度に日本経済新聞社が実施した「研究開発活動に関する調査」では、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘しました。逆に中国やインドなどの新興国の台頭が著しく、10年後には日本の研究開発力を抜くと予想しています。国内外問わず、技術や知恵の共有、継承についての考え方や取り組みはナレッジ・マネジメント※1やKnow-Who※4など数え上げるきりがありません。一方、日本国内では2007年問題や2012年問題など、いままでベテランが保有していた技術や知恵がみるみる失われている状況といわれています。そのうえで周りを見渡してみると、技術や暗黙知の共有はおろか、業務として共有・継承すべき情報さえも伝わっていない状況が多々見受けられます。共有すべき情報は文書化し、共通の認識を持っておくことが大切です。ただし、むやみに情報を共有するのではなく、まずは基礎の情報が記載されている文書を適切に管理し、情報共有を実現することが、技術継承につながると考えます。ナレッジ・マネジメントやKnow-Whoは文書管理があってこそ可能な手段です。
※1 ナレッジ・マネジメント:個人の暗黙知(ナレッジ)※2を形式知※3に変えて組織が知識を共有し組織力を向上させる考え方
※2 暗黙知:文書や図表などにあらわされていない、個人の経験や勘などに基づく経験則や知識・知恵などのこと
※3 形式知:暗黙知とは逆に、文書や図表などに著された情報・知識のこと
※4 Know-Who:「誰が何を知っているか」「組織内のどこにどのような知識・技術をもった人がいるか」をデータベース化し、検索できる仕組み
文書の電子化はやっぱりエコにもつながる?
「電子文書の活用により紙文書が減少し、紙の原料である森林資源保護に寄与する」というロジックはスタンダードなメリットとして挙げられます。一側面ではそれは事実といえますが、あえてここでは全面的な同意は示さないようにします。なぜなら、紙のリサイクル技術の進歩や、逆に電子文書を使用する場合の電気エネルギーの増加などさまざまな面での考察が必要だからです。ペーパーレスが環境保護に直結するかどうかは未来の回答を待つことにしましょう。
今、文書管理のあり方について考え直すとき
ここ数年の時事問題にも見られるように、医療現場での文書管理がずさんだった場合のリスクや、建築設計文書の改ざんなど、今、文書管理は私たちの社会にとって必要な取り組みであるといえます。
今回の記事では、紙文書削減や文書管理が間接的にでも私たちの社会に貢献していることをご紹介しました。紙文書削減や文書管理の取り組みをご検討されている方は、その取り組みが企業価値の向上のほか、その企業だけでなく社会に役立つことも、プロジェクトを企画する際のアピールポイントにしてみてはいかがでしょうか。文書管理は極めて実務的なプロジェクトと思われるかもしれませんが、見方を変えると社会の役に立つ壮大なプロジェクトです。そう考えるとやりがいや、社会貢献の楽しさを感じ、文書管理活動の推進力につながるかもしれませんね。
属人化の防止、生産性の向上につながる、文書管理の基本から実際の流れまでをまとめました。これから始める方も、うまくいっていない方も基本を学ぶ必読の1冊です。